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「謝罪より核廃絶実現を」オバマ氏訪問へ期待、映像ジャーナリスト田辺雅章さん

「核廃絶を実現してほしい」と語る田辺雅章氏(鳥越瑞絵撮影)
「核廃絶を実現してほしい」と語る田辺雅章氏(鳥越瑞絵撮影)

 「原爆への恨み、憎しみは終生なくならないが、謝罪はいらない。広島で感じたことを生かし、被爆者が生きているうちの核廃絶をぜひ実現してほしい」

 広島の爆心地に近い県産業奨励館(現・原爆ドーム)に隣接する旧家に生まれ、両親と弟が被爆死した広島市西区の映像ジャーナリスト、田辺雅章さん(78)は、オバマ米大統領の広島訪問に核廃絶に向けた機運の高まりを期待する。

 原爆が投下されたのは8歳の時。母と生まれたばかりの弟は昭和20年8月6日の数日前、疎開先から家の様子を見に帰って被爆。田辺さんは自宅周辺を捜し回ったが遺骨さえなく、2人の遺灰のみが今も原爆ドームの敷地内に眠る。

 軍人だった父は自ら被爆しながらも、被爆者の救援活動に尽力して終戦の日に亡くなり、身内は祖母1人になった。被爆後には高熱、下痢が続き、今も体調はよくない。「恨みや憎しみ」がなくなるはずがないが、オバマ大統領の謝罪は「無用」と明言する。原爆投下時に生まれていない人に謝罪を求めても「真実味に欠ける」。

 映像ジャーナリストとして活躍した田辺さんは還暦を機に、「生き残った者の責務」を果たそうとドーム周辺の被爆者ら500人以上に聞き取りを行った。インタビュー映像と被爆前後の再現映像を盛り込んだ映画を制作し、国内外で上映、被爆証言も行ってきた。

 10年以上前に米国で「ドーム周辺が公園でよかったですね」との質問が飛んだ。質問者は平和記念公園のある場所が広島随一の繁華街だったことを知らなかった。昨年は完成した映画を米国で上映した際、スタンディングオベーションが沸き起こった。「多くの人が原爆について学んでいると実感した」。米国の変化を感じるだけに、オバマ大統領への期待は大きい。

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