遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国・ロシア vs 米国と、ドイツ(第一次大戦)・日本(第二次大戦)vs 連合軍

2018-11-12 01:10:07 | 南シナ海不法占拠
 第一次大戦前のドイツと英国の建艦競争と、近年になって南シナ海の軍事拠点化が加速するまでの中国と米国の核戦力競争。第二次大戦に先立ってワシントン体制を軍事的に破壊した日本と、米国主導の下に形成された地域秩序には手出しを控えてきた、近年になって南シナ海の軍事拠点化を加速するまでの中国。
 一方、その独日の轍を踏んだロシア。
 ドイツ、日本を反面教師として米国に対応してきた中国でしたが、習近平による近年の南シナ海の軍事拠点化他の姿勢は、これまでの「韜光養晦(とうこうようかい)」姿勢から、「奮発有為(勇ましく事をなす)」に転換しようとしている。
 中国政府内では外交方針をめぐる暗闘が起こっていると説くのは、愛知学院大学柴田哲雄准教授。
 
中国は今後もドイツと日本を反面教師にするのか 愛知学院大学准教授・柴田哲雄 - 産経ニュース 2018.11.11

 近年、中国は日本を含む近隣諸国に深刻な軍事的脅威を与えている。それ故に、中国はこれまで軍事面ではむしろ「慎重」に振舞ってきたといえば、読者は意外に思うかもしれない。これに関連して、習近平国家主席は2013年6月の訪米に際して、「中米両国は歴史上大国が衝突し対抗したのとは異なる新たな道を歩むべきだ」と強調した。要するに習氏は、新興「大国」の中国が覇権「大国」の米国に相対するに当たって、かつての新興「大国」のドイツや日本の轍(てつ)を踏まぬようにするつもりだと述べたのである。実際、中国は2008年頃に「韜光養晦(とうこうようかい)」という国際協調の外交方針を放棄してからも、ロシアと異なって、ドイツや日本を反面教師にするかのように、米国との軍事衝突の可能性を極力なくそうと努めてきた。

■ドイツを反面教師とする
 
第一にドイツは第一次世界大戦に先立って、建艦競争により英国本土を直接の脅威にさらしたが、中国は米国との核軍拡競争に乗り出すこともなければ、米国本土に直接脅威を与えるようなこともしていない。そもそも中国は巨大な経済力を有するようになっても、依然として保有する核弾頭数を米国よりも一桁少ないままに保っている

 もっとも、トランプ米大統領が10月20日に中距離核戦力全廃条約からの脱退を表明するのに先立って、昨年、ハリス米太平洋軍司令官(当時)が「中国の保有するミサイルの実に95%は中距離ミサイルだが、米軍にはこれに相当する装備はない」と強い危機感を示している。しかしこれも見方を変えれば、中国の核ミサイルが、少なくとも米国本土に対しては、何らの脅威にもなっていないことを、米軍幹部が裏書きしたことにほかならないだろう。というのは、中国の中距離ミサイルは、西太平洋地域での有事を想定して、あくまでもグアムなどの米軍基地や米空母を標的にしているに過ぎないからである。

 一方、
ロシアはドイツの轍を踏むかのように、長期にわたる経済停滞にもかかわらず、冷戦時代と同様に米国と核軍拡競争を繰り広げ、米国本土に直接脅威を与え続けてきた

 
第二に、ドイツは同盟国のオーストリア・ハンガリーによって望まぬ戦争に引きずり込まれたが、中国は「血の同盟」関係にある北朝鮮に対して注意深く対処している。中国は、一貫して米朝開戦の火種になりかねない北朝鮮の核ミサイル開発に反対してきたばかりか、開戦が焦眉の急に迫った際には、北朝鮮との対立が深刻化するリスクを冒してでも、米国に同調して厳しい経済制裁を科してきた。習氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と抱擁を交わして、「血の同盟」を再確認するに至ったのは、北朝鮮が核放棄を声明し、米朝首脳会談の実現のめどが立ってからのことである。

■日本を反面教師とする
 
第三に日本は第二次世界大戦に先立って、米国主導の下に形成されたワシントン体制(中国の領土保全・門戸開放・機会均等などを定めた九か国条約などからなる)を軍事的に破壊したが、中国は米国主導の下に形成された地域秩序には手出しを控えてきた。昨今、米中の軍事的対立の焦点となっているのは南シナ海であるが、近年になって中国による南シナ海の軍事拠点化が加速するまでは、米国が南シナ海問題に関与することはなかった。すなわち米国は戦後、ベトナム戦争に介入したり、アセアン結成を後援したりするなど、東南アジアの地域秩序の形成に主導的役割を果たしてきたが、南シナ海はそこからすり抜けて、エアポケットになっていたのである。

 一方、
ロシアは日本の轍を踏んでいるかのように映る。米国は1994年にロシアとともに、ウクライナの非核化と引き換えに、ウクライナの独立・主権・国境を保証すると声明した。しかしロシアはそれを一方的に破り、クリミア半島を併合するなどした(プーチン大統領は、クリミアの住民投票の結果を踏まえているとして、併合を正当化しているが)。ロシアがこのようにドイツや日本の轍を踏みながらも、米国と開戦するまでに至らないのは、ひとえに核抑止力のためだと言ってよいだろう。

■「奮発有為」?
 もっとも
最近になって、米国政府は、貿易戦争を本格化させるのと軌を一にして、南シナ海問題にも本腰を入れて関与しようとする姿勢を見せている。先に言及したハリス氏の危機感に呼応して、トランプ氏が中距離核戦力全廃条約からの脱退を表明したのも、その一環だと言ってよいだろう。

 中国が依然としてドイツや日本を反面教師にしているのならば、ここはいったん米国に譲歩して、南シナ海における軍事拠点化の一時凍結などの措置を講じるのだろうが、
実際には米中の軍事衝突が懸念される状況になっている。9月30日に「航行の自由」作戦を実施していた米イージス駆逐艦に、中国海軍の駆逐艦が異常接近して、一触即発の事態を招いたのである。中国側の挑発行為とみられる。

 こうした事態は果たして一過性のものなのか、それとも
中国政府の外交方針の転換を端的に示すものなのか、現段階では判断することができない。ただ中国政府内では外交方針をめぐる暗闘が起こっている習氏が「中国はすでに米国に対抗できる力がある」という自信に基づいて「奮発有為(勇ましく事をなす)」に転換すべきだとしている一方で、元・前国家主席の江沢民氏や胡錦涛氏ら長老がこれに強く反対しているのである(『東京新聞』8月7日)。報道によれば、10月26日の日中首脳会談で、安倍首相は「東シナ海の安定なくして、真の関係改善はない」と強調するばかりで、南シナ海問題には一切触れなかったとのことである。しかし安倍氏の呼びかけにもかかわらず、東シナ海の現場では緊張緩和の兆しがいっこうに見えてこない。やはり南シナ海の緊張緩和なくしては、東シナ海の緊張緩和もあり得ないのではなかろうか

 仮に中国政府が「奮発有為」に舵を切って、南シナ海で米艦を挑発するような行為を頻発させる事態になれば、いずれ米中の軍事衝突といった緊張の激化を招きかねない。
安倍氏は習氏に対して、南シナ海問題についても言及し、長老の懸念に呼応するように、軍事拠点化の一時凍結などの「慎重」な振る舞いを勧告すべきではなかっただろうか。

 ドイツと日本を反面教師にしてきた中国。ドイツと日本の轍を踏んでいるロシアを比較し、今日の貿易戦争他をエスカレートさせている米中関係は、中国政府の外交方針を巡り暗闘が起こっていて、習氏が「中国はすでに米国に対抗できる力がある」という自信に基づいて「奮発有為」に転換すべきだとしている一方で、元・前国家主席の江沢民氏や胡錦涛氏ら長老がこれに強く反対しているのだと、柴田准教授。

 米・トランプ政権は、習近平の野望に気づき、対中抑止に転じたことが顕在化したのは、今年1月下旬に公表された「国防戦略 2018(NDS-2018)」。
 「大国間角逐」こそがアメリカ国防にとって最大の脅威であるという、国際軍事環境に対する現状認識が示され、具体的には「中国の軍事力、そしてやがてはロシアの軍事力、との熾烈な競合」があげられたのでした。米中の貿易戦争のエスカレートは、その一環なのです。
 米国の対中政策がついに決定的な変革を迎えた - 遊爺雑記帳

 貿易戦争の他に安全保障での対立にも目を向ける必要があり、南シナ海を巡る米中の攻防は、米国だけではなく、「自由で開かれたインド太平洋戦略」として日米印豪が主導し、対中抑止に注力しているところですね。

 定年制を廃し、王岐山も副主席として残し、独裁体制を確立したとみえていた習近平体制を、柴田准教授が、いまだに中国政府内では外交方針をめぐる暗闘が起こっていると指摘されているのは、最近では特筆に値する見解ですね。
 国内の経済成長率の低迷、その対策としての海外での需要喚起とその取り込み政策の「一帯一路」に続出する頓挫。習近平の足場が揺らいでいるのは事実と推測されますが。。

 日本はどう対応すべきか。
 安倍氏は習氏に対して、南シナ海問題についても言及し、長老の懸念に呼応(江沢民・上海閥や胡錦濤・共青団派の習近平対抗勢力への支援)するように、軍事拠点化の一時凍結などの「慎重」な振る舞いを勧告すべきと、柴田准教授。
 
 政府主導ではなく、民間企業の自己責任という、「一帯一路」への是是非非での日中共同事業参画なども、尖閣諸島近海への侵略行為が続いている中、慎まねば、中国のみならず、世界各国に対しても誤った印象を与えてしまいます。
 元々は安倍首相が唱え始めた、米豪印と連携した「自由で開かれたインド太平洋戦略」に、ASEAN諸国や、欧州勢の参加を増やし、習近平が目指す「中国の夢」への抑止力構築が進められることを願います。



 # 冒頭の画像は、北京で行われた日米首脳会談に臨んだ両首脳。




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