世界の下請け転落懸念 欧米からは「周回遅れ」との批判も

 安倍首相が経済財政諮問会議で研究開発投資の拡大に向けた枠組み作りを指示した背景には日本経済の成長性への危機感がある。AI(人工知能)などでの日本の技術革新は欧米の「周回遅れ」とも批判され、手をこまねいていては日本企業が国際競争に敗れて、世界の下請けに転落する懸念も指摘されるだけに、対応が急務となる。

 「潜在成長率を高めるには、いかに民間投資を引き出せるかがカギになる」。首相は諮問会議でこう力説した。

 会議では、民間議員が研究開発投資を「経済成長の最大の起爆剤」と指摘。予算の枠組みを見直し、大規模で長期にわたる産学の共同研究に対する寄付への支援や、公共調達を活用した先進技術開発を進めることなどを提案した。内閣府は平成30年度に、投資拡大を推進する新たな予算枠を創設する方針も報告した。

 首相が研究開発投資を重視するのは将来の技術革新につながる種だからだ。政府は「第4次産業革命」をはじめとする成長戦略を掲げ、取り組みを進めているが、海外から向けられる視線は厳しい。

 シンクタンクの世界経済フォーラム(本部・ジュネーブ)が公表した2016年版の「国際競争力報告」では、日本の総合順位は8位で、前年の6位から2つランクダウン。項目別ではイノベーションが5位から8位に落ちるなどした。

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