日本語教育機関の設置基準を一部厳しく 法務省
外国人留学生に日本語を教える日本語教育機関が急増し、教育の質を確保できるのか懸念されている。法務省は質を保つため10月から教育機関の設置基準の一部を厳しくする方針を決めた。留学生が年間を通じて授業を満遍なく受けるよう授業期間を規定し、アルバイトで長期間休むケースなどを防ぐ。校長が複数の教育機関を兼務することにも制限を設ける。
日本語教育機関は外国人留学生の増加に伴って急増し、2018年4月時点で約680校に上っている。私立大学の数よりも多い。
政府は20年に外国人留学生を30万人にする目標を掲げている。日本学生支援機構によると、17年5月時点で大学や日本語教育機関などに在籍する外国人留学生は約26万7千人。前年同時期から11%増え、過去最多だった。
留学先の内訳は大学など高等教育機関が約18万8千人(10%増)、日本語教育機関は約7万8千人(15%増)。国内の18歳人口減少を背景に各機関が受け入れを拡大しており、特に日本語教育機関は前年より約1万人増え、5年前の3.3倍と急増している。
日本語教育機関は大学や専門学校と違い、法務省が定めた授業時間や教員数などの基準を満たした場合に設置が認められて告示される教育機関で、学校法人だけではなく株式会社や個人なども設置できる。
急増に伴って日本語教育機関をめぐるトラブルも目立つ。留学生にアルバイト先を紹介し、法定時間を超える不法就労をさせたとして運営者が逮捕されるケースが複数起きている。
法務省によると、日本語教育機関の増加の背景には、就労目的の学生を受け入れようとする学校が増えていることもあり、質の低下につながっているという。このため、同省は日本語教育機関の設置要件を定めた告示基準の一部を改正し、10月から運用を始める。
改正の一つは授業期間を年35週にわたるよう求める規定の新設。留学生が年間を通じて授業を満遍なく受けるようにする。現在は授業の分量について「年760単位時間以上」としか定めていない。全単位を半年などの短期間で取得でき、残りを長期休暇として「アルバイトがたくさんできる」と宣伝している学校もあるという。
1人の校長が複数の日本語教育機関の校長を兼務するケースもあり、管理体制の不十分さが問題となっている。新規定では校長の兼務は「2機関以内」とし、兼務する場合は副校長を置くことを求める。ただ、既に認められている日本語教育機関には5年の経過措置を設ける。
告示基準は、校長について「教育に関する業務に原則として5年以上従事した」などの条件を示している。日本語教育機関が急増する中で校長の人材が不足し、兼務が広がった可能性がある。法務省の担当者は「日本語教育機関を日本語学習を目的とした本来の姿に戻していきたい」と説明している。