米が核戦力の役割拡大 戦略見直し、通常兵器に反撃も
【ワシントン=永沢毅】トランプ米政権は2月にもまとめる米国の核戦略の指針「核体制の見直し(NPR)」で、核兵器の役割を拡大する方針を盛り込む見通しになった。核攻撃の抑止・反撃に限らず、通常兵器への反撃にも核の使用を排除しない方針だ。複数の米メディアが報じた。北朝鮮や中国、ロシアの脅威が高まっているとして核の優位を確保する狙い。
「核なき世界」を掲げて核の役割を減らそうとしたオバマ前政権の方針を転換する。
新しい指針では、弾道ミサイルに搭載する爆発力を抑えた核兵器の開発や配備を検討するとしている。敵国の主要都市の破壊を目的とした大型の核戦力と比べて爆発力は小さい。敵国の基地や施設などを破壊するといった局地的な戦闘に使い、非戦闘員らの被害をできるだけ小さくする狙いがある。政権にとって様々な事態に対応して核戦力を利用しやすくなる半面、核使用の条件が緩くなるとの指摘もある。
敵国の核攻撃を抑止する戦力を強化するために、現行の空中発射型の計画に加え、海洋発射型の核巡航ミサイルの新規開発方針も打ち出す。核弾頭と通常弾頭の双方を搭載できるため核攻撃と間違われるリスクがあるとして、敵国から核による反撃を招く懸念が大きいとされている。
オバマ前政権は2010年に公表した前回のNPRで、核拡散防止条約(NPT)を順守する非核保有国に対し「核兵器を使用しない」と表明していた。核なき世界をめざして軍事に占める核の役割を大幅に減らし、その分低下する抑止力は通常兵器の強化で補う方針を打ち出した。
トランプ政権が検討しているNPRは、核の使用について「極限の状況」に限定するとの前政権の方針を残す半面、核攻撃の抑止や反撃だけでなく通常兵器の攻撃に対しても核の使用を排除しない方針を盛り込む。核使用の条件が大幅に緩和される懸念もある。世界の核軍縮の流れに水を差すことにもなりかねない。
トランプ政権は昨年1月の発足後まもなく、議会に報告するNPRを見直すと表明した。米国防総省は12日「NPRの草案はいくつも作られている。まだ完成していない」との声明を出した。