星の金貨 new

星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

ホーム » エッセイ » 世界最強の軍隊・アメリカ軍!なぜ勝てないのか?《1》

世界最強の軍隊・アメリカ軍!なぜ勝てないのか?《1》

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

所要時間 約 9分

広告
広告

戦争による決着、軍事的な解決という手段について、アメリカは考え直す必要がある

ベトナム戦争はアメリカにとって間違いなく全面戦争であった

          

アーノルド・アイザック / ルモンド・ディプロマティーク 2018年5月6日

          

「今度こそ、彼らはするべきことをしている。」
2018年の春初め、5日間に渡ったアフガニスタン訪問の最後にこの国の最高軍将校が楽観的見解を示したことをAP通信の記事が伝えました。
AP通信の記者はアメリカ海軍のジョセフ・ダンフォード・ジュニア多国籍軍参謀長が視察を終えて帰国の途についたと伝え、アメリカが支援するアフガニスタン国内でのタリバンとイスラム国家に対する戦争について、『明白に楽観的な感覚』を明らかにしたと付け加えました。

             

暗闇の向こうに光が見えてきたのでしょうか。

              

現地で随行していた記者たちがダンフォード将軍に、世界をリードする世界最強を誇る軍事力を持ちながら、将軍の言葉を借りれば米軍とアフガニスタン政府軍が今度こそ間違いなく勝利を手にできる『これまでと根本的に異なるアプローチ』を考え出すのになぜ16年もかかったのか、そのことを尋ねたかどうかは伝わっていません。

            

しかしそこが肝心なところであるはずです。
もしもアメリカが自分たちは歴史上最も強大な国家であると言い続け、その軍隊はトランプが語るように「史上最強の戦闘能力を持っている」のであれば、資金力においてもアメリカとは比較にならないほど少額した持っていない敵を最終的に倒す方法を見つけ出すのに(もしそんな方法が本当に見つかったとしての話ですが)、なぜこれほど困難に遭遇し長い時間を要したのですか?

             

2017年12月に掲載されたセルジュ・ハミリ氏の『宗教戦争』を読んでみてください。
現在再び混迷のどを深めているアフガニスタン発の断片的なニュースは、ボルティモア・サンの特派員として3年間私が直接目撃した戦争初期の状況について改めて考えさせました。

             

ベトナム以後関わってきた戦争ではアメリカと現地の同盟国はすべての軍事力、少なくとも既存の概念において、圧倒的な優位性を持っていました。
しかしまだ勝利したことはありません。
米国の政治指導者、司令官級の軍人、そしてアメリカ国民がベトナムについてありのままに記憶していたならば、苦痛に満ちた真実が現実を糊塗する神話に覆い隠されていなかったなら、21世紀になってなお暴力的解決の道を探り続けるアメリカにもっと知的なそして効果的解決方法を与えることができたでしょう。

           

ロナルド・レーガンがこう語ったことがあります。
アメリカ軍は片手を後ろ手に縛られたまま戦った、つまり軍の力がこれ以上大きくなることを望まない政治家がいたためにベトナムで負けたのだという、性こりのない話を考えてみてください。
その意図するところははっきりしています。
アメリカがこれまでやってきたやり方をもっと徹底してやることで、あるいはもっと長く続けることで、戦争に勝つことができはずだという考え方です。
そして表面上は軍事衝突が終了した形になっているその他の紛争においても、同じ手法を用いるべきだというのです。

            

しかしアメリカは本当に投入した軍事力が足りなかったためにベトナムで負けたのでしょうか?
ベトナムは厳密には限定的な戦争などではありません。

            

実質的に全面戦争であった証拠には事欠きません。

              

米国が投入した軍事力がどれほど破壊的なものであったか検証してみましょう。
アメリカ陸軍兵站部隊の研究記録文書にはこう書かれています。
「軍事史上かつてない規模の破壊的火力戦力」が投入された。
そして並外れた量の空軍力と地上兵器兵力が投入され、さらには指揮官たちには機動力、装備、または補給について実質的に無制限に使用して戦争が行われたことが記録されています。
物資補給については、
「ほとんど無制限の供給体制が作られ、そして戦場から要求される兵器や装備については驚くほどスムースに可及的迅速に提供するシステムが整備され、銃砲弾と燃料については途切れることなく十分な補給が続けられましたが、そのほとんどが軍部以外からの掣肘をうけない体制になっていたのです。」

             

実際にベトナムの戦場に出た経験を持つ人々にとってすら、米国の火力に関する統計は驚くべきものです。
国防総省の長期間記録によると、アメリカ軍とサイゴンの南ベトナム政府軍は長期間、敵の600倍のスピードで砲弾を使い続けました。
1969年の1年間、北ベトナムの砲弾使用量が150トンだったのに対し、アメリカ側は地上兵器だけで100万トンの弾薬を使用しました。
1974年になるとアメリカ軍はもはや実際の戦闘は行っていませんでしたが、同盟国の南部ベトナム軍司令官は、アメリカの軍事援助の減少に起因する弾薬や装備の不足について絶えず嘆き続けていましたが、それでも南ベトナム軍は北が1トンの弾薬を発射する間に65トンの弾薬を使用していたのです。

           

これらの数字には航空兵器は含まれていません。
その数字を含めると、比率は尚一層グロテスクなものになります。
ベトナム戦争の全期間を通じてアメリカの航空機は、第二次世界大戦中に連合軍がドイツと日本に投下した爆弾の総量と比較し、北ベトナム、南ベトナム、ラオス、カンボジアにおいてその2倍の数の爆弾を投下しました。

             

こうした数字を見る限り、ベトナム戦争に置いてアメリカは過度な制限のもとで戦わなければならなかったという主張に説得力はありません。
火力、技術、そして機動力の点で想像を絶するほどの優位性を保ち続けて7年間戦ったにもかかわらず、アメリカ軍は勝利出来ませんでした、あるいは軍事援助を行っていた同盟国の軍隊を勝たせることはできませんでした。
そのもっとも論理的な結論は、米軍の軍事的原則とアメリカ政府の軍事に関するコンセプトは勝利の方程式には当てはまらないということなのです。

それでは後世のアメリカの兵士たちが、アフガニスタンとイラクに持ち込んだコンセプトはどうだったでしょうか?

          

《2》に続く
https://mondediplo.com/openpage/why-can-t-the-world-s-best-military-win-its-wars
  + - + - + - + - + - + - + - + 

           

私が多少なりとも文字を理解できるようになった時、ベトナム戦争に関しては日本国内でも毎日のように報道されていました。
当時は映画の世界で戦争映画はトップ・ジャンルの一つでしたが、その多くが第二次世界大戦において人類の敵・ナチスドイツと死闘を繰り広げる『正義の軍隊』アメリカという描かれ方がされていました。

しかしベトナム戦争のニュースを見ながら、子供心にアメリカ軍の変容を感じていました。
その印象を決定付けたのがソンミ村事件などの残虐な事件の報道でした。

ベトナム戦争が終わって早くも半世紀近く経ちますが、現在のベトナムとアメリカの良好な外交関係(対中国という問題を軸にした『敵の敵は味方』という側面があるにしても)を見ていると、何のためにあれほどの人々が殺され、人生を破壊されなければならなかったのか、との思いを強くします。

          

人生を破壊された人間の多さは、実はベトナムより戦場に駆り出されたアメリカ人の方が多かったのではないか?
これは表立っては報道されませんが、今日のアメリカ社会の荒廃の決定的要因の一つであることは間違いがないと思います。
無差別殺人や薬物依存の深刻化との深い関連性は自明のことです。

           

原文が長文のため4回にわたり掲載しますが、2019年の今日、軍事力により何が解決できるのかということを考えてみたいと思います。

広告
広告

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事に関連する記事一覧

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
最近の投稿
@idonochawanツィート
アーカイブ
広告
広告
カテゴリー
メタ情報