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強制徴用韓国人被害者賠償請求訴訟(韓国最高裁判決)
-日本政治の異常性を映し出す鏡-

2018.11.11.

強制徴用韓国人被害者の賠償請求訴訟に対する韓国最高裁の判決に対する日本国内(政府自民党だけではなく、広く日本各層)の反応ほど私たち日本人における他者の尊厳に対する無関心、無意識をさらけ出しているものはないと思います。他者の尊厳に対する無関心、無意識とはとりもなおさず人間の尊厳という価値観が私たちの中に根付いていないということを示すものに他なりません。
 自らの意志ではなく、植民地支配の日本権力によって強制的に日本に連行され、奴隷のごとく働かされ、そして、日本の敗戦後はおっぽり出された朝鮮人被害者が彼らを働かせた企業及び日本国家に対して謝罪を求め、これに応じない企業と日本国家に対して賠償請求訴訟に訴えることに対して、人間の尊厳を承認するものである限り、誰もが粛然と襟を正すのが当然なことです。ところが日本の現実はこういう根源的な問題は見向きもされず、もっぱら「判決の不当性」に焦点が当てられるのです。私が「日本政治の異常性を映し出す鏡」という副題をつけるゆえんです。
 以上を確認した上で、私は主に韓国側報道をまとめることを通じて、他者感覚を働かせることの重要性を確認する作業を行おうと思います。

1.韓国最高裁判決

まず、10月30日に韓国最高裁が出した判決(日本の植民地支配当時に強制徴用された韓国人被害者の損害賠償請求事案)内容を紹介します。10月31日付のハンギョレ日本語WSは次のようにまとめています。

「個人請求権は韓日協定とは別…被害者に1千万円ずつ賠償せよ」
 …2012年に最高裁判事4人が参加した最高裁(大法院)小部の判決と2018年の最高裁判事13人が全員参加した全員合議体の判決は、主要争点においてほとんど同じ判断を下した。
■韓日請求権協定で個人請求権が消滅したか
 核心争点である「韓日請求権協定の適用対象に個人請求権が含まれるか」について、最高裁は2012年、「個人の損害賠償請求権は消滅していない」と判断した。
 30日に下された全員合議体の判決でも、最高裁判事の多数意見(7人)は2012年の判決に同意した。多数意見は、まず被害者の損害賠償請求権が「未払い賃金や補償金を要求するものではなく、日本政府の違法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本軍需会社の『反人道的不法行為』に対する『慰謝料請求権』」だと判断した。…
 さらに、1952年の韓日会談以来1965年の韓日請求権協定の時まで、日本の植民地支配の違法性に言及する内容がない点▽1965年に政府が発刊した「韓日会談白書」にも「韓日間の請求権問題には『損害および苦痛』に対する賠償請求が含まれない」と明示した点▽交渉当時、日本が強制動員被害に対する法的賠償を否定した点▽韓国政府の要求額(12億2000万ドル)よりかなり低い3億ドルに強制徴用慰謝料が含まれているとは考えにくいことなどを理由に挙げた。…
■被害者たちの請求権消滅時効はもう過ぎたか
 最高裁全員合議体は「訴訟が起こされた2005年2月当時まで、権利を行使できない障害事由が客観的にあったと言える」とし、2012年の最高裁判所と同じ判断を下した。これに先立ち、最高裁は「少なくとも徴用被害者が国内で訴訟を起こした2005年2月まで、客観的に権利を事実上行使できない障害事由があったと見なければならない。日本企業の新日鉄住が消滅時効の完成を主張することは、権利乱用で認められない」と判断した。2005年1月になってようやく国内で請求権協定に関する文書が公開され、同年8月に韓日会談文書公開の後続対策官民共同委員会が「人道に反する違法行為については請求権協定で解決されたとは言えない」と明らかにした点などが根拠として提示された。
■日本の裁判所の確定判決の国内効力
 徴用被害者であるヨ・ウンテク氏とシン・チョンス氏は1997年、日本の裁判所に損害賠償金および賃金支給訴訟を起こしたが、2003年に日本の最高裁敗訴が確定した。この判決を受け、国内で同様の訴訟を起こすことが不可能かについて、2012年に最高裁は「そうではない」と判断した。当時、最高裁は「日本の判決は日本の植民地支配が合法だという前提のもと、日帝強占期(日本の植民地時代)当時の国家総動員法や国民徴用令などの法令が有効だと判断した。これは日帝強占期の強制動員自体を不法と見る大韓民国憲法の核心的価値と真っ向から衝突する」とし、(日本の裁判所の判決の)効力を認められないと明らかにした。最高裁の全員合議体も同じ意見だった。
■日帝戦犯企業の責任を今の日本企業に問うことができるか
 2012年、最高裁は「現在の新日本製鉄(合併後には新日鉄住金)がヨ氏らを強制動員した旧日本製鉄をそのまま承継したと見るのが正しい」として、賠償責任を認めた。当時最高裁は「新日本製鉄は旧日本製鉄の営業財産や役員、従業員を実質的に承継し、会社の人的・物的構成に基本的な変化がなかった」という理由を挙げた。最高裁の全員合議体でも意見の相違はなかった。

2.強制徴用韓国人(朝鮮人)被害者の実態と最高裁判決を受けた新たな訴訟への動き

韓国を植民地支配していた日本が行った朝鮮人に対する強制徴用の実態に関しては、10月31日付の中央日報日本語WS及び朝鮮日報日本語WSが以下のように紹介しています。当時の朝鮮半島の人口が2500万、強制徴用された朝鮮人は150万、実に1割弱の人口が強制徴用されたという歴史の事実の重みは心あるものを圧倒します。

「朝鮮人口2500万、海外動員された被害者150万…強制徴用受難史」(中央日報)
…大法院がこの日、損害賠償判決を出した強制徴用被害期間は概略1939年から1945年までだ。
日本は日中戦争を起こした翌年である1938年、国家総動員法を制定して強制徴用を本格化し始めた。
初期にはせめて雇用提供という名分で「募集」の形態を取っていた。だが、実際は日本企業が朝鮮総督府の許可を得て農村地域の貧しい人々をだまし、あるいは強圧的に連行していく方式だった。総督府は地域の末端行政機関に割当量を定め、警察や面長など地域をよく知っている人が直接出て割当量を満たした。戦況が不利になった1944年からは対象を特定して徴用令状を発行する強制労務徴用方式も動員した。
このような形で強制徴用された朝鮮人数は日本と満州など朝鮮の外で動員された人が150万人、朝鮮内作業場に動員された人が約200万人と推定される。当時朝鮮の人口は約2500万人だった。…
1945年、解放を迎えてから…故国でも厳しい暮らしを強いられていた人々に政府から与えられた補償は少なかった。1975~77年「対日民間請求権補償に関する法律」により死亡者8552人に30万ウォンずつ25億6500万ウォンを支給した。2007年には軍人・軍属供託金10万8900件(総額9100万円)、2010年労務者供託金6万4200件(総額3500万円)の名簿を日本政府から受け、韓国政府の財政で賠償した。換算比率は1円当たり2000ウォン。被害者の手に与えられた慰労金は数十万~数百万ウォンに過ぎなかった。
被害者の真相調査も全体的に行われなかった。2004年強制動員真相究明委が発足し、韓国政府レベルで本格的な調査が始まった。
「強制徴用:被害者14万人中962人が訴訟、今後続々勝訴の可能性も」(朝鮮日報)
 今回の判決とは別に、韓国全土の裁判所で審理が進められている日帝(日本帝国主義)の「強制徴用」に対する損害賠償請求訴訟は14件ある。強制徴用被害者とその遺族962人が新日鉄住金、三菱重工業、日立造船、住石マテリアルズ(旧住友石炭工業)など日本企業87社を相手取り訴訟を起こしている。今回の判決は他の訴訟の原告に対する判決に等しい。1938年以降、国家総動員法によって重労働を強いられた被害者だからだ。…
 「強制徴用」問題で訴訟を提起できる人は少なくとも14万人と推定される。国務総理室(首相室)の「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者支援委員会」が実態調査で把握した被害者は14万8961人だ。うち生存者は約5000人だが、損害賠償対象は本人に限られず、遺族も訴訟を起こすことができる。
韓国政府の調査によると、日帝強制占領期の強制徴用で動員された韓半島(朝鮮半島)の労働者を雇用した日本企業は299社ある。当時の三大財閥である三菱、三井、住友の系列企業をはじめ、日産など自動車メーカー、カネボウ化粧品(旧鐘紡)、キリンビール、パナソニック(旧松下電器産業)なども含まれる。韓国に事業体を持つ企業も多い。国税庁によると、韓国に進出している日本企業は395社で米国(420社)に次ぐ。投資総額は891億円だ。強制徴用に関連する299社と直接的、間接的に関係する企業が多数含まれており、大法院の判決による動揺は避けられない。損害賠償請求訴訟などの民事訴訟は原告の一方的な提訴で始まる。…

最高裁判決に伴う訴訟への具体的な動きも出始めています。

「「死ぬ前に願いを叶えさせてほしい」…勤労挺身隊被害女性の涙の訴え」(11月1日付ハンギョレ日本語WS)
 「(私には)残された日があまりありません。生きている間に願いを叶えさせてほしいと思います」
 31日午後、光州高裁204号法廷で、光州高裁第2民事部(裁判長チェ・インギュ)の審理で開かれた裁判で、キム・ジェリムさん(88)はこう語った。朝鮮女子勤労挺身隊として日本に連れて行かれたキムさんは同日、三菱重工業を相手取った損害賠償請求訴訟控訴審の裁判の原告として裁判に出席した。キムさんら勤労挺身隊のハルモニ(おばあさん)と家族ら4人は2014年2月、三菱重工業に対する第2次損害賠償訴訟を起こした。最高裁が日帝強制動員被害者に対する日本企業の損害賠償請求権を認めた判決を下した後、初めて開かれた控訴審裁判であることから、注目が集まった。
 1944~45年に強制動員された10代初めから半ばの少女たちは、日本の軍需工場に連れて行かれた。1944年5月末、「女学校に通わせてあげる」という言葉に騙されて日本に渡ったキムさんは、1945年10月末まで三菱重工業名古屋航空製作所で働いたが、賃金をもらえなかった。1944年12月の大地震(昭和東南海地震)の際、倒壊した建物の下敷きになったキムさんは、辛うじて命は助かったが、一緒に逃げ出した従妹は遺体さえ見つからなかった。賃金を一銭ももらえずに帰国したキムさんは、結婚して二人の子どもをもうけたが、夫と死別し、艱難辛苦の多い人生を送ってきた。
 勤労挺身隊の被害者たちは、2012年10月から光州地裁に三菱重工業を相手取って3件の損害賠償請求訴訟を起こしている。ヤン・グムドクさん(89)ら5人が提起した最初の訴訟は、控訴審まで勝訴したが、2015年7月から最高裁判所の全員合議体に係留中だ。同事案をめぐっては、ヤン・スンテ司法府の裁判故意遅延疑惑が持ち上がっている。キムさんらが提起した第2次訴訟も、昨年8月の1審で勝訴し、キム・ヨンオクさん(86)と被害者の甥2人が昨年8月に提起した第3次訴訟も1審で勝訴したが、三菱重工業が判決を不服として控訴した。
 同日の裁判で、三菱側の弁護士は「類似した訴訟が現在最高裁で審理されているだけに、その結果を踏まえて判決してほしい」と述べた。だが、原告側の弁護人は「今回の事案は、30日に最高裁で判決が下された事件と争点は同じだ。原告が高齢であることを考慮すると、判決を遅らせてはならない」と述べた。裁判部は弁論終了後、原告らの意思を反映し、当初12月中旬以降に行うことが議論されていた判決期日を12月5日に指定した。
 勤労挺身隊女性たちの訴訟を支援する市民団体「勤労挺身隊ハルモニたちと共にする市民の会」は同日、裁判が終わった後、光州地裁正門前で記者会見を開き、「30日の最高裁全員合議体の日帝戦犯企業の新日鉄住金に対する再上告で、原告勝訴判決を言い渡したことを歓迎する」としたうえで、「原告たちが90代前後の高齢者であることを考慮し、戦犯企業らは速やかに原告たちに謝罪し、解決に乗り出すべきだ」と主張した。
「強制徴用:大法院判決が慰安婦問題に波及、被害者らが補償求める」(11月1日付朝鮮日報日本語WS)
強制徴用された元徴用工たちの日本企業に対する損害賠償請求訴訟で、韓国大法院(最高裁判所)が元徴用工の訴えを認めたことから、旧日本軍従軍慰安婦ら、日本によるほかの被害者たちも31日、日本側の早急な責任認定と賠償を要求した。
 「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」の尹美香(ユン・ミヒャン)理事長は同日、ソウル市鍾路区の旧日本大使館前で行われた元慰安婦のための水曜集会で、「日本政府は70年間以上、被害者たちに苦痛を与えた責任を痛感し、被害者に補償しなければならない」と語った。
 韓日両国政府は2015年の慰安婦合意で、旧日本軍の関与の下で慰安婦問題が起こったということを認め、日本の安倍晋三首相が謝罪したほか、日本政府の拠出金10億円で名誉回復事業を進めることを決めた。ところが、元慰安婦20人は16年に日本政府を相手取って30億3000万ウォン(約3億円)の損害賠償訴訟を起こした。文在寅(ムン・ジェイン)政権は15年の慰安婦合意について、「被害者の意見を聞いておらず、間違っていた」という見解を持っている。
 日本の新日鐵住金(当時は日本製鐵)による強制徴用に対する30日の大法院判決は、ほかの訴訟にも影響を与えている。光州高裁民事第2部(チェ・インギュ裁判長)は31日、三菱重工業による強制徴用被害者の損害賠償請求訴訟控訴審の判決日を、2週間前倒しして12月5日に決めた。訴訟が起こされてから4年を経ての判決だ。同高裁は「30日の大法院で判決が出た件(新日鐵住金訴訟)と本件の争点はほぼ同じため、判決を遅らせる理由がない」と説明している。三菱重工業の徴用工だった原告らは「事件が発生してすでに70年が過ぎた。(原告は)みんな90歳前後の高齢なので、裁判所は早く判決を出してほしい」と語った。原告の1人、キム・ジェリム(88)さんは「私たちが生きられる日はあまり残っていない。生きている間に(裁判所は)願いを聞いてほしい」と言った。
「済州で「日帝強制徴用被害者」の集団訴訟説明会を開催」(11月5日付中央日報日本語WS)
日本企業を対象に日帝強制徴用被害者への賠償を命じた判決が先月、韓国大法院(最高裁)で確定された中で、集団損害賠償請求訴訟を進めている団体が済州を訪ねて損害賠償訴訟への参加に向けた説明会を開催する。
社団法人「対日抗争期強制動員被害者連合会」と社団法人「日帝強制労役被害者正義具現全国連合会」は7日に済州市(チェジュシ)未来コンベンションセンター3階で「済州道日帝強制徴用被害者説明会」を行うと4日、明らかにした。
また、説明会では外形上勤労契約を結んだが、労働の代価をまともに支払わなかった三菱重工業、横浜ゴム、日産など日本の戦犯企業70社を対象に推進している「1004人集団損害賠償請求訴訟」の過程を説明し、済州地域の被害者と遺族らのさらなる参加を呼びかける予定だ。
済州道は韓国で日帝強制徴用被害が最も多い地域の一つだ。集団訴訟団体関係者は「日帝強制徴用被害者の傷は今この瞬間までも苦痛が続いている」として「済州地域の被害者と遺族らの訴訟参加を呼びかけたい」と話した。

ちなみに、南北和解の動きが進んでいますが、強制徴用に関しても新たな動きがあることを紹介しておきます。11月4日付聯合ニュース日本語WSは次のとおり紹介しています。

強制徴用巡る共同討論会を来年開催 南北団体が合意
【金剛山聯合ニュース】南北統一問題に取り組む韓国団体「民族和解協力汎国民協議会(民和協)」と北朝鮮団体「民族和解協議会」は3日、北朝鮮・金剛山で共同行事を行い、日本による植民地時代に起きた「三・一独立運動」から100年を迎える来年に強制徴用被害者問題を話し合う共同討論会を開催することなどを盛り込んだ決議文を採択した。
 決議文には「強制徴用被害者(に関する)共同討論会を行い、南北の民和協団体が合意した朝鮮人遺骨送還の南北共同推進委員会を現実的な要求に合わせ発展させていくことにする」と記された。
 韓国側民和協の金弘傑(キム・ホンゴル)代表常任議長と北朝鮮側民和協の金永大(キム・ヨンデ)会長は7月、平壌で面会し、強制徴用により日本に渡った朝鮮半島出身者の遺骨送還のため、南北共同推進委員会を結成することで合意していた。
 共同討論会を通じ、遺骨送還問題から強制徴用被害者問題全般に南北団体の対応範囲を広げる考えとみられる。ただ、北朝鮮側は強制徴用の真相究明などへの協力には同意しながらも、日本が協力するかなどについて多少懐疑的な態度を示したという。
 今回の共同行事は10年ぶりに南北の民間団体が金剛山で開いた大規模なイベントで、韓国側から256人の代表団が訪朝した。北朝鮮側からは100人の代表団が参加した。3日に分科会議や宴会などを実施し、4日は散策などを行い親交を深めた。

3.安倍政権の異常、異様な反応

以上の判決に対して、安倍首相、管官房長官そして河野外相をはじめとする日本政府関係者がいきり立って反発している姿は異常を通り越して異様ですらあります。韓国メディアは克明に彼らの発言内容をリアル・タイムで伝えています。
安倍首相(及び管官房長官)の反発の根源にあるのは、明言はしないものの、「皇国・日本が犯罪を行うことはあり得ない(すべては正しい)」とする、軍国主義・日本を美化しなければすまない皇国史観(日本会議史観)に立脚することは明らかです。それは、いわゆる「従軍慰安婦」問題に対する彼らの拒絶反応と通底しています。そのことを知悉するが故に、韓国世論(保守を含む)は厳しく反応するのでしょう。
私がさらに驚いてしまうのは、日本国内の反応が、数少ない例外を除けば、日本政府の反応に同調していることです。韓国メディアは、朝日新聞が判決に「遺憾」と表明したこと、立憲民主党の長妻代表代行も「遺憾」と表明したことを伝えています。また、11月3日の朝鮮日報日本語WSは、東京大学の来宮正史教授に対するインタビューを掲載していますが、同教授の見解はほぼ政府見解を肯定する内容でした。11月1日の中央日報の記事(「<韓国、徴用工判決>日本メディア、「韓国疲れ」主張しながら非難一色」)は、「31日、日本屈指の進歩指向メディア、朝日と東京新聞の1面トップに掲載された徴用裁判関連解説記事の一部だ。これまで韓国に対して相対的に友好的な論調だったメディアだが、批判隊列に合流した」と報じました。
 ちなみに、「数少ない例外」としてハンギョレは、10月30日付(「日本の市民団体「心から判決歓迎」」)、11月1日付(「[インタビュー]徴用被害者遺影を持った日本人ら「早く賠償すべき」」)、11月2日付(「日本の市民たち、445回目の叫び「三菱は強制動員に対して謝罪・賠償せよ」」)を報告しました。
11月1日付の韓国・中央日報日本語WSは、同日、安倍首相が衆議院予算委員会で岸田政務調査会長の質問に対して行った答弁で次のように発言したことを伝えました。

「安倍首相「原告は『徴用』でない『募集』に応じた」…韓国の判決を全面否定」
1日、日本衆議院予算委員会に出席した安倍首相は先に「政府としては『徴用工』という表現でない、『旧朝鮮半島出身労働者問題』と言っている」と強調した。
また「これは当時、国家総動員法上、国家動員令には『募集』と『官斡旋』『徴用』があったが、実際、今回の裁判の原告は(徴用でなく)全部『募集』に応じたため、『朝鮮半島出身労働者問題』と言いたい」と説明した。
安倍首相の発言は外相を務めた岸田文雄自民党政調会長の質問に対する回答だった。したがって、二人の間に緊密に調整された質問と回答だった可能性が大きい。
日本政府は前日「これからは徴用工という表現の代わりに『旧朝鮮半島出身労働者』という用語を使え」という指針を下したが、一日後である1日、安倍首相が公式化したわけだ。
日本政府はその間「強制徴用者」という言葉の代わり「徴用工」という言葉を使ってきた。だが、徴用という言葉自体に「強制連行」という意味が含まれているため、安倍首相の発言はその強制性を希薄にさせるための思惑とみられる。 …
また「65年協定でこの問題は完全かつ最終的に解決済み」として「国際裁判を含むすべての選択肢を視野に入れて毅然と対応していく」と主張した。

11月2日付の朝鮮日報日本語WSも以上の安倍首相発言について以下のように紹介しました。

「強制徴用:安倍首相「訴訟起こした人々は旧朝鮮半島出身労働者」」
日本政府が韓国大法院(最高裁判所)の強制徴用賠償判決に関連して「朝鮮半島出身労働者問題」と表現、日本の植民地支配下における韓国人の強制徴用を事実上否定し、合法的に行われたとの見解を示した。
 日本の安倍晋三首相は1日、国会衆議院予算委員会に出席して、「『旧朝鮮半島出身労働者』ということで、私たちはこの事案を捉えている」「当時(日本による植民地支配時代)の国家総動員法下の国民徴用令において、『募集』、『官斡旋』、そして『徴用』があったが、今回の原告4名は、いずれも『募集』に応じた人たち」だったと指摘した。その上で、「旧朝鮮半島出身労働者の問題は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決された」との見解を再度強調した。
 日本政府はこの件が争点化されてから今まで「徴用工(強制徴用労働者)問題」という表現を使ってきた。安倍内閣がこの日から「旧朝鮮半島出身労働者問題」と呼ぶことにしたのは、韓国人が強制的に動員されたという意味合いを弱め、国際司法裁判所(ICJ)提訴をはじめ、今後の事態進展に対応するためと見られる。…
 日本政府は、大法院の強制徴用賠償判決に影響を受けることになった日本企業に対する説明会を開催、賠償命令に応じないようにとの指針を打ち出している。読売新聞によると、外務省・経済産業省・国土交通省・法務省が合同で先月31日から説明会を開始、2日までに計3回行われる予定だ。日本政府は「1965年の日韓請求権協定に基づき、賠償する義務がない」として、日本政府と歩調を合わせるよう要請している。これと関連して、大法院の賠償命令を受けた新日鐵住金は「韓国大法院判決は、この問題が完全かつ最終的に解決したという1965年の協定や、これに対する日本政府の見解とも反する」というコメントを発表した。自民党は「国は日本企業が不利益に被らないよう、企業の保護に全力を尽くしてほしい」と要求した。

朝鮮日報の記事が言及している企業向け説明会に関しては、11月1日付ハンギョレ日本語WSが次のように報道しました。安倍政権の異常性・異様性は、関係する4省を動員して関連する企業に対して、賠償はもちろん和解にも応じるな,という説明会を積極的に開いていることに集中的に現れています。

「日本政府が企業に対して「強制徴用賠償に応じるな」説明会」
 日本政府が、韓国人強制徴用被害者に提訴された自国企業に対し、賠償はもちろん和解にも応じるなという指針を下す説明会を開いている。
 菅義偉官房長官は1日午後、定例記者会見で「(30日の韓国最高裁判決で)敗訴した日本企業を含め、関連訴訟の対象になっている日本企業に対して普段から緊密に連絡をしている。今回の判決が下された後、企業らを相手に説明会を開き、日本政府の立場や関連訴訟に対する韓国内の状況について説明している」と話した。

安倍首相及び管官房長官の反発のすさまじさについては、彼らの思想信条を考えればそれなりに「理解」できるのですが、河野外相の猛り狂った反応ぶりはさらに突出しています。朝鮮3紙は以下のようにフォローしています。

○10月30日:「<韓国、徴用工判決>日本経団連「韓国投資への障害を懸念」」(中央日報)
河野太郎外相が30日午後2時55分ごろ「大韓民国大法院(最高裁)による日本企業に対する判決確定について」と題した談話を発表した。韓国最高裁の徴用工判決から1時間も経っていない時点だ。すでに最高裁の判決にどう対応するかを以前から準備してきたことを表している。
河野外相はその後、李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使を外務省に呼び出して(午後4時5分)、「法の支配が貫徹されている国際社会の常識では考えられないことが起こっている」と抗議した。河野外相は李大使に握手も求めなかった。また、河野外相の冒頭発言の後、李大使の発言の順序になると日本の記者が一斉に退場する異例の光景もあった。…
河野外相はこの日、「日本の企業や日本国民に不利益が生じないよう直ちに必要な措置を厳格にとってもらいたい」とし「日本政府は韓国政府の措置をまず確認したい」とも述べた。これには韓国政府が問題の解決に直接取り組むべきだという意味が込められている。…
日本財界も動いた。敗訴した新日鉄住金は「極めて遺憾だ。日本政府の対応状況等もふまえ、適切に対応していく」という立場を明らかにした。経団連など経済団体も共同で「今後の韓国への投資やビジネスを進める上での障害になりかねない」と懸念する声明を発表した。…
○10月31日:「強制徴用:強硬発言相次ぐ日本「韓国、国家としての体をなしていない」」(朝鮮日報)
韓国大法院(最高裁判所)の強制徴用賠償判決が出た翌日の31日も、日本では韓国に対する強硬な発言が相次いだ。
 日本の河野太郎外相は同日、韓国外交部(省に相当)康京和長官と電話で話した後、日本の記者らに会い、「両国関係の一番の法的基盤(韓日請求権協定)が非常に根本から損なわれた。協定が損なわれれば、日韓関係に影響が出ないことはない」と述べた。
 その上で、河野外相は「(韓国政府は)毅然(きぜん)とした対応をとってほしい」と圧力をかけた。…
○11月1日:「強制徴用:河野外相「100%韓国の責任」」(朝鮮日報)
日本の河野太郎外相は1日、韓国大法院(最高裁判所)の強制徴用判決と関連して、「100%、韓国側の責任において(解決策を)考えることだ」と明らかにした、と毎日新聞など日本の報道機関が自民党関係者の話として報じた。
 河野外相が同日、自民党外交部会所属議員らと会った席で、「そのつもりで(韓国政府と)交渉にあたる」と述べたという。さらに、河野外相はこの会合で、韓国政府が早急に対応策を打ち出さないことについても不快感を見せ、「韓国側はこの問題を重要に受け止めていない」と述べたとのことだ。…
○11月3日:「河野外相、日帝強制徴用被害「韓国政府が代わりに補償せよ」(ハンギョレ)
 河野外相は3日、神奈川県での演説で「(1965年韓日請求権・経済協力協定で)韓国政府が責任を持って(強制徴用被害者に)補償と賠償をすることにした」と話したとNHK放送が伝えた。
 河野外相は、韓日協定締結の時「日本政府は一人一人に補償するのでなく、それに該当する金額を経済協力資金として出した」として「当時、韓国の年間予算が約3億ドルだったが、日本は5億ドルを韓国に一括的に渡した」と話した。また「これが現在まで日本と韓国がした約束の中で最も基本となった」として「(韓国最高裁の)判決は、こうした決定に完全に反している。日本は韓国に必要なお金をすべて出してあるので韓国政府が責任を持って補償しなければならない」と述べた。…
○11月4日:「河野外相「徴用判決は国際社会への挑戦、補償はすべて韓国政府がするべき」」(中央日報)
河野太郎外相は4日夕方、地方で行った講演で、徴用判決に対して「日韓の基本的な関係を根本からひっくり返すと同時に、国際法に基づいて秩序が成り立つ国際社会への挑戦」と批判したと日本メディアが伝えた。河野外相はまた「(到底)考えられない」とも述べた。
○11月5日:「河野外相、外信に韓国を非難「韓国政府、共に働きにくい」」(中央日報)
河野太郎外相が5日、米国ニュース通信社であるブルームバーグ通信とのインタビューで韓国大法院(最高裁)の強制徴用賠償判決に対する非難を吐き出した。海外言論を通じて韓国を貶め、世論戦を本格化する様相だ。
彼はブルームバーグとのインタビューで「国際法に基づいて韓国政府と結んだ協定を韓国大法院が望む通りにいつでも覆すことができれば、どの国も韓国政府と働きにくいだろうということを韓国は分かるべきだ」と述べた。また、「韓国がこの懸案(強制徴用の判決)を先に解決すべきだ。それとも韓日間同盟は前に進むことができないだろう」と圧力をかけたりもした。
河野外相は、特に国際社会で韓国の信頼度を落とすことに集中した。「個人の請求権は1965年韓日請求権協定で消滅しなかった」という大法院の判決趣旨は説明せず、韓国が協定を破ったとだけ主張した。また「1965年の韓日請求権協定で韓国政府は韓国人のすべての請求に対して責任を負うべきだというのが自明だ」と強調した。
河野外相は先月30日、韓国大法院の判決以降ほぼ毎日のように強硬な発言を吐き出している。判決前日に「敗訴を毛頭思っていない」と述べた彼は、判決直後「きわめて遺憾だ。決して受け入れることはできない」という談話を発表したりもした。
また、判決翌日には康京和外交長官に電話をかけて「韓日間の法的基盤が根本から損傷した」と抗議した。それ以来、議員との面談、記者会見の席で「100%韓国が責任を負わなければならない」「韓日関係の法的基盤が崩れれば、未来志向もない」「韓国政府が韓国国民に補償と賠償をするという約束だ」など批判する発言をした。
河野外相の強硬な発言と共に日本政府も海外駐在公館を通じて自国の立場を海外各国に伝えている。
日本政府は「韓日間請求権問題が1965年、韓日請求権協定により解決済みであるため、韓国大法院の判決が国際法上不当だ」という内容を英文の文書で作成して海外駐在公館を通じて海外各国政府とメディアに発信している。
○11月6日:「河野外相「徴用判決は暴挙」」(中央日報)
河野太郎外相が6日の記者会見で、韓国大法院(最高裁に相当)の徴用判決を「暴挙」と主張した。
河野外相は「この問題は1965年の請求権協定で、完全かつ最終的に終わった話」とし「こういう判決を出すというのは暴挙だ」と述べた。
会見で、河野外相は「二国間の問題、法的基盤を根本から揺るがすような大きな問題であると同時に、国際法に基づく国際秩序に対する挑戦」と主張した。
続いて「韓国側がきちんと適切に対応してくれるものと我々は今の時点で信じているが、それがなされない場合にはあらゆる手段を取る用意がある」と述べた。
「国際司法裁判所提訴以上の対応措置も準備中か」という記者の質問に対する回答だった。
河野外相は、自身がこの日ブルームバーグとのインタビューで徴用裁判問題を取り上げたことに関連して「既に、各国の日本の大使館にそれぞれの国で政府に対する説明をしっかりやるようにということと、それぞれの国でメディアに対して、情報を発信していくというようにという指示を出した」とし「日本の立場というのを世界にキャリーして(=知らせて)もらえるように努力していきたいと思っている」と述べた。…

4.日本の過剰反応に対する韓国政府の立場表明

韓国の李洛淵(イ・ナクヨン)首相は11月7日、日本側の過激を極める反応に対してコメントしました。8日付のハンギョレは、「李首相「強制徴用判決めぐる日本の発言、妥当でも賢明でもない」」と題する記事の中で、李洛淵首相の「立場文」を以下のとおり紹介しています。

「韓国司法部の強制徴用判決に関する日本政府の態度について」
日帝強占期の韓国人強制徴用被害者に対する大韓民国最高裁判所の判決をめぐり、日本政府指導者らが過激な発言を続けていることに対し、深い憂慮を表する。
日本政府指導者らの発言は妥当でもなく、賢明でもない。
司法府の判断は政府間の外交事案ではない。司法府は法的判断だけを下す機関であり、司法府の判断には政府が介入しないのが民主主義の根幹だ。日本の政府指導者らもそれを知らないわけではないと思う。
大韓民国の最高裁の判決は、1965年の韓日基本条約を否定したものではなく、その条約を認めながら、その土台の上で条約の適用範囲がどこまでなのかを判断したものだ。判決文はそれを明確にしている。
私はこの問題に対する言及をできるだけ控え、政府関連省庁と民間専門家の知恵を集めて、対応策作りに取り組んでいる。 日本の政府指導者らが大韓民国の司法府の判断について不満を述べるとはできる。しかし、日本の政府指導者らがこの問題を外交的紛争に発展させようとしていることから、私もそれに対する意見を述べざるを得なくなったことを遺憾に思う。
日本政府指導者らの賢明な対処を要望する。韓国政府は強制徴用被害者の傷を癒すために最善を尽くす。韓国政府は韓日関係が未来志向的に発展することを望んでいるという点を繰り返し明らかにする。
2018. 11. 7.
大韓民国首相、李洛淵

また、韓国外交部も同日強く反応しました。11月7日付の中央日報日本語WS及び聯合ニュース日本語WSは以下のとおり伝えています。

「韓国外交部「日本の指導者、国民感情を刺激するような発言は遺憾…法判断の尊重を」」(中央日報)
韓国外交部は6日、河野太郎外相が強制徴用賠償判決を批判したことに関連して「日本の責任ある指導者が問題の根源は度外視したまま、我々国民感情を刺激する発言をしていることに対して非常に懸念している」と強調した。
外交部はこの日、記者団に送ったショートメッセージサービス(SMS)の公示を通じてこのように伝え、「特に、我々の司法府判断に対して節制されていない言葉で評価をするなど、過剰対応していることに対し、甚だ遺憾だと言わざるを得ない」と指摘した。
あわせて「三権分立の基本原則に則り、行政府は司法府の判断を尊重するのは当然で、これは日本を含めてどの自由民主主義国家も例外であるはずがない」と付け加えた。
また、外交部は「今般の事案を政治的に過度に際立たせることは、韓日関係の未来志向の発展に何の役にも立たないことを、日本政府ははっきりと認識しなければならない」と明らかにした。
「日本の批判に韓国が反発「国民感情を刺激」=強制徴用判決」(聯合ニュース)
韓国外交部は6日、大法院(最高裁)が新日鉄住金に、強制徴用された韓国人被害者に賠償を命じる判決を下したことを巡る河野太郎外相ら日本の政治家の発言について「問題の根源を度外視したまま、わが国民の感情を刺激する発言を続けている」と強い懸念を示した。大法院の判決を巡る日本政府の対応に対し韓国政府が反発したのは初めて。
 外交部は記者団に対し、「韓国の司法判断に対し節制のない言葉で評価するなど過剰な反応を示していることを深く遺憾に思わざるを得ない」とコメントした。三権分立の基本原則に基づき行政府が司法判断を尊重するのは当然で、日本を含むどの自由民主主義国家も例外ではないだろうと指摘した。
 また、「今回の事案を政治的に過度に取り上げることは韓日関係の未来志向的な発展に全く役に立たないということを日本政府は明確に認識すべきだ」と強調した。
 河野外相は6日の記者会見で、大法院判決について「暴挙であり国際秩序への挑戦だ」と述べるなど批判。韓国政府が責任を取るべきだと主張している。
 また、安倍晋三首相は1日の国会答弁で、政府としては「徴用工」という表現ではなく、「朝鮮半島出身の労働者」の問題だと述べ、戦時中の強制徴用の強制性を否定するかのような発言をした。

5.日本政府の主張の「法的正当性」(?)

日本政府の主張の「法的正当性」について、韓国メディアは日本国内の発言を紹介する形で指摘しています。11月5日付のハンギョレ日本語WSは次のように紹介しました。

「河野外相、日帝強制徴用被害「韓国政府が代わりに補償せよ」」
 …日本国内でも「1965年の協定で完全かつ最終的に解決された」という日本政府の主張を批判する人々がいる。志位和夫・日本共産党委員長は1日、記者会見で、個人請求権は日本政府も過去には否定していなかったと指摘した。彼は柳井俊二・当時外務省条約局長が1991年に国会で述べた返答を例にあげた。柳井局長は、韓日協定で請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」という日本政府の見解はどういう意味かという質問に「両国が外交的保護権を相互に放棄するということだ。個人請求権それ自体を消滅させたものではない」と答えた。こうした発言をしたのは、同じ年に国会で第2次大戦中にソ連軍の捕虜としてシベリアで労働した日本軍の個人請求権に対して「日ソ共同宣言の請求権放棄は、外交保護権の放棄という意味だ。日本国民個人がソ連とソ連国民を相手にする請求権まで放棄したわけではない」と外務省がすでに答えていたためだ。争点が似ている事案に対して矛盾した返事はできなかったものと見える。
 日本政府のこのような解釈は、韓国人被害者の裁判に不利に作用しかねないという判断で、2000年に入ってから変わった。2001年に韓国人の遺族たちが出した浮島丸沈没事件の損害賠償訴訟控訴審で、日本政府は「(韓国国民の)請求権は日韓協定の直接適用を受け消滅した」と主張した。(東京/チョ・ギウォン特派員)

11月7日付の中央日報日本語WSは、以下のように報じました。

「日本弁護士「強制徴用賠償、ICJでも日本が負ける」…その根拠は?」
日本の弁護士約100人が韓国大法院(最高裁に相当)の徴用賠償判決に対する自国政府の対応を批判して問題解決を促した。
川上詩朗弁護士と山本晴太弁護士は今月5日、東京千代田区にある参議院議員会館会議室で「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」を発表した。
2人は「日本が国際司法裁判所(ICJ)に提訴する場合、日本が敗れる可能性が高い」としながら「被害者が納得して社会的にも容認された解決内容が必要だ」と主張した。
日本の弁護士は強制徴用賠償問題の本質は「人権問題」と指摘して「被害者の個人請求権は消滅していない」と強調した。
弁護士は2007年に中国被害者が起こした損害賠償請求訴訟を事例として挙げた。
当時、日本の最高裁判所は中国被害者に「裁判上、権利が喪失した」として原告敗訴判決を下したが「請求権は消滅していない」と明らかにした点を根拠に挙げた。つまり、日本政府側も1991年中国側に韓国大法院と類似の立場を明らかにしたと説明した。
あわせて「被害者個人の請求権が消滅していないうえに国際法上でも被害者は裁判を受ける権利がある」とし「このために日本が国際司法裁判所に提訴しても日本が敗れる可能性が大きい」と明らかにした。
弁護士は「被害者と社会が受け入れることができない国家間合意は真の解決になりえない」」と声を高めた。
この日、代表として出席した川上弁護士は「今回の韓国最高裁の判決に対して『国際法上あり得ない』と述べた安倍晋三首相の発言に違和感を感じて緊急声明を発表する」とし「急意で用意された声明で、現在まで100人余りが参加した」と明らかにした。
この日配布された共同声明資料には、弁護士89人や学者6人など合計95人が署名したと記録されており、意見を同じくする弁護士は増え続けているという。

また、日本の対応は中国に対するのと韓国に対するのとでは違いがあるという事実について問題視する記事もあります。11月1日付ハンギョレ日本語WS及び11月5日付朝鮮日報日本語WSの記事は以下のとおりです。

「一部の中国人には補償した日本企業ら、なぜ態度が違うのか」(ハンギョレ)
 最高裁(大法院)の強制徴用被害者損害賠償判決に対して、日本政府と新日鉄住金が反発する中で、日本企業らが一部の中国人には裁判結果と関係なく事実上賠償した事例があり、対照的だという指摘が出ている。自発的賠償と謝罪をせよとの提案も出ているが、日本政府の強硬な態度が障害物になると見られる。
 2014年、三菱マテリアル(旧、三菱鉱業)は、中国人強制労働被害者が中国で訴訟を提起してから2年後に、3765人に1人当り10万中国元(約160万円)を支給する和解措置を発表した。現在までに裁判上の和解が終えられたケースは11人に過ぎず、残りの被害者との協議はまだ進行中だ。西松建設は、強制労働をさせた中国人183人に対して1億2800万円を和解金として中国の民間団体に支払い謝罪した。これに先立って2007年、日本の最高裁判所はこの事件で原告敗訴判決を下しながらも、西松建設に「被害救済努力を期待する」と明らかにした。
 中国は1972年、日本との国交正常化の時、共同声明で「中国政府は両国の友好のために戦争賠償請求権を放棄する」と宣言した。日本企業らはこれを理由に法的責任は否認しているが、個人に和解の形式で補償したり謝罪をしてきた。
 しかし、日本は植民地時代の朝鮮人強制動員は、1938年に導入された国家総動員法による適法な行為であり、被侵略国中国とは事情が異なるという主張を守っている。三菱マテリアルは、中国人および連合軍捕虜強制労働被害者に対する謝罪と補償の意思を明らかにしながらも、韓国人に対しては拒否した。
 新日鉄住金は補償の性格の金銭を韓国人側に支給したことがある。この企業は、1945年に米軍の砲撃で釜石製鉄所で死亡した韓国人11人の遺族たちに、97年にそれぞれ200万円の「慰霊金」を支給した。遺族たちはその2年前、同じ死亡事故をめぐって日本人にだけ「慰霊金」を支給したことは不当だとし、訴訟を起こし「例外的」補償を受け取った。
 日本の市民団体である「日本製鉄元徴用工裁判を支援する会」は、韓国最高裁の判決が下された30日、記者会見で「中国は交戦相手国であったが、韓国は植民地であったことは事実だ。だが、中国も韓国もサンフランシスコ講和条約を基本とした条約を通じて(戦後)処理をした」として、朝鮮半島出身者だけを別に取り扱う理由はないと指摘した。
 日本企業が謝罪と補償をしようとしても、安倍晋三政権が阻むだろうという見通しもある。被害回復財団の設立も議論されているが、やはり日本政府の態度や世論という壁が問題だ。早稲田大学のイ・ジョンウォン教授は「日本企業もある程度は補償に応じる意向があると見るが、安倍政権がこれを受け入れない方針」と話した。彼は「今回の判決は、植民地支配の不法性を曖昧にやり過ごした1965年体制の矛盾が弾けたもの」とし「韓日関係の冷却は当分続くだろう。ただし、日本も南北関係や朝米関係と関連して韓国と協力せざるをえないため、強度を調節をすると思われる」と話した。(東京/チョ・ギウォン特派員)
「強制徴用:日本企業が中国の被害者に基金設立、韓国への態度と対照的」(朝鮮日報)
日本企業が、第2次世界大戦中の強制徴用被害者に対する補償をめぐり、韓国と中国の被害者にそれぞれ異なる態度を取っていることが分かった。
 日本の共同通信が4日に報道したところによると、日本の三菱マテリアルは中日平和友好条約締結40周年を迎える今年、中国の強制徴用被害者のための基金を年内に設立し、最大3765人に対し1人当たり10万元(約164万円)の和解金を支払う計画だという。
 基金の名称は「歴史人権平和基金」で、所在の分からない被害者及び遺族を追跡調査するほか、記念碑の建立や慰霊追悼事業も実施するという。
 中国人被害者らは2014年2月、三菱マテリアルを相手取り、強制連行の損害賠償を求めて中国の裁判所に提訴。三菱マテリアルは16年に被害者3765人に対し1人当たり10万元を支払うことで合意している。当時、同社は中国人被害者らに対し「痛切な反省の意」を表明するとともに、強制連行問題の「最終的かつ包括的な解決」のために基金を拠出すると表明した。
 それだけではない。三菱マテリアルは15年7月、第2次世界大戦中に米兵捕虜として強制労働に従事させられた米国人らに対して直接謝罪もしている。日本政府は09年と10年に米兵捕虜に謝罪したが、強制労働を強いた日本企業が謝罪したのはこれが初めてだ。
 ところが、三菱マテリアルは韓国人の強制徴用被害者に対しては「法的な状況が異なる」として言及を避けている。1910年に日本は韓国を強制併合して植民地としたため、当時の朝鮮人は法的に日本国民として他の日本人と同様に徴用された、という理由だ。
 韓国と中国の強制徴用被害者をめぐり対応に差をつけている企業は三菱マテリアルだけではない。西松建設は2007年、中国の強制徴用被害者らによる損害賠償請求訴訟に関連し、1億2800万円を被害者183人への和解金として中国の民間団体に支払っている。
 中国と日本は1972年、国交正常化のための共同声明で「中国は両国国民の友好のために日本に対する戦争賠償請求を放棄する」と宣言し、これに基づき日本の裁判所は中国人の強制徴用被害者による損害賠償請求訴訟で原告敗訴の判決を下している。
 それにもかかわらず、日本企業は中国人の徴用被害者に対し、和解金・救済金などの名目で謝罪しているのだ。韓国人の被害者に対する態度とは対照的だ。
 韓国の大法院(最高裁判所に相当)が先月30日、日本企業である新日鉄住金に対し、強制徴用された韓国人被害者に賠償を命じる判決を下した直後、新日鉄住金は「極めて遺憾」との声明を出して反発した。
 日本政府も「あり得ない判断」と批判し、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する構えも見せている。
 しかし、国連傘下の国際労働機関(ILO)は2009年、日本政府に対し、強制徴用被害者の訴訟に関して「年老いた強制労働者が訴えている請求に応える措置を取ることを望む」との勧告を発表している。(キム・ヘギョン記者)
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