発電できるサッカーボール「SOCCKET」で、途上国の子どもたちに光を

経済の発展には教育が不可欠。しかし発展途上国では十分な電気がないために、学習を満足にできない家庭もある。そんななか、サッカーすることによって机の明かりを灯す「SOCCKET」が商品化されることになった。
発電できるサッカーボール「SOCCKET」で、途上国の子どもたちに光を

発展途上国が豊かになるために、何よりも必要なのは子どもたちの教育だ。しかし、貧しい家庭では子どもも労働力となり学校に行かせられない。もし行けたとしても、夜は電気がないので灯油ランプや薪ストーブを灯りにして勉強をするほかなく、こういった灯りが子どもたちに健康被害をもたらしているのが現状だ。そんな子どもたちに電気を届けようと、ソーラーパネルや風車を設置する活動なども行われているが、コストや維持管理の問題から簡単には進んでいない。

そんななか、子どもたちがサッカーをすることで夜の勉強の際に使う灯りが確保できるという画期的なサッカーボールが開発された。このボール「SOCCKET」の開発の歴史は、2008年にさかのぼる。ハーヴァード大学で出会ったジェシカ・O・マシューズとジュリア・シルバーマンは、クラスのプロジェクトとしてこの「SOCCKET」を発想する。そして卒業後本格的に開発に乗り出し、11年には具体化のためにUncharted Play社を仲間と立ち上げたのだ。10年ころからは試作品を実際にアフリカの子どもたちに使ってもらうというテストを繰り返し、ついに今年、商品化にこぎつける。

このサッカーボールの仕組みはいたってシンプル。ボールの中に振り子のような発電装置と蓄電装置が備わっており、ボールを蹴ると電気が蓄えられるのだ。蓄えられた電池はソケットから供給され、LEDライトなら30分のプレイで3時間点灯することができる。10年に制作された動画でも、ボールを蹴ることでLEDを点灯できる様子を観ることができる。

ボールとしての性能は、重さは17オンス(約482g)で公式球として使えるものよりは1オンス(約28g)重いが、「発電装置があることでボールの転がりなどに影響が出ることはない」とのことなので、遊びや練習に使うには問題がないようだ。

商品として販売されるパッケージは、ライト付きボール1つと開発中の充電できるポータブルライト10個、ボールからライトへの充電は25秒でできるということなので、電気が貯まるたびに充電しておけば10人がライトを、1人がボール自体を家に持ち帰れば、1チーム11人全員が家でライトを使うことができるということになる。

販売開始を前に、13年2月26日からクラウドファンディングサーヴィス「kickstarter」で資金調達を実施。このプロジェクトでは89ドル以上の出資者にはリターンとして発売される「SOCCKET」を提供するほか、携帯電話に充電できるデヴァイスを出資者に優先的に提供すると発表。途上国の子どもたちだけでなく、アメリカのガジェット好きの心もとらえたようで、3月28日の締め切りまでに92,296ドルの資金を調達しプロジェクトを成功させた。

発展途上国の子どもたちに届けたいのももちろんだが、完全にオフグリットで人力で発電できるデヴァイスと考えると、先進国でも使い道は多そうだ。

TEXT BY KENJI ISHIMURA