日米の対中戦略が完全に吹っ飛んだ「ドゥテルテ訪中」の衝撃!

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近藤 大介 プロフィール

ドゥテルテの衝撃

「まるで、逆転の一本背負いを喰らったような気分だ。東アジアの地勢図が、一日にして塗り替えられてしまった・・・」

先週はまさに、「ドゥテルテの衝撃」に日本外交が揺れた一週間だった。10月20日、北京発のニュースが飛び込んでくるたびに、外務省でも首相官邸でも、口をあんぐり開けて戸惑いの表情を見せる人の姿があった。

それほど、日本にとってドゥテルテ大統領訪中の「放言」や、中国との「同盟」強化の衝撃は大きかった。

〔PHOTO〕gettyimages

この「フィリピンのトランプ」の異名を取る大統領は、10月25日から27日まで、今度は日本を訪れる。日本の外交関係者が解説する。

「9月6日に、東アジアサミットに合わせて、ラオスで安倍晋三首相とドゥテルテ大統領が初会談を開いた。その時、ドゥテルテ大統領は、6月まで市長を務めていた故郷ダバオに対する日本のODA(政府開発援助)に感謝し、『日本を尊敬しているし、今後は日本と協力して進めていきたい』と謙虚に述べたのだ。

7月12日にハーグの常設仲裁裁判所が出した、中国の南シナ海の領有権の主張には国際法的根拠がないとする裁定についても、『当然、尊重されるべきものだ』と語っていた。

8月11日に岸田文雄外相が、ドゥテルテ大統領の故郷ダバオを表敬訪問した際にも、ドゥテルテ大統領は、累計3兆円に上る日本からの支援や、自らが掲げるミンダナオ和平への支援、新たなマニラ首都圏の鉄道・地下鉄建設への円借款(総額2,400億円規模で2015年11月に署名)について、深く感謝の意を述べた。さらに、7月の常設仲裁裁判所の裁定についても、『強く確認し、尊重している』と語っていた。

それで安倍政権としては、ドゥテルテ新政権は、『親日親米反中』だったアキノ前政権の方針を継続すると判断し、フィリピンに海上自衛隊の練習機を最大5機有償貸与すること、及び新たに大型巡視船2隻を約165億円の円借款で供与することなどを決めたのだ。つまり引き続き、日本、アメリカ、フィリピンで連携して、南シナ海で中国の脅威に対抗していこうという意思表示だ。

ところが、20日の北京でのドゥテルテ大統領の放言で、すべての計画が吹っ飛んだ。かつ、訪日の際にドゥテルテ大統領の首に鈴をつけろと、アメリカからのプレッシャーも強まっている」

 
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