5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

青い嵐風

2017-06-15 22:43:16 | 自然

「共謀罪法成立」とヌキ文字の大見出しは中日夕刊である。何と言ってもこれが今日の日本のトップニュースのはずだが、世間は黙ったまま。腹に一物ありというのだろうか。

TVの昼のニュースはロンドンで起きたマンション火災のこと、ワシントンでは上院議員たちが銃撃されたことをフォローしている。どうやら英国も米国も自国内で連続して起こる「嵐」に意識が集中していて、日本の議会のことなど考える余裕はないようである。

世界各地で吹き荒れる嵐は人為的なものだが、この時期の新緑を吹き分ける自然の強い風のことを「青嵐」と呼ぶのだというのは「季語集」の坪内稔典先生である。

中里介山の〈大菩薩峠〉の書き出しにはこうある。

『ゴーッと青嵐が崩れる。谷から峰へ吹き上げるうら葉が、海の浪がしらを見るようにさわ立つ』

甲斐の萩原村に入った甲州裏街道が最も高く最も険しくなる上下八里の難所。青嵐の吹く峠に現れるのが主人公の机龍之助。道端で休んでいた巡礼の老爺を理由もなく斬り捨てるところから、四一巻十八冊におよぶ大長編小説は始まるのだ。

そして坪内先生は高橋とも子のこの句を置いている。

「青嵐樹の頂に子がひとり」

木登り上手の腕白坊主は樹上でどんな嵐風を感じているのだろう。


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