ニコン社長交代、これから直面する多くの難問 15年振りに事業部制へ回帰する狙いとは?

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木村真琴社長(左)と次期社長への就任が決まった牛田一雄副社長(撮影:今井康一)

「世の中の変化は非常に激しい。スピードが要求される中で社長を承った。これから、若い世代にもっといい形で会社を引き継げるように全力で努力していく」――。木村真琴社長の後継として、6月27日の株主総会での承認を経て新社長に就任するニコンの牛田一雄副社長は5月16日の記者会見でこう口火を切った。

牛田氏は、1975年に日本光学工業(現ニコン)に入社して以来、光学関連の技術者としてレンズ開発など露光装置畑を歩み、現在は半導体・液晶露光装置を統括する精機カンパニーのプレジデントを務める。ニコンの半導体露光装置事業は最先端装置で蘭ASML社に金額ベースで8割近いシェアを握られ、巨額の研究開発費の重荷もあって赤字体質に苦しんでいたが、生産リードタイムの短縮化や生産性を高めた新製品の投入など、牛田氏の旗振りで足元では明るい兆しも見える。「(牛田氏は)露光装置事業で一定の成果を残した」と、木村社長も高く評価する。

収益柱の一眼レフが苦境に

しかし、露光装置を建て直した新社長の腕前が試されるのは、露光装置以外の分野だ。喫緊の課題は、全社売上の7割超、利益の大半を占める主軸のデジタルカメラ事業の立て直しである。

デジカメ市場は、スマートフォン普及の影響により2013年にコンパクト型の市場が半減。さらに、ニコン、キヤノンの2社で市場の9割を占め、交換レンズも含めて非常に高い利益率を誇る一眼レフも、右肩上がりの成長市場から一転し2013年は初の数量減に転じている。

こうした中、ニコンのデジカメ事業の売り上げは2014年3月期に6854億円(前期比約650億円減)となり、今2015年3月期も約500億円減の6300億円を見込む。つまり、2期連続の減収計画だ。社長直轄の経営対策委員会を立ち上げて徹底的なコスト削減を行うことでセグメント利益では増益計画となっているものの、取引先の部品メーカーからは大幅な値下げを要求する厳しいやり方に不満の声も漏れる。コスト削減による利益創出には限界もあり、一眼レフの早期の販売数量立て直しが新社長には求められている。

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