築25年目を迎える都内のマンション(280戸)では、今年の夏に5年間の保険契約が満期になるので現在の保険会社から見積もりを取得したところ、保険料負担が2倍に増えることが分かり、これに驚いた管理組合から筆者が相談を受けることになりました。
マンション保険の場合、長期(5年)契約の方が単年契約に比べて1割以上保険料が安くなるのですが、5年分の保険料負担が倍増するうえに一括での支払いとなれば、十分な余剰金がない場合には毎月徴収する管理費を値上げして賄わなくてはならない可能性もありました。
ただ、こちらのマンションを実際に拝見したところ、築年数を感じさせないくらいきれいで、修繕や清掃も行き届いていました。そこで、2015年7月に発売された「マンションドクター火災保険」を管理組合に紹介したところ、保険料が上がるどころか、逆に2割以上下がることが分かりこの保険での契約が決まりました。
それにしても、なぜこれほど保険料に大きな差が生じたのでしょうか? まずはこの「マンションドクター火災保険」誕生の背景から説明しましょう。
新築に比べて、高経年マンションは設備劣化等によって事故が起こる確率が高くなるのが一般的です。築年別の保険金の支払い件数を見ても、築20年超のマンションが全体の7割以上を占めています(日新火災海上保険の社内データによる)。そのため、特に築20年以上のマンションは「高リスク」と判断され、保険各社は築浅のマンションに比べて高い保険料を設定しているのが実情で、築30年を超えると新規の引き受けを行わない会社もあります。
しかしながら、事故原因の中最も多いのは、主に老朽化した給排水設備からの水漏れによるものです。つまり、真の原因はマンションの「年齢」ではなく、「建物のメンテナンス不足」にあることが分かったのです。
そのため、たとえ高経年のマンションであっても、日常の保守点検や計画的な修繕がしっかりと行われていればこうした事故のリスクは小さいという判断のもと、「良質な管理に割安な保険料を提示する」というコンセプトで開発されたのが「マンションドクター火災保険」なのです。
ここで問題になるのが、「そのマンションの管理が良質かを誰がどうやって判断するのか」ということです。実際にマンションの目利きの役割を果たすのは、保険会社にとって容易なことではありません。検討の末、マンションに関する専門的知識を有し、中立的な立場で診断できるという理由から「マンション管理士」(国家資格)がメンテナンスの状況を診断する「マンション管理適正化診断サービス」の診断結果に応じて保険料が決まる仕組みとしました。
具体的には、マンション管理士が現地マンションに赴き、管理組合の理事長と面談のうえ関連資料を確認しながらチェックしていきます(※費用は無料)。管理組合の運営状況が適正か、設備の法定点検が確実に実施されているか、長期修繕計画にもとづき必要な修繕工事が行われているかなどの全14の項目にわたって診断し、その採点結果をもとに保険料を見積もることになります。
この保険の見積もりを取るには上でご紹介した「マンション管理適正化診断サービス」を申し込むことが必要で、日新火災海上保険(もしくはその代理店)に申し込む方法と日本マンション管理士連合会に申し込む方法の2つがあります。もちろん、ネット経由での申し込みも可能です。(※URLは下記参照)
この「マンション管理適正診断サービス」のメリットは、次の2点です。
(1)マンション管理士が管理組合として改善すべき点やアドバイスをレポートとして提出するので、今後の建物管理や運営を向上させるための参考資料として活用できます
(2)共用部の損害保険料の割引を受けられる可能性があります
マンションにおいては、日常の管理や計画的な修繕が行き届いているかどうかで将来の資産価値に少なからず影響が出てくると思います。いま現在は火災保険に関する悩みがなくても、自分が住んでいるマンションの管理品質を費用負担なく知ることができる貴重な機会にもなりますから、検討してみてはいかがでしょうか。