「女のスりか?!」

2017年11月14日 08時11分09秒 | 創作欄
喫茶店<セブン>を出た木村徹は、新宿駅から午前8時30分の総武線電車に乗った。
徹が勤務する飯田橋の企業は9時30分、始業である。
何時ものとおりの通勤ラッシュ電車で身動きが取れない。
だが、この日は何故か背後に女性の柔らかい体が密着していた。
相手の豊な乳房の感触が夏服のスーツから伝わってくるのだ。
その官能に振り向きたくなった時にドアが開き、振り向くとブルーのブラウス姿の女が逃げるような素振りで下車していく。
四谷駅であった。
車内に空間ができて、人と密着しなくなり徹は「ヤレヤレ」と安堵した。
冷房が車内に効いていたが、通勤ラッシュの電車はストレスを高めるものだ。
そして、飯田橋に下車した。
何か予感めいた気分でズボンの後ろオケットに手をやる。
徹は突然、汗が引くように青ざめたのだ。
あるはずのボーナスが入った袋が消えていた。
スーツのポケットを探るが袋はない。
社内ではYチャツ姿であり、その姿で社長水田春樹からボーナスを受け取り、ズボンの後ポケットに収めたはずだった。
それが消えていたのである。
喫茶店<セブン>を出る時も、手をやりポケットの膨らみを確認していた。
「女のスりか?!」徹は相手の不敵さにむしろ喝采した気分となった。










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