早いのか 遅いのか
時間が止まったように感じたり
早すぎる時の流れに置きざりにされたように感じたり…
苦しいです
けれど アンパンマンファミリーは
みんなで乗り越えよう と決めました。
それぞれが、ではなく
みんなで。
絆を確かめ合うように過ごしてきた一ヶ月
番組開始から30年
毎週顔を合わせ…
収録の合間は近況報告をしたり、何気ないおしゃべりを楽しんだり、戸田さんの持ってきてくれるおやつをワイワイ言いながら食べたり（鶴さんはおやつタイムが大好きでした）
みんなで旅行に行ったり
ご飯を食べたり…
新しい命との出会いや
別れもありました
30年という人生を歩みながら
共に泣いたり笑ったり
いつの間にか親戚のような存在になっていました。
そう言えばパン工場のみんなも
血の繋がりの無い家族ですね
寄り添い 思いやる事で
絆と言う もしかしたら血縁以上の繋がりが生まれる事もありますね
知らず知らずのうちに ずっと やなせ先生がアンパンマンに込めた想いを
浴び続けてきたのですね
まるで静かに降る雨のように
深く深く心に染み込んでいたのだなぁ、と思います
苦しい事も哀しみもあるけれど
それでも 人生は素晴らしいものです
喜んで生きよう
愛と勇気を持って生きよう
まるで遠くに見える灯りのように
哀しみの中でも いつかそう感じられる日が来る。
心に染み込んだものが そう思わせてくれるのだと思います。
そんな私達が
それを子供達に向けて発信しなくてどうする！！
しっかりしなくてはね😄
子供達が進む人生の道のり
いろんな事が待っています
辛い事もあるけれど
でも、
それでも 人生は素敵なのです✨
何かが終わっても
過ごしてきた愛しい日々が消えるわけではない
別れが悲しいのは
大好きだと思う日々があった証
終わるのが寂しいのは
楽しい時間を過ごせた証
だから…感謝です。
でも、ここでひとつ 大きな問題がありました
ドキンちゃんをどうやって元気にしてあげるか…という事。
声を失ってしまったドキンちゃん
誰よりも悲しんでいました。
クリスマススペシャルは
放送するための膨大な作業が待っていました。
いつまでもこのままにしておくわけには行きません
とにかく 早くなんとかしなくてはなりません
1月放送分のドキンちゃんは まだ鶴さんの声が残っています。
大切な大切な声が。
クリスマススペシャルだけ、ポッカリ空いてしまったのです。
とにかく 早くドキンちゃんに声を返してあげなくてはなりませんでしたが
こんなに大切な事を慌てて 決めるわけには行きません
どうするのが一番良いのか？
多くの方々が真剣に考え 動いて下さいました。
大きなプレッシャーの中で 責任ある役を背負える方を 真剣に 慎重に 探さなくてはなりません
鶴さんの愛した
皆さんの愛したドキンちゃんを
誰よりも愛して引き受けてくれる人…。
「ね〜 も〜 ！ どーするのよぉ〜 」
可愛いドキンちゃんが スタジオで拗ねています。
これ以上 待たせたら
「おバカぁ〜〜〜〜」と泣き出しそうでした。
新しいドキンちゃんを探す間にも時間は過ぎて行きます
音響監督が私に
「この回だけ
ドキンちゃんをお願いできないですか」
思いつめたように切り出した。
え…？
だって、私はバタコさんですよ？？？
「無理です」
即答しようとした時
スタジオの鶴さんの席に
泣きそうな困ったような笑顔の鶴さんが 座っているように感じました
不思議なのですが、ひとりでは無い と思えました。
「一緒にやるから…」
そんな あたたかなものを感じました
鶴さんが手伝ってくれるならいいよ
「繋ごう…」
そんな思いが湧いてきました
〜今、私に出来ることを精一杯、惜しみなく〜
これが私の大切にしている考え方です
それに 「バタコさんはお母さん」だと
やなせ先生に言われていましたからね。
お母さんなら
守らなくちゃ
命を繋いで行かなくちゃ
ドキンちゃんが再び元気に歩き出せるように ね。
引き継いで下さる方に繋ぐ事くらいなら
私にも出来るかもしれない
いや、今となってはそれくらいしか 鶴さんにしてあげられる事が無い と思った。
「わかりました。やります」
そう言った時
ドキンちゃんが
「やったぁ〜〜💕」と笑ってくれたような気がしました。
話したいよね
笑いたいよね
歌いたいよね
ずっとおしゃべりできなかったんだものね。
鶴さんのように 素敵な声は出ないけど
我慢してね ドキンちゃん
近くで いつも聞いてきたドキンちゃんの声が 頭の中で響くのに
思い通りに声にならなくて
情けなくて
申し訳なくて…。
でもね
ずっと 側に 鶴さんがいてくれましたよ
少なくとも 私には そう感じられました
子供達が待っています
楽しいクリスマススペシャルです
勇気を振り絞って頑張ろうとしました
でも、内容やセリフが…
何故でしょうね
いろんな事と重なり 胸が締め付けられました。
準備期間 無し
心 ボロボロ
技量も 無し
あるのは 鶴さんへの想いだけです
後は
勇気を出すだけです
愛と勇気だけ…
あ、そうか それでいいんだ！ と思いました。
今の私に出来る 精一杯で
鶴さんへの心からの感謝と尊敬と祈りを込めて
一度限りのドキンちゃん
演じさせていただきました。
子供達の心に あたたかなクリスマスのお話が届きますように。
そして
とうとう 待ちに待った嬉しい知らせが！！🍀
アンパンマンファミリーの冨永みーなちゃんが ドキンちゃんを 引き継いで下さることになったのです！
ロールパンナと両方…
これは本当に 本当に大変な事です
みーなちゃん、大きな決断だったと思います。
鶴さんも 妹分のみーなちゃんが引き継いでくれたなら 必ず喜んで下さるに違いないです。
アンパンマンファミリーのみんなも
感謝の気持ちで一杯です
どうか皆様
これからも ドキンちゃんを めいっぱい愛してあげて下さいね。
鶴さんのドキンちゃんが終わるのではありません。
鶴さんが大切に育ててきたドキンちゃんを
今度は みーなちゃんが育てて行くのです
2人分の愛で育ててもらうドキンちゃん
もう寂しく無いね。良かったね。
アンパンマンの顔みたいに みんなの想いがまぁるく繋がりました。
アンパンマンを愛して下さる皆さんも
やなせ先生を中心にしたアンパンマンファミリーの一員です
これからも みんなで 一緒に歩んで行きましょうね。
鶴ひろみさんへ
心からの感謝をこめて
貴女に出会えてよかった…。
これからもずっとずっと一緒です
バタコ 佐久間レイ
