写真提供/Minotti
[MILAN DESIGN WEEK 2016(4月12日~17日)]、通称ミラノ・サローネが大盛況のうちに閉幕した。入場料が必要な国際家具見本市(Salone del Mobile.Milano) 会場だけでも37万2151人の来場者数を記録(前回比4%増)。67%が海外からの来場と、イタリア家具業界からは明るい声が聞こえた。
見本市会場以外に街中の1000を超えるイベント(Fuori Salone)含め、世界のブランドや企業・デザイナーが発信したデザインのトレンドを写真で感じて欲しい!
ラグジュアリー・ブランドでは、Blue & Green!
今年、見本市会場に新設された「xLux」(エクストラ・ラグジュアリー)パビリオン。真っ先にチェックしたいのはファッションブランドFENDIのインテリア、FENDI CASA社(ちなみにキッチンも別ブースに出展)。
【画像1】左:FENDI CASA社、印象的な青にセンターテーブルのカラメル色が効いている(写真撮影/藤井繁子)。右:新作の「AUDREY」ソファはシンプル&ミニマルながら上品な優しさが漂う(写真提供/FENDI CASA)
今年の色調は、フレンチブルー(国旗の青)やミッドナイトブルーからサファイアといった幅広いレンジのブルーとレイク(湖)グリーン等ということだ。
同じ「xLux」パビリオンを歩いてみると…他でもブルー&グリーンが目についた。
【画像2】今年の色Blue&Greenを家具の他、テーブルウエアなどでアクセントに使っている(写真撮影/藤井繁子)
こちらもファッションブランド「VERSACE」のインテリア。家具には全てあのロゴ”メデューサ”が、これでもか!と言わんばかりに付いていて笑えた…ヴェルサーチ・ファンには必須。
【画像3】VERSACE社でも、ベッド&サイドテーブルにエメラルドグリーン。これは綺麗だった(写真撮影/藤井繁子)
日本でお馴染みの家具ブランドも新作で競演!
東京・青山にショップが集うインテリアのハイ・ブランドも、ご当地ミラノで新作発表。日本のインテリアデザイナーやバイヤーたちが顧客を連れて見学する姿もあった。
【画像4】Minotti社の新作ソファ「FREEMAN」等。パーソナルチェアーとiconのスツールには、今年のアクセントカラー”ペトロニウム”(写真撮影/藤井繁子)
【画像5】doriade社で目に飛び込んだ美しい青のアームチェアー「Ten」は深澤直人氏デザイン。センターテーブルは「Ci」と名付け、合わせて”天と地”(写真撮影/藤井繁子)
Cassina社は来年90周年を前に”Origins of the Future(未来の起源)”というコンセプトのもと、アートディレクターにパトリシア・ウルキオラを迎え次世紀へスタートした。
【画像6】Cassina社の会場ブースもデザインしたPatricia Urquiolaのアームチェア「Gender」、ターコイズブルー色バージョンが展示されていた。ピンク色など多色あり、”ジェンダー”名のごとく性別を問わず選べる椅子(写真撮影/藤井繁子)
Cassina社ブースではデザイナー喜多俊之氏にもお話を伺うことができた。
【画像7】喜多氏はこの「Wink」を約35年前にデザイン、「20万台以上は生産された」という。傑作の一つとして展示されている。これもブルーバージョンで(写真提供/ミーレ・ジャパン)
【画像8】Poltrona Frau社では新作テーブル「Nabucco」の上に灯されたペンダント照明に目を奪われた!このガラスも素敵な”レイク・グリーン”だ(写真撮影/藤井繁子)
これからのトレンド、パーソナル@ホーム
IoT(Internet of Things)社会の影響がオフィスだけでなく、ホームユースの家具にも表れていた。
スマートフォンなどパーソナルなメディアが発達し、家族が集まる場は食卓くらいに。家に居ても個々にメディアに向かって過ごす時間が長くなる。
また、ネットワーク環境が整い自宅で仕事をする会社員も増えている。より個人/能力主義であるアメリカのニーズも高いようで、こんなパーソナル・デスクたちがあちこちで提案されていた。
【画像9】Molteni&C社から、Jasper Morrisonデザイン「Ink」。閉じると他のシェルフと並んでスッキリと収まる(写真撮影/藤井繁子)
【画像10】今回のトキメキNo.1! デスクトップのガラスを閉じると、まるでショーケース。自分のステーショナリーや仕事の資料すらアートに見せる意識に感動。「Secretello」Michele de Lucchi氏デザイン。Molteni&C社(写真撮影/藤井繁子)
【画像11】こちらは女性向けのパーソナル・デスク、オーガニックでスマートな化粧台。「Ren」コレクション、Poltrona Frau社。皮のスツール「Lepli」のデザイナーは沖縄出身の大城健作氏(写真撮影/藤井繁子)
街中のショールームで今年、最も注目したDe Padova社。移転しオープンしたショールームは、Boffi社と合併したことで拡大され雰囲気もバツグン。
【画像12】Vico Magistretti氏の名作チェアー「Serbelloni」と組み合わされて窓辺に置かれたパーソナル・デスク「Scrittarello」(Castiglioni氏デザイン)。De Padova社ショールームにて(写真撮影/藤井繁子)
こんなデスクがあれば、私の原稿はもっと早く書けたに違いない…と言い訳したくなる素敵なデスクたちだった。
シンプルデザインは懐古的に。そして、キッチンの未来は?
さて今年は、2年に1度の開催となるキッチン見本市。キッチンのトレンドもチェックしてみよう。
この雰囲気が、街中のイベント展示含めていくつかあり気になったデザイン。”rustic(田舎っぽい) “アーバンデザイン。
【画像13】チタニウム仕上げアルミニウムのキッチン構造やテーブル脚と、オーク材の引き出しやテーブル面との異素材の組合せ。オープンシェルフが懐かしさを醸し出す。Ernestomeda社(写真撮影/Ernestomeda)
【画像14】こちらでは、石+スチール脚で重厚ながら軽やかさを演出するデザイン。ガスコンロがビルトイン(写真撮影/藤井繁子)
いつも先進的なデザインにうならされるbulthaup社は、街中の古い教会のような建物で展示を行っていた。
空間の醸し出すアンティークな空気感が、このブラックメタルの新しくも懐古的なキッチンデザインにピッタリ!
【画像15】「b+ solitaires」シリーズ。独立した四角のキッチン部位は組合せもレイアウトも自由自在。フレームはマットな黒のアルミニウム製(写真提供/bulthaup)
【画像16】今年のキッチンで一番印象に残ったコンパクト(140㎝)なクックトップ・アイランド。フラットでグラッシーな表面にIHクッキングコンロの存在は見えない。オープンシェルフにお気に入りのキッチン道具を見せて収納(写真提供/bulthaup)
キッチン見本市には、ビルトインする設備機器のメーカーも勢ぞろい。
ドイツのMiele社は、ビルトインオーブンやコーヒーマシーン等の設備機器の新シリーズ「ArtLine」を発表。
【画像17】キッチンメーカーのトレンド色であるグレーにマッチするよう、グラファイト・グレーをブラック、ホワイトに加えて発表した「ArtLine」。キッチン各社の新商品に早くも導入されていた(写真提供/Miele)
“The Invisible Kitchen(見えざるキッチン)”と題したイベントを街中トルトーナ地区で開催。未来のキッチンをイメージしたアトラクションで、会場を沸かせた!
【画像18】会場の上部から吊り下げられた透明な円形のキッチンを舞台に、空中で二人の俳優が未来のキッチン・ワークを寸劇で見せた。冷蔵庫内の材料をサーチし、レシピを提案。画面に現れる手順で配膳まで導いてくれる。IoT時代のキッチンは、見えない部分に膨大なデータやセンサーが存在するというメッセージか(写真提供/Miele)
一方キッチン見本市では、日本企業sanwa companyが初出展、「和魂洋才(Modern in style – Japanese in spirit)」をテーマに4つのキッチンを発表した。会場ブースでプレス向けに、寿司&和菓子職人を招いて日本食と日本技術によるキッチンをアピールした。
【画像19】「奏 KANADE」と名付けられたキッチン。ドア面材に日本製のビニールレザーを採用、抗菌・抗カビ・退色にも強い品質は日本の技術ならではとの自信。ブラック・グレー・キャメルの3色。想定価格23,000ユーロ:キッチン2980×950×900㎜(写真提供/sanwa company)
ファッションではユニクロが世界へ羽ばたいたように、キッチンでも日本製品をアピールできるか? 挑戦が始まった。日本のキッチン・メーカーへの海外評価はこれから…と、思っていたら、
ナント! 会期中に発表されるインターナショナル誌「ELLE DECOR」選出のデザイン・アワードで、日本のメーカー「トーヨーキッチンスタイル」と吉岡徳仁氏のコラボによる「フィネス」がキッチン部門の大賞に選ばれたというニュースが入った!
ということで次回は、その快挙を[特別編]としてレポートすることにした。