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「異国合戦 蒙古襲来異聞」岩井 三四二

2017年12月29日 22時41分11秒 | 読書
「異国合戦 蒙古襲来異聞」岩井 三四二(みよじ)


前々回の「小説 横井小楠」で歴史小説の面白さを再認識して,ミステリーと歴史小説を交互に読むことにしました.

歴史小説には,史実がその背後にあるわけですが,ストーリーの脚色としてフィクションが混ぜられるのは承知の上.
というか,そのフィクションが如何に面白いかがエンターテイメントとしての小説の価値を決めるんじゃないかな,とも思うわけです.

ともあれ,この異国合戦,史実としては,日本が二度の元寇(文永の役,弘安の役)に勝利したという点があるわけですが,その裏には,日本と元だけでなく,元の言いなりに兵を出させられ,国を疲弊させられた高麗の悲しい歴史もあるわけです.
また,2度目は高麗だけでは難しいと踏んだフビライは南宋にも出兵を命じました.
しかし,これは当時元に対して反乱の気配のあった南宋の国力を削ぐために,あえて出兵を命じたとか,南宋の戦艦が台風で沈没し,多くの兵士が亡くなって,フビライは「これで南宋は謀反を起こせなくなった」と,むしろ喜んだとかいう話も出て来ます.

主人公としては,日本側は肥後の御家人,竹崎季長(すえなが),高麗側は軍人の李ですが,どちらも正直言って戦争なんかしたくない.しかし,季長の方は,次男坊のため,土地が与えられず,武士として独り立ちするためにはどうしても戦功を立てる必要があった.李も軍門の家に生まれてしかたなく日本出兵に駆り出されたまで.

戦争なんて,所詮国の指導者の都合で始められるものだからね.
国民のことを思って始めた戦争なんて聞いたことがない.

戦争の意義なんて全くなくても,そこに人が関わる限り,ドラマがあるわけで.
侵略の愚かさ,それを政治に利用しようとする指導者.利用され,切り捨てられる人々.

人類が犯してきた罪の一端を切り取って見せてくれる,そんな小説です.

面白いというより,人間の愚かさを再認識させてくれるという意味で,極めて興味深いです.

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