「田老かりんとう」復活 震災乗り越え2年ぶり
東日本大震災で大きな被害に遭った岩手県宮古市田老の名物菓子「田老かりんとう」が2年ぶりに復活した。製造販売している「田中菓子舗」の店主、田中和七さん(58)は復興への支援に感謝し「いつか助ける側にも回りたい。お菓子でできることがきっとある」と張り切っている。
田中菓子舗は、田中さんの祖父の重蔵さんが90年前に創業した老舗。1933年の昭和三陸地震の津波でも被災して、店と家族3人を失ったが、翌年には店を再開した。
店の再建が思うように進まず、くじけそうな時、田中さんは「祖父にできて、俺にできないわけがない」と自分を奮い立たせてきた。
「田老かりんとう」は、店の古くからの看板商品で、棒状ではなく、直径約10センチの円盤形。油で揚げた後、じっくり乾燥させるなど工程にこだわり、軽い歯触りと黒砂糖の素朴な甘さが特徴だ。
2年前の津波で、家族は無事だったが、自宅兼工場が流失。愛用してきたミキサーなどの道具や、書きためたレシピ帳など、菓子作りに必要なすべてを失った。
家族で暮らす市内の仮設団地の一角にあるプレハブ商店街で、2011年9月から焼き菓子などを販売。ただ手狭なプレハブではかりんとう作りに必要な機材が入らず、看板商品の復活には至らなかった。
ことし3月に新工場がようやく完成。家族を心配した長男、和吉さん(21)も東京の製菓学校を辞めて帰郷し、店を手伝っている。かりんとうは注文に生産が追いつかないほど人気という。
かりんとうやどら焼きのほか「避難時に手軽に食べられる菓子が欲しかった」という妻、和気子さん(56)の思いから、個装したハート形のワッフルも作り始めた。
「俺は伝統を守り、長男や妻が新しい味に挑戦する。震災前より良いものを作るぞ、という気持ち」。田中さんは力を込めた。〔共同〕