アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「撤回」を棚上げする翁長氏、擁護する琉球新報、沖縄タイムス

2017年01月02日 | 沖縄・翁長・辺野古

     

 辺野古新基地阻止をめぐる情勢はきわめて厳しいまま新しい年を迎えました。
 安倍政権による工事再開にストップをかけ、ふたたび法廷闘争によって新基地を阻止する決定的な「知事権限」である「埋立承認の撤回」に翁長知事が背を向け続け、県内の有力紙である琉球新報と沖縄タイムスがその翁長氏に同調し、「撤回」を要求していないためです。

 琉球新報、沖縄タイムス(以下、新報、タイムス)は1日付の紙面で、いずれも翁長氏の「新年インタビュー」を掲載しています。この中で翁長氏は、「辺野古新基地阻止」に関して「今年1年間いろいろなことを考えていて」(新報)、「今年1年間いろんなことを考えている」(タイムス)とまったく同じ「答え」に終始し、具体的なことは何一つ述べていません。

 それに対し、新報、タイムスとも歩調を合わせるように、それ以上突っ込んだ質問をしていません。「承認取り消し」を自ら取り消した以上、翁長氏が行うべきことはただ1つ、選挙公約に従って「承認を撤回」すること以外にありません。問題はきわめて具体的です。この期に及んで「いろいろなこと」というごまかしで逃げることは許されません。新報、タイムスはなぜ「撤回」について質問しないのでしょうか。

 「新年インタビュー」だけではありません。

 新報は翁長氏が「取り消し」を取り消し、工事再開が強行されたときの社説(12月28日付)で、「沖縄県は法治国家の精神を守った」と翁長氏を全面的に擁護する一方、「今回の県判断に対し、異論があるのも事実だ」と翁長氏に対する県民の批判を認めながら、「今回の取り消し通知によって新基地反対運動に足並みの乱れや分裂が生じることがあってはならない」と、翁長批判を封じようとしました。肝心の「撤回」についてはまったく口をつぐんだまま。

 一方、タイムスは、「『撤回』の是非 判断急げ」と題した社説(12月27日付)で、「市民らが要求するのは前知事の埋め立て承認の『撤回』である」と認めながら、「撤回の可能性を探る作業を急ぐべきだ」と述べています。一見「撤回」を求めているようですが、実際は「撤回」の「可能性を探る」として事実上「撤回」を棚上げないし後回しにしているのです。

 さらにタイムスは1日付1面で、「新基地に特化 協議の場 知事、国に創設要請へ」の見出しで、翁長氏が「協議を通し…埋め立て承認の『撤回』に向けて法的根拠の積み上げを狙う」と書いています。「撤回」に新たな「法的根拠」が必要であるかのようにいい、同時に翁長氏が要求する「協議の場」が「撤回」へ向けたものだとして翁長氏を擁護する、二重に問題を含んだ記事だと言わねばなりません。

 埋立承認の「撤回」については、すでに「撤回問題法的検討会」(新垣勉弁護士ら)が翁長氏に対する「意見書」(2015年5月1日)で、A4判20枚にわたって判例などを詳細に検討した結果、「沖縄県知事が撤回判断をなすことにつき、法的障害は何ら存しない」と結論づけているのです。

 また、うるま市島ぐるみ会議(共同代表・仲宗根勇元判事)の翁長氏への「要請書」(2016年12月22日)も、「行政行為の撤回は行政行為の取り消しと異なり、根拠規定がなくとも行政行為の主体がいつでも撤回権を行使できます」としたうえで、「知事は前知事のした埋め立て承認の撤回を必ず実行してください」と要求しています。

 翁長氏自身、知事選の公約や県議会答弁などで「知事選で示された民意は埋め立て承認を撤回する事由になる」(2014年12月17日県議会答弁)と繰り返してきました。
 「撤回」するのにいまさら「法的根拠」や「可能性」を検討する必要などありません。まして政府との「新たな協議の場」など、昨年の「集中協議」の二の舞いであり、使い古しの時間稼ぎ、アリバイづくり以外の何物でもありません。そのかんにも埋立工事は取り返しのつかないように進行してしまうのです。

 「知事は公約に従って埋立承認を直ちに撤回せよ」
 翁長氏にこの声を突きつけ、1日も早く承認を撤回させる。辺野古新基地を阻止する道はこれしかありません。
 新報、タイムスは、新基地阻止を願いたたかっている県民・市民の側に立つのか、それともあくまでも翁長氏を擁護して「撤回」棚上げの公約違反に手を貸すのか。新聞としての在り方が根本的に問われていると言わねばなりません。

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