top of page

第41回 "Altbachisches Archiv" 「古いバッハ家の史料集」その1


第4回定期演奏会のプログラムについての記事の3つめです。

これまでの記事は以下からご覧いただけます。

ぜひ本記事と合わせてお読みください!

第39回 第4回定期演奏会選曲コンセプト

第40回 G. P. da パレストリーナ ミサ《シネ・ノミネ》

 

(ヨハン・ゼバスティアンの父、ヨハン・アンブロジウス・バッハの肖像画)

*バッハ一族について

 ヨハン・ゼバスティアン・バッハは50歳になった時に、一族の家系を記した文書 “Ursprung der musicalisch-Bachischen Familie”(バッハ音楽一族の起源)を作成しました。そこには合計53人にものぼるバッハ家の音楽家たちが名を連ね、ヨハン・ゼバスティアン自身による紹介文が書かれています。

 ヨハン・ゼバスティアンによると、一族の起源は16世紀にハンガリーでファイト・バッハというパン職人だったそうです。パンを焼くというドイツ語 “backen”はこの当時には “bachen”と綴っていました。この “bachen”が彼らの姓 “Bach”の由来だとされています。ファイト・バッハは小麦粉を挽く水車のリズムに合わせて弦楽器をつまびいていて、それがバッハ家の音楽の出発点であると、ヨハン・ゼバスティアンは語っています。

 今回取り上げたバッハ一族の作曲家は3人、ヨハン・バッハ(1604-1673)、ヨハン・クリストフ・バッハ(1642-1703)、ヨハン・ミヒャエル・バッハ(1648-1694)です。

 ヨハン・バッハはヨハン・ゼバスティアンの祖父クリストフの兄、ヨハン・クリストフとヨハン・ミヒャエルは祖父の弟の息子兄弟、すなわちヨハン・ゼバスティアンの父ヨハン・アンブロジウス(1645-1695)から見ると、従兄弟ということになります。とにかく全員ヨハンがついてなにしろ大変ややこしいので、以下に簡単な家系図を掲載しておきます。

バッハ家 家系図(灰色の人物が今回取り上げる作曲家)

 

ヨハン・バッハ(1604-1673) 「私たちの命は影のようなもの」

Johann Bach "Unser Leben ist ein Schatten"

 バッハ一族は、ヨハン・ゼバスティアン以前にも多数の音楽家を輩出した家系で、ヨハン・ゼバスティアンは一族の音楽財産を非常に大切にし、それらを曲集としてまとめて保有していました。 “Altbachisches Archiv”(古いバッハ家の史料集)と呼ばれるこの曲集に登場する作曲家のうち、一番年長なのがヨハン・バッハです。

 ヨハン・バッハはヨハン・ゼバスティアンの祖父の長兄で、エアフルトの教会オルガニストとして活躍しました。彼の二番目の妻は、ヨハン・ゼバスティアンの母の親戚だったので、ヨハン・バッハはヨハン・ゼバスティアンと、父方母方双方から親戚関係でした。彼の作品は上記の曲集に収められた3曲しか現存していませんが、そのことが不思議なくらい作品の完成度は高く、工夫に満ち溢れています。

 モテット「私たちの命は影のようなもの」は6声の第1合唱と3声の第2合唱という編成で書かれています。第2合唱には“latentis”(隠された)という単語が付け加えられており、第1合唱とは離れた場所で、おそらく会衆からは見えない位置に配置されて演奏されたものと思われます。

 このモテットは4つのセクションで構成され、第1合唱と第2合唱がそれぞれ聖書の章句とコラールを歌い交わします。この世この生の儚さを歌った最終コラールでは、末尾でソプラノ2声がエコーとなり、ユニゾンで終止します。生きることの儚さ、虚しさを歌ったこのモテットの終結部としてこれほどふさわしい手法は他にないのではないかと思われます。

 これとよく似た終結部を持つ作品がヨハン・ゼバスティアンの作品の中にあります。初期の教会カンタータ106番の2dです(譜例1)。ここでは器楽を含め徐々に声部が減っていき、最後は通奏低音も消えてソプラノの装飾的な歌だけが虚空に響くように作曲されています。

譜例1(カンタータ106番2d終結部)

(その2につづく)

――・――・――・――・――

【Salicus Kammerchor第4回定期演奏会】

5月20日(日)14:00開演@台東区生涯学習センター ミレニアムホール

5月23日(水)19:00開演@豊洲シビックセンター ホール

詳細はコチラ↓

――・――・――・――・――

【CD発売中】

La Musica Collanaとのジョイントコンサートを収録したライブCDをウェブ販売しております!

――・――・――・――・――

【DVD発売中】

第2回定期演奏会のDVDをウェブ販売しております!

――・――・――・――・――

【メールマガジン配信中】

サリクスの最新情報をお知らせしております!

新規ご登録の方には限定動画をプレゼントしております!

詳細はコチラ↓

――・――・――・――・――

【最新動画公開中!】

Ensemble Salicusレクチャーコンサートからジョスカン・デ・プレ「主よ、我らの主よ」をアップしました!

他の動画はコチラ↓

――・――・――・――・――

【主宰の櫻井元希のウェブサイトはコチラ↓】

bottom of page