ビーズのような目。ふさふさで平らな尻尾が小枝と共に揺れている。誰もが寝静まった恐山山地の夜。 手のひらに載るくらいの大きさなのに、ヤマネはどこかマイペース。じっと見つめていたかと思うと、スイッチが……… (11/29)[記事全文]
激しい水しぶきが上がった。組んずほぐれつの真剣勝負だ。切っ先鋭いくちばしを突き合わせ、相手を水中にねじ伏せる。 彼は焦っていた。夫婦でようやく完成させた浮巣を増水で流された午後。近くで営巣する若い……… (11/22)[記事全文]
リスやヤマネと同じ齧歯目(げっしもく)なのに、ネズミばかりが嫌われ者。人家にすみ着く「家ネズミ」のイメージが先行するが、どうしてどうして、森で暮らす「野ネズミ」はなかなか魅力的な存在だ。 林床を駆……… (11/15)[記事全文]
青葉しげる森で木登りを始めたカエルの一群。雨上がりの夕。めざすは池のほとりにせり出したブナの枝先…。 モリアオガエルは広く本州に分布し、樹上活動に適した吸盤状の指先をもつ。下北はその北限。黄緑の背……… (11/8)[記事全文]
星降る丘にヨタカが舞う。釜臥山を望む夏の牧草地。蛾(が)や甲虫を追って、ひらひらと飛び続ける。 “彼”は農道に座り込んだ。体の割に大きく扁平(へんぺい)な頭。らんらんと光る目。くちばしのつけ根には……… (11/1)[記事全文]
胸を張り、突き抜けんばかりのかすれ声。春爛漫(らんまん)の野に響く「ケーッ、ケーン」の雄叫(おたけ)びは、キジたちの縄張り宣言だ。 格好良く、ちょっと自慢げ。しかし、近くに別の雄が迫っていた。最初……… (10/25)[記事全文]
白と黒だけではシックにすぎると思ったか、この鳥にはオレンジ色のくちばしが与えられた。それも特大だ。 翼を広げれば2メートル半近い。「勇壮」の言葉が似合う日本最大の猛禽(もうきん)。極東だけに分布し……… (10/18)[記事全文]
ぼくは地底獣「アナグマン」。穴の彼方(かなた)からやって来た――とは言うわけもないが、地中に掘った穴を利用して生きる中型哺乳類。ちょっとひょうきんなニューヒーローの登場だ!? その生活スタイルと腕……… (10/11)[記事全文]
日本で記録されるカモメ類二十数種の中で唯一、「○○カモメ」の名がつかないカモメ。「ニャー」「ミャーォ」などという鳴き声が、名前の由来になった。 八戸市の蕪島が繁殖地として天然記念物に指定され、大間……… (10/4)[記事全文]
何かに見られてるなぁ、と思ったら、頭上に二つの大きな目。ふさふさの尾を頭にのせて、不思議そうにのぞき込んでいる。夜の森でどうしたの?とでも言いたげな視線だ。 ムササビは好奇の心を持っている。 森……… (9/27)[記事全文]
「ヘビだっ!」 びっくりさせて、すみません。でも、下北半島の生物多様性を構成する彼らも大切な仲間たち。 日本の毒ヘビは沖縄や奄美諸島に生息するハブを除けば、ヤマカガシとニホンマムシ。本州最北の半……… (9/20)[記事全文]
小さな顔に黒い瞳。どこか人のまなざしにも似た目をもつ鳥は、猛禽(もうきん)きってのスピードスター。大空の広い空間を3次元に使って狩りをする。 海に面した大岩壁のてっぺんからスクランブル発進だ。大き……… (9/13)[記事全文]
どこまで歩いて行くのだろう。流氷の白い浜辺に黄金(こがね)色のキツネがぽつり。西日を受けた背中が輝いて見える。 キタキツネなどアカギツネの仲間は北半球に広く分布している。陸生哺乳(ほにゅう)類の中……… (9/6)[記事全文]
青い水面を割って、三角の背びれが突き出した。黒く光るボディー。白くまぶしい斑紋。リズムをとるように次々と噴気が上がる。知床の5月。シャチとの遭遇……。 シャチは母系の家族群で生活する。そびえ立つ背……… (8/30)[記事全文]
枯れ枝をカラカラと揺らしてエゾリスたちがやって来る。やわらかな光差し込む早春の森。冬を越した小さな命が輝いている。 幹をらせん状に登って追いかけっこ。鋭い爪(つめ)を使い、今度は真っ逆さまに下りて……… (8/23)[記事全文]
カモメ、潮風、港町。白い群れが紙吹雪のように飛んでいた。海岸線の風のたまりで、ゆらりゆらゆら浮いている。 オオセグロカモメ。北海道の港ではおなじみの大型カモメ。筋肉質で頑丈な体。ピンクの脚ですくっ……… (8/16)[記事全文]
雑木林の一角からこぼれ落ちるようにベニヒワの群れ。百数十羽がオオヨモギの原に降り注ぐ。 枯れ野の真ん中に座って待つと、ベニヒワはにわか雨のようにやって来た。小さな翼でもこれだけ集まれば羽音はすさま……… (8/9)[記事全文]
雪のやさしさに包まれて、森は白くたたずんでいた。エゾフクロウがお気に入りの洞にいる。丸く大きな顔。正面に並んだ黒い目。「賢者」は静かに夜を待つ。 フクロウは冬の道路沿いで見かけることが多い。月夜の……… (8/5)[記事全文]
氷の間から丸い顔が浮かんだ。青く冷たい水にぽっかりとゴマフアザラシ。鼻先を寒空に向けて、静かに目を閉じる。 オホーツク沿岸には流氷より一足先にアザラシが“接岸”する。氷に覆われる前の港は「丸顔の仲……… (8/2)[記事全文]
凛(りん)とした空気を引き裂くようにタンチョウが鳴いている。くちばしを空に突き出して「クォー」「カッカッ」。黒と白の清楚(せいそ)な鶴の群れが、まぶしい雪原に舞い降りていた。 阿寒町の給餌(きゅう……… (7/29)[記事全文]
目を瞑(つむ)り、雪の上。座り込んで夜を待つ。遠くでキタキツネが鳴いている。湖畔の森を闇と冷気が包み込む。 エゾモモンガは断熱効果の高い“ログハウス”の中。ハンノキの幹にアカゲラが掘った穴を冬のす……… (7/26)[記事全文]
前日は吹雪だった。ハイイロチュウヒが消え、数羽のコミミズクが姿を見せた。昼間も活動する草原のフクロウ。リズムをとるように羽ばたいて飛ぶ。 金色の目。黒いアイシャドー。猫の顔を鳥の体につけたようだ。……… (7/22)[記事全文]
「ケアシ」は「毛脚」の意味という。特徴そのままが名前になった。少数が渡来する冬のタカで、この鳥を見るために厳寒の北海道を訪れるバードウオッチャーもいる。 フィールドスコープでのぞいてみた。確かに羽……… (7/19)[記事全文]
黒い首に白いレース模様。スカーフをおしゃれにあしらった“貴婦人”の装いで、コクガンが波間を漂う。函館周辺の沿岸は国内有数の越冬地だ。 黒雁。顔から胸にかけてが最も濃く、目もくちばしも黒い。シックな……… (7/15)[記事全文]
太陽が地平線に傾き、地球の影が湖畔の森を包み込む。昼から夜へ、光移ろう青紫の夕。冬枯れた木々のシルエットの枝先に、銀色の星が瞬き始めた。 小さな爪音(つめおと)が幹を駆け上がっていく。エゾモモンガ……… (7/12)[記事全文]
張りのある低音が凍った空気を震わせる。 「ボーボー」 「ウーゥー」 シマフクロウの登場だ。静まり返った満月の空に2羽の歌声が響く。 この鳥は鳥のようには鳴かない。後から続く雌が背中をすぼめて……… (7/8)[記事全文]
湿原近くの牧草地にひょっこりとエゾユキウサギ。わずかに青みの残る草を一心に食べ始めた。零下の夜。双眼鏡を持つ手が凍りつく。寒さに向かう野生の顔がたくましく見えた。 雪の日。スノーシューで林道を行く……… (7/5)[記事全文]
冬の日差しをまぶしくはね返して、白いつばさが降りてきた。ドスンと響きが聞こえたような、ユーモラスな着水。足の水かきを水上スキーのように操って、青い川面に滑り込む。 オオハクチョウ。大きなものは12……… (7/1)[記事全文]
涼やかな優しい目をしていた。無心にカラフトマスを食べる若いヒグマ。サケやマスはこの季節だけの贈り物だ。満たされた表情に出会う小春日和の知床。 ヒグマは頭を川の中に入れ、下流から上流へ歩いていた。水……… (6/28)[記事全文]
すきとおった秋の空気を震わせて、ヒシクイの群れが近づいてきた。「グワァ、グワッ」「ゴォッ、ゴォッ」。にぎやかな鳴き声が青空に響く。 十勝川下流域はヒシクイの渡りの中継地。秋風とともに数千羽が南下し……… (6/24)[記事全文]
秋の川面に航跡を残して、褐色の毛皮が泳いできた。水辺で暮らす小さな哺乳(ほにゅう)類。野生化したミンクがアメマス群れる流れに姿を見せた。 ミンクは北海道では「新参者」。北米から移入され、1950年……… (6/21)[記事全文]
5時25分。その足音は秋の夕闇と共にやって来る。日高山脈の山すそ。林道沿いにデントコーン畑が広がる。 ヒグマがササの斜面を下りて来た。慎重に数歩あるいては止まり、ゆっくりとまた一歩。かすかな音と気……… (6/17)[記事全文]
海を見おろす森からアオバトの群れがおりて来る。菜の花色の美しいボディーが青空に浮かんで、10…20…30羽。めざすは前浜の岩礁だ。アオバトは海水を飲むという不思議な習性をもつ。波に洗われる小さな岩礁……… (6/14)[記事全文]
耳を寝かし、鼻先を突き出すように「ピィッ」「ピィッ」。その鳴き声に三カ所ぐらいから応えがある。歩くとカラカラと乾いた音のするガレ場。ここはナキウサギの国だ。 カルメンのように葉っぱをくわえた一羽が……… (6/10)[記事全文]
マンションの11階のベランダの前をスマートな翼が横切った。札幌の都市空間を舞うチゴハヤブサ。澄みきった空にしなやかな曲線を描く。 ビルやマンションの屋上に夫婦並んでとまり、北の街の「アーバン・ライ……… (6/7)[記事全文]
ペルセウス座流星群の夜。家族で流れ星探しに繰り出した。街の明かりを離れて、暗く深い森の静寂(しじま)へ。 何の声だろう。「フィーャッ」「フィーャッ」。開けた川筋にかすれた鳴き声が聞こえている。シカ……… (6/3)[記事全文]