アドブロック

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アドブロックまたは広告ブロック(英:Ad blocking)とは、Webサイトを閲覧時にインターネット広告ブロックして非表示にする行為、あるいはそのための技術を指す。アドブロックを行うためのソフトウェアはアドブロッカー広告ブロッカーと呼ばれる。

インターネット広告をブロックするだけでなく、アクセス解析などもブロック可能なものも多い。

概要[編集]

アドブロックが行われる理由としては、以下のようなものが挙げられる[1]

  • 広告に含まれる画像や動画のダウンロード・読み込みを事前にブロックすることで、不要な通信量(パケット通信料)を抑えたり、ウェブサイトの描画にかかる時間を短縮する
  • スマートフォンで閲覧する際、不必要な広告をブロックすることで、バッテリーの消費を軽減する
  • 広告ネットワークを通じて行われるトラッキングによる個人情報の収集を防ぐことでプライバシーを保護する
  • マルウェアを仕組んだ広告をブロックすることで感染を防ぐ[2]
  • 出会い系サイト(アダルトサイト)、風俗店、酒、ギャンブルなど年齢制限(年齢の下限)が設けられた、有害なコンテンツの広告をブロックする
  • 画面全体を覆ったり音声付きの動画を再生するなどの不快な広告をブロックし、快適にウェブサイトを閲覧する

仕組み[編集]

アドブロッカーはあらかじめ用意されたフィルタ(インターネット広告のブラックリスト)を参照し、広告が含まれる通信をブロック[3]したり、広告に用いられる特定の要素(例:<div class="ad">広告</div>)や、ハイパーリンク(例:<a href="http://www.****.co.jp/" >広告</a>)を読み込ませないことで、ウェブサイト上から広告を取り除く。

アドブロッカーの多くはウェブブラウザ拡張機能として提供されるが、ブラウザ自体にアドブロック機能が内蔵されていたり、アドブロックを利用できるDNSサーバも存在する。スマートフォンの普及に伴い、スマートフォン用ウェブブラウザにもアドブロックを内蔵しているものが登場している。

通信自体をブロックするもの[編集]

フィルターリスト(ブラックリスト)に登録された特定のドメインとの通信自体をブロックする。通信自体をブロックすることで通信量を削減できるほか、広告ネットワークを経由したマルウェアのダウンロードを防ぐことができる。一方で広告とウェブサイトのコンテンツ自体が同じドメインで提供されている場合、広告のみをブロックすることは難しい。

広告やトラッカーを提供するドメインをブロックするDNSサーバも存在する。OSやルータのDNSをこれに設定すれば、ウェブブラウザ以外の広告(スマートフォンのアプリ内広告など)もブロック可能となる。

広告要素を非表示にするもの[編集]

ウェブサイトのソースコードを改変し、広告が含まれる部分を削除して描画する。通信自体をブロックしているわけではないので通信量に大きな変化はないが、同じドメインから提供される広告も取り除くことが可能だが、企業のウェブサイトもまた、アドブロックに対する対策を行うところもあり、閲覧者のブラウザがアドブロックを使用していること検知した場合、コンテンツそのものを一切閲覧させないか、またはアドブロックの機能を無効化するよう要求するサイトもある。

フィルタ[編集]

企業、グループ、個人などから多くのフィルタがフリーで公開されている。Easylistがよく知られており、2019年6月現在も活発にサポートが続けられている。言語圏ごとに専用フィルタも用意されている。

アドブロックの導入[編集]

標準でアドブロックが搭載されているウェブブラウザ[編集]

ウェブブラウザ用の拡張機能[編集]

アドブロック使用に対する企業の動き[編集]

サービス自体を無料で提供する代わりに会社の運営及びサービスの維持のために広告収入を重視している会社も多い。そうした会社にとっては広告のブロックが収入の減少に直結するため、アドブロックを導入したままサービスを利用しようとした際にブロックを解除するよう促すダイアログを都度、表示する、もしくはサービスの利用自体をできなくするなどの対策をとるところもあるが、アメリカではそうした対策に頼るサイトは減少している[5]

動画共有サービスにおいても動画投稿者がアドブロックで広告収入を得られなくなる影響が出ている。2023年6月にはYouTubeが、アドブロッカーを使用しているユーザーに対し、アドブロックを無効にするかYouTube Premiumに加入しない限り、アドブロッカーによる動画広告等のブロックをアンチブロックするダイアログを表示させた上で動画の再生をブロックするテストを開始し、同年10月よりそれが本格的に運用されることになった[6]。一方、プライバシー活動家のアレキサンダー・ハンフはYouTubeによるこのアンチブロックについて、「EUのeプライバシー指令違反に当たる」とアイルランドデータ保護委員会に申し立てたが、YouTubeを傘下に収めるGoogle側はこれを否定した[7]。動画共有サービスにおけるアドブロックの取り締まりはVimeoDailymotion[8]等が既に行っているが、YouTubeはそれが最大規模となった[9]

出典[編集]

  1. ^ Gandham, Mani; Nob Takahashi (2016年1月18日). “広告ブロック入門”. TechCrunch Japan. Verizon Media Japan KK. 2020年4月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月15日閲覧。
  2. ^ ネット広告を表示しただけでウイルス感染のワケ”. トレンドマイクロ is702. トレンドマイクロ (2015年7月9日). 2015年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月15日閲覧。
  3. ^ 広告ブロックの仕組み: フィルター開発の流れと、“Manifest v3”が脅威である理由|AdGuardブログ”. AdGuard公式ブログ. 2024年1月20日閲覧。
  4. ^ Hesse, Brendan; 伊藤貴之 (2019年6月11日). “Google Chrome以外の広告ブロックに適したブラウザ5選”. ライフハッカー・ジャパン. Mediagene Inc.. 2023年10月15日閲覧。
  5. ^ 2022 PageFair Adblock Report” (英語). Blockthrough. Blockthrough, Inc. (2022年8月5日). 2023年3月19日閲覧。
  6. ^ YouTube Is Cracking Down on Ad Blockers”. Insider (2023年10月16日). 2023年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月8日閲覧。
  7. ^ YouTube’s ad blocking crackdown is facing a new challenge: privacy laws”. The Verge. Vox Media (2023年11月8日). 2023年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月8日閲覧。
  8. ^ r/uBlockOrigin. “Dailymotion adblock detected”. Reddit. 2023年12月8日閲覧。
  9. ^ YouTube、広告ブロッカーへの対策を本格化--世界中に拡大”. CNET Japan. 朝日インタラクティブ (2023年11月2日). 2023年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月8日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • よくある質問 Yuki2718 - 広告ブロックフィルタ開発者のYuki2718(2023年現在、Easylist、AdGuard、uAssetsの三大広告ブロックコミュニティ全てでコミット権限を持つ唯一の人物)による解説。