食べ物を口に運ぶときに用いる、日本式の食器と言えば箸です。「世界の和食」を象徴するアイテムですね。
そんななか、日本の食器で一つ忘れているものがあると思いませんか。そう、柄杓(ひしゃく)です。その形状としては和のスプーンというポジションにあたるはずです。今回は、この柄杓が食器として機能することを証明し、神社に置かれているキャラからの脱却を図ります。
柄杓で食べてみよう
柄杓の本来の役割は水を汲み取ること。柄杓の歴史を鑑みても、「汁もの」への耐性は高そうです。日本式スプーンの役割を担えるのか。実際に食べて検証してみます。
【検証その1:味噌汁】
柄杓の役割を考えれば味噌汁はいけるはずなのです。問題は具材ですね。それをすくいとって口に運べるのか。確認してみましょう。
お椀とジャストサイズの柄杓。じゃがいもをすくうのに苦戦しています。どんぶりに味噌汁をいれたほうがよかったですね。
「味噌汁」はすくって飲めました。しかし具材はすくえません。
お椀から味噌汁をすくって飲むという考え方がズレていました。鍋から直接柄杓ですくい、柄杓のまま食卓に並べたほうが、洗い物が減らせて具材も食べられます。
【検証その2:白米】
和の食器であるならば、ジャパニーズソウルである白米は食べられるべきです。
お椀からコメをすくいだすことはできました。まえもってふわっとお椀に盛っておいたほうが、すくいだすのが楽そうです。
持ち手の位置がかなり高い位置になるので、五十肩のかたや体が硬いかたにはきつい動きです。「口に運ぶ」というよりは、口に「落とす」といったほうが適切ですね。
食べた後の柄杓を見ると、ご飯粒がべたりとこびりつき、洗うにも時間がかかりそうです。ゆっくり食事を楽しむ時間がないとき、柄杓は避けるべきでしょう。
【検証その3:ナン】
いままでは箸やレンゲなど、他の道具の代わりとして使えるかどうかを検証してきました。今回は手で食べるものに挑戦してみます。ナンです!
……挑戦するといったもののアプローチがわかりません。
「ナイフとフォークで納豆ご飯をたべてみろ」といわれた感覚です。とりあえず切断を試みます。
ちょっと削れました。……ナンは手で食べましょう。
【検証その4:ステーキ】
今度は、洋食器であるナイフとフォークを超えられるか検証します。ステーキを柄杓で食べてみます。
全然切れない…かといってすくいあげてかみつくにもサイズが大きすぎます。
ここはおとなしくナイフを使いカットします。
不思議と柄杓がフォークっぽく見える写真ですね。
カットした肉をすくいとろうとしましたがダメでした。
すくう方向が逆だろ、というツッコミは心のなかに留めておいてください。やはり柄杓はナイフ、フォークの役割を超えられませんでした。
柄杓の力を引き出すメシ
柄杓で食べ物をとることは難しいと体感できました。箸やスプーンのような使い方をすることが間違いだったのでしょう。柄杓の特徴を今一度整理し、新たな使い方を模索してみました。
盛り付けのアクセントとして
柄杓で食べ物を口に運ぶことにのみ注目しすぎていました。柄がついている皿という認識でメシを食べればいいのです。柄杓に刺身を盛り付けてみることにしました。
柄杓に氷を入れ、皿の上にひっくり返します。
柄杓の底部分に刺身を盛り付けます。よく高級な料亭で、氷の上に盛り付けた刺身が出てくることがありますね。柄杓であれば、自宅でそれができるのです。柄の部分も何かしら工夫をすればアートっぽく刺身を盛り付けることも可能です。
一風変わった盛り付けを施したい人には柄杓はおすすめです。
「柄がついていること」を活用する
柄がついていて、先端に皿がついている食器……柄杓をそう考えれば、こんな使い方も可能です。
そう、直接火にかけることができるのです。別のお皿に移す必要がないため、洗い物が増えない、アツアツのまま食卓に出せる、熱い部分を直接触らなくて済む、といったいくつかのメリットがあります。
今回、それらのメリットを最大限享受できるであろう料理、アヒージョを作ってみました。
さっきのナンをつけていただきます。むしゃむしゃ食べていると、オリーブオイルが減り、みるみるうちに冷めてきます。
そんなときこそ柄杓の利点が生きてきます。食べてるうちに冷えても、柄杓をそのまま台所に持って行って火にかければ、またアツアツのアヒージョを楽しめるのです。
この方法を使えば、冷えてしまった一人分の煮込み料理の再加熱はもちろんのこと、さらにはご飯や肉におこげをつけたいときにも活用可能です。
まとめると
- 変わり種の盛り付けが無限大
- 再加熱が楽、やけどの可能性が極めて低い
- 一人分の調理に最適な量を調理できる
上記のような、柄杓には柄杓の利点があると分かりました。
今後ますます注目されるであろう和食文化。そんななかに柄杓の存在を盛り込める可能性は十分にあります。一人暮らしのかたから高級料亭の盛り付けまで!柄杓で和食ライフをエンジョイしてください!