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メタボ人口 食べる量は同じなのに、増えているのはなぜ?

2012年07月24日 | ボラバックセンター

◇夜間の食事、代謝異常に

日本人のエネルギー摂取量は近年変わらないのに、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が増加しているのはなぜか。名古屋大大学院の小田裕昭准教授(分子栄養学)のグループは、この疑問に科学的に答えようと、食べる時間や人間の体内時計に注目した研究を進めている。実験を重ね、夜食など不規則な食事は体内時計のうち「肝臓時計」を狂わせて代謝異常を起こし、メタボにつながりやすいというメカニズムを解明した。小田准教授は「昔の人がよく言っていたように、朝食を取って規則正しい食生活をすることがメタボ防止につながる」と説明している。

◇「肝臓時計」狂わせ

食事リズムの重要性を確かめるため、ラットを2グループに分け、一方には活発に動く活動期のみにえさを与え、もう一方には昼夜問わずにだらだら食べさせた。その結果、食べる量は両方とも10グラムと同じなのに、だらだら食いのラットの血中コレステロール値は活動期のみのグループの1・2倍になり、不規則な食事時間の悪影響と推定された。

その原因について、小田准教授は遺伝子レベルで制御される「体内時計」に着目した。人間には、すべての細胞に約24時間周期の「概日リズム」を刻む体内時計があり、栄養素の代謝の役割を果たす肝臓も時計を持っている。別の実験で、食後に分泌され血糖値を下げるホルモンのインスリンを、活動期と寝ている時間帯の休息期のラットに与えて肝臓時計への影響を比較した。その結果、インスリンを休息期に与えると時計が狂った。この狂いが原因となって、脂肪を分解する酵素の活性化の活動にずれが生じる「代謝異常」が起こる。それによって栄養素が分解されず、エネルギーとして使われないで脂肪組織にたまり、メタボの原因になるという。

また、インスリンを出ない状態にして肝臓時計が狂ったラットを使い、食事が体内時計のずれに与える影響を実験した。活動期にインスリンを注射すると時計のずれが元に戻り、休息期に注射すると時計がさらに狂った。肝臓時計に対するインスリンの働きは強力だったという。

◇朝食が正す役目

この結果から、決まった時間に食事できずに肝臓時計が狂っても、活動を始める朝に食事を取ることで、分泌されるインスリンが時計のずれを正し、代謝を正常にする効果が考えられるという。

現代社会でメタボは大きな問題になっている。10年の国民健康・栄養調査結果によると、20~60代の男性の肥満者の割合は31・2%で、95年より6・4ポイント増加した。ところが、ダイエットへの関心の高まりもあって、近年、エネルギー摂取量はほぼ頭打ちになっている。一方で、夜間に働く人が増えるなどライフスタイルが夜型になり、食事の時間が大きく変化した。小田准教授は「メタボの原因は食べる時間の乱れ。いつ食べるかは、私たちが思っている以上に重要だ」と説明する。

さらに、同調査結果では、朝食の欠食率が男性13・7%、女性10・3%にのぼった。小田准教授は「狂った肝臓時計を元に戻す役割を果たす朝食はとても大切で、メタボ予防につながる」と強調する。海外旅行の時差ぼけ対策としても、眠る時間の調整以外に、現地の時間に合わせて朝食を取って肝臓時計を正常にする方法があるという。

◇規則正しい生活を

小田准教授は「昔の人は、規則正しい生活をすれば体調がいいことを自然に感じ取っていた。近年軽視されているけれども、それがなぜいいのかを遺伝子レベルで解明すれば、言葉に説得力が出ると思う。今後も、腹八分目やよくかむ大切さなど、昔から体にいいと言われることを科学的に証明していきたい」と話している。

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20120723ddm013100046000c.html