戦後からポスト冷戦後までの日米同盟を扱った通史。本書はリアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムの3つのアプローチを通して、戦後の日米関係の変質を説明することを目的としている(p.vi)
本書の構成は第一章の伝統的なアメリカ外交の理念の解説から始まり、第二章で極めてリベラル色の強かった戦後の初期占領政策、第三章は共産主義の脅威からリアリズムの考え方へ転換した冷戦初期、第四章は経済復興を理由にリベラルの道を進んだ55年体制下、第五章は冷戦崩壊後の「同盟漂流」、第六章は北朝鮮核危機によりリアリズムへ若干傾いた日本政府、第七章は強いリーダーシップにより日米同盟が強化された小泉政権下、そして終章では安倍内閣の政策と今後の日米同盟への視座を出している。
冒頭で自らがリアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムの3つのアプローチから日米関係を分析すると言明しておきながら、コンストラクティビズム的な分析が、前の二つに比べてほとんど見られないのは残念なところ。筆者による当時の政策担当者へのインタビューが多く使われており、政策の現場の雰囲気が伝わってきたが、理論的な側面の解説がもっと充実していると良かった。
ただ、章立てを見れば分かるように、各時代の記述の量は時間と比例していない。55年体制下の日米関係は大胆に簡略化される一方で、冷戦後の日米同盟の推移には力が入れられている。説明不足の嫌いはあるかもしれないが、全体としてよくまとまっており、筆者が意図したメッセージ性の強い単著による通史を書くという目的は達成できているように思う。
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日米同盟というリアリズム 単行本 – 2007/9/1
信田 智人
(著)
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社千倉書房
- 発売日2007/9/1
- ISBN-104805108843
- ISBN-13978-4805108840
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登録情報
- 出版社 : 千倉書房 (2007/9/1)
- 発売日 : 2007/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 280ページ
- ISBN-10 : 4805108843
- ISBN-13 : 978-4805108840
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,159,316位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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京都生まれです。最終学歴としては、ジョンズホプキンス大学で国際関係学博士号を得ました。日本政治、アメリカ政治、日米関係、日本外交などが専門です。そのなかでも政策決定過程に興味があります。
最も最近に出した本はContemporary Japanese Politics: Institutional Changes and Power Shiftsで、ジェラルド・カーチスの著書以来13年ぶりにコロンビア大学出版から出された日本政治の本です。多くの欧米の大学で教科書に使ってもらえると思います。
その政治主導の部分だけを扱ったのが、朝日新聞から出した「政治主導vs官僚支配」です。多くの政治家や官僚の方々からも、この本で内幕を初めて知ったという有難いコメントをいただきました。
2010年には「アメリカの外交政策」という編著を出しましたが、外交史、アクター別分析、政策の三つの分野を包括的に扱っているのが特徴です。私は第1-3章の外交史と大統領のセクションを担当しました。ホワイトハウスの決定過程については、かなり詳しいと思います。
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