ビールを飲みながら考えてみた…

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【映画】バットマン ダークナイト ライジング:クリストファー・ノーランが魅せる映像美

2012年08月15日 | 映画♪
クリストファー・ノーラン監督の「バットマン」シリーズの完結編。伝説の「ダークナイト」の続編ということもあって、賛否両論分かれるかもしれないが、映像美、迫力は間違いなく天下一品。しかしこの時代に日本でこの映画はどこまで受け入れられるのだろうか。複雑な思いを感じつつも、今夏の見るべき1作。

【あらすじ】

ジョーカーとの戦いから8年、バットマンはゴッサム・シティーから姿を消し、ブルース・ウェインは隠遁生活を送っていた。そんな彼の家にセリーナ・カイルという女性が忍び込み、彼の指紋を盗み出す。彼女に盗みを依頼した組織が何か大きな計画を立てていると気付いたブルースは、再びバットマンのコスチュームに袖を通す。その頃、不気味なマスクをつけたベインという男が、ゴッサム・シティーの地下で大規模テロを計画していた…。(「goo 映画」より)

【予告編】
ついにラスト!映画『ダークナイト ライジング』予告映像


【レビュー】

「バットマン ダークナイト」「インセプション」を撮ったクリストファー・ノーラン監督だけあって、その映像の美しさ、迫力、見せ方は一級品。初っ端からその迫力は十分堪能できる。1つ1つのシーンがこちらの想像力というか、このシーンはこういう作りだろうといった予測・前提を上回る迫力があり、それを画面いっぱいで表現している。

この監督の特徴として、映像の1つ1つが美しくかつ細部にいたるまでリアリスティックに作るというのがあげられると思う。今回もその魅力は十分描かれており、それぞれのシーンがそれぞれの雰囲気を醸し出し、追跡シーンや予告編でも使われているミサイルによる追撃シーンなど、アクション映画としては必ずしも派手なシーンではないのだけれど、リアルにかつ緊迫感ある映像を作り出している。

内容的にも、クリストファー・ノーラン版第1作となる「バットマン・ビギニング」から継続されたストーリー。前作で愛する人を失ったバットマン/ブルース・ウェインの苦悩はもちろん、ウェインを心配するアルフレッドやキャットウーマンとなるセリーナ・カイル、ジェームズ・ゴードン、ジョン・ブレイクそれぞれの物語、さらにはベインにまつわるミランダ・テイトの物語などそれぞれの役にそれぞれのストーリーが描かれ、単なるアクション映画とは一線を画した深みを与えている。

しかしその一方で、やはり前作「ダークナイト」を名作たら占めたのはヒース・レジャーが演じたジョーカーに寄るものだったのだなぁ、と感じさせられる。その映像美の凄さにす比べると役者が持つ凄みが引き出しきれていないのだ。

そういった面もあって、中盤は若干締まりのなさを感じてしまう。もちろん1つ1つのシーンを見れば完成度は高い。それでも全体の中で何となく「間延び」を感じてしまう。もちろんそれは役者のせいというわけではない。ダークナイトが全体的に「夜」の闇のシーンが多かったのに比べて、ベインが支配したのは「昼」の街だ。どこかで緊迫感が欠けてしまっていることもあるだろう。しかし何といっても、ベインやジョン・ブレイク、キャットウーマン、ブルース・ウェインにジョーカーのような鬼気迫るオーラ、緊迫感を感じさせる役者がいなかったことが大きいだろう。バットマンの決意や市警のメンバーが立ち上がるための必死さが伝わりきれなかった。

後、これはまぁ、3.11以降に生きる側の立場としてなのだろうけれど、次世代クリーンエネルギーを担うものが「原子力」であったり、その爆発による影響を防ぐために海上で爆発させるというのは、虚構であることを考慮してもやはり違和感を感じてしまう。僕らは「核」に未来を見出せるだろうか?

またベインや地獄を抜け出した者を支える「悪の哲学」は一体なんだったのか。何に共感しそれ以外のものはそれに従ったのか。破滅へ向かおうとするその者たちに今ひとつ共感ができなかった。同様に都市部を支配状態に置いた「パトレイバー2」での柘植が持っていた「哲学」と、にもかかわらず/それゆえに「東京壊滅」できなかった感情は理解できる。しかしこの映画で直ぐに破滅しなかった理由は何だったのか。

と、ちょっと後半は厳しい意見になったけれど、良作の映画であることに間違いはない。そもそもコミックのヒーローものを原作にしていながらここまでリアル感をともなった映画を作るなんて、他で考えられるだろうか。悲しみや物語性を背負っているとはいえ、「仮面ライダー」や「サイボーグ009」を実写で作った時にこのようなリアルさ、大人が楽しめるエンターティメント性を作り出せるだろうか。

コミックのもつ物語性では「海のトリトン(手塚治虫」や「仮面ライダー(石ノ森章太郎)」「サイボーグ009(石ノ森章太郎)」の方が上かもしれない。しかし日本では実写にした時点で子供向けエンターティメントから抜け出せない。だからこそ特定の層の大人までをターゲットにしたアニメが発達したのだろう。

クリストファー・ノーラン版「バットマン」はやすり凄い。ただ「ダークナイト」が凄すぎたのだ。

【評価】
総合:★★★★☆
映像美は一級品!:★★★★★
悪の哲学っぷりは、例えばパトレイバー2とは違うよね:★★☆☆☆

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