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野生を撮る

写真:1属1種の天然記念物で、下北半島が北限。背中には黒い帯模様が入り、細く長いひげも特徴的。花や果実、昆虫などを食べる=青森県むつ市

(72)ヤマネ 小さな「最古参」哺乳類

 ビーズのような目。ふさふさで平らな尻尾が小枝と共に揺れている。誰もが寝静まった恐山山地の夜。  手のひらに載るくらいの大きさなのに、ヤマネはどこかマイペース。じっと見つめていたかと思うと、スイッチが……… (11/29)[記事全文]

写真:日本のカイツブリ類で最大。1972年、下北半島基部の湖沼で国内初の繁殖が確認された。近年、小川原湖、宇曽利山湖などで数を増やしている。「青森県のカンムリカイツブリ繁殖個体群」は絶滅のおそれのある地域個体群(LP)。

(71)カンムリカイツブリ 決闘に勝って誇らしげ

 激しい水しぶきが上がった。組んずほぐれつの真剣勝負だ。切っ先鋭いくちばしを突き合わせ、相手を水中にねじ伏せる。  彼は焦っていた。夫婦でようやく完成させた浮巣を増水で流された午後。近くで営巣する若い……… (11/22)[記事全文]

写真:野ネズミの代表格。日本固有種で、列島にヒトが渡る前からすんでいたという=青森県むつ市

(70)アカネズミ 美しさ負けない

 リスやヤマネと同じ齧歯目(げっしもく)なのに、ネズミばかりが嫌われ者。人家にすみ着く「家ネズミ」のイメージが先行するが、どうしてどうして、森で暮らす「野ネズミ」はなかなか魅力的な存在だ。  林床を駆……… (11/15)[記事全文]

写真:一生懸命なあまり、木の上でジャンプして落ちてしまうカエルも。右下の雄はまた下から登ってきた

(69)モリアオガエル 枝の先、泡のゆりかご

 青葉しげる森で木登りを始めたカエルの一群。雨上がりの夕。めざすは池のほとりにせり出したブナの枝先…。  モリアオガエルは広く本州に分布し、樹上活動に適した吸盤状の指先をもつ。下北はその北限。黄緑の背……… (11/8)[記事全文]

写真:牧草地の1本の杭に「夜鷹」が舞い降りた。V字に広げたしなやかな翼は、鷹に勝るとも劣らない美しさだ=青森県むつ市

(68)ヨタカ 悲しみ抱えて星になる

 星降る丘にヨタカが舞う。釜臥山を望む夏の牧草地。蛾(が)や甲虫を追って、ひらひらと飛び続ける。  “彼”は農道に座り込んだ。体の割に大きく扁平(へんぺい)な頭。らんらんと光る目。くちばしのつけ根には……… (11/1)[記事全文]

写真:繁殖期、皮膚が裸出した顔をますます赤くして「恋する男」になる。体の割に小さな羽が地上生活者を物語る=青森県むつ市

(67)キジ 恋の季節、真昼の決闘

 胸を張り、突き抜けんばかりのかすれ声。春爛漫(らんまん)の野に響く「ケーッ、ケーン」の雄叫(おたけ)びは、キジたちの縄張り宣言だ。  格好良く、ちょっと自慢げ。しかし、近くに別の雄が迫っていた。最初……… (10/25)[記事全文]

写真:息絶えたサケのホッチャレを目当てに河川敷へ舞い降りる。白いくさび形の尾も特徴=青森県むつ市

(66)オオワシ ダンディーな「洋」の装い

 白と黒だけではシックにすぎると思ったか、この鳥にはオレンジ色のくちばしが与えられた。それも特大だ。  翼を広げれば2メートル半近い。「勇壮」の言葉が似合う日本最大の猛禽(もうきん)。極東だけに分布し……… (10/18)[記事全文]

写真:短い脚はO脚気味。小さな耳介も穴蔵暮らしに適している。側溝も生活空間だ=青森県東通村

(65)ニホンアナグマ 北国の穴掘り名人

 ぼくは地底獣「アナグマン」。穴の彼方(かなた)からやって来た――とは言うわけもないが、地中に掘った穴を利用して生きる中型哺乳類。ちょっとひょうきんなニューヒーローの登場だ!?  その生活スタイルと腕……… (10/11)[記事全文]

写真:脚は黄色。くちばしの先端近くに朱と黒の斑があり、成鳥でも尾羽に黒い帯が残る。国内で繁殖するカモメはオオセグロカモメとこの種だけ=大間町

(64)ウミネコ 「ニャー」が漁場に春告げる

 日本で記録されるカモメ類二十数種の中で唯一、「○○カモメ」の名がつかないカモメ。「ニャー」「ミャーォ」などという鳴き声が、名前の由来になった。  八戸市の蕪島が繁殖地として天然記念物に指定され、大間……… (10/4)[記事全文]

写真:背中から大きな尻尾をちょいとかぶり、お得意ポーズ。滑空時のバランスをとるのに役立つ長い尾が防寒フードに=青森県むつ市

(63)ムササビ 樹上から好奇のまなざし

 何かに見られてるなぁ、と思ったら、頭上に二つの大きな目。ふさふさの尾を頭にのせて、不思議そうにのぞき込んでいる。夜の森でどうしたの?とでも言いたげな視線だ。  ムササビは好奇の心を持っている。  森……… (9/27)[記事全文]

写真:ヤマカガシは二股に分かれた舌で獲物のにおいを嗅ぎながら、昼間もよく活動している。行動は素早く、ちょっと怒りっぽい=青森県むつ市

(62)ニホンマムシ 毒ヘビにドキッも大切

 「ヘビだっ!」  びっくりさせて、すみません。でも、下北半島の生物多様性を構成する彼らも大切な仲間たち。  日本の毒ヘビは沖縄や奄美諸島に生息するハブを除けば、ヤマカガシとニホンマムシ。本州最北の半……… (9/20)[記事全文]

写真:全国に分布するが、下北半島西岸は有数の繁殖地。黄色い脚に小鳥の肉片を持っている=青森県佐井村

(61)ハヤブサ 猛禽きってのスピードスター

 小さな顔に黒い瞳。どこか人のまなざしにも似た目をもつ鳥は、猛禽(もうきん)きってのスピードスター。大空の広い空間を3次元に使って狩りをする。  海に面した大岩壁のてっぺんからスクランブル発進だ。大き……… (9/13)[記事全文]

写真:北海道にはサハリンやユーラシア大陸北部と共通する種が多い。

(60)キタキツネ 人間社会を映す「野生」

 どこまで歩いて行くのだろう。流氷の白い浜辺に黄金(こがね)色のキツネがぽつり。西日を受けた背中が輝いて見える。  キタキツネなどアカギツネの仲間は北半球に広く分布している。陸生哺乳(ほにゅう)類の中……… (9/6)[記事全文]

写真:シャチは海の生態系の最上位にいる。個体数は少ない。健全で生産力の高い海洋環境の指標でもある。雄の背びれはひときわ大きく、高さ2メートル近くになるという。

(59)シャチ 「海の王者」力強く、気高く

 青い水面を割って、三角の背びれが突き出した。黒く光るボディー。白くまぶしい斑紋。リズムをとるように次々と噴気が上がる。知床の5月。シャチとの遭遇……。  シャチは母系の家族群で生活する。そびえ立つ背……… (8/30)[記事全文]

写真:オニグルミとチョウセンゴヨウのある森がエゾリスを育んでいる。脂肪分が多く栄養満点の種子は人が食べてもおいしい

(58)エゾリス 分散貯蔵、森づくりに一役

 枯れ枝をカラカラと揺らしてエゾリスたちがやって来る。やわらかな光差し込む早春の森。冬を越した小さな命が輝いている。  幹をらせん状に登って追いかけっこ。鋭い爪(つめ)を使い、今度は真っ逆さまに下りて……… (8/23)[記事全文]

写真:潮風になびくように飛ぶオオセグロカモメ

(57)オオセグロカモメ 貝落とし文化

 カモメ、潮風、港町。白い群れが紙吹雪のように飛んでいた。海岸線の風のたまりで、ゆらりゆらゆら浮いている。  オオセグロカモメ。北海道の港ではおなじみの大型カモメ。筋肉質で頑丈な体。ピンクの脚ですくっ……… (8/16)[記事全文]

写真:ベニヒワの群れは一斉に飛び、一斉に降りてくる。原野に舞う北の花吹雪

(56)ベニヒワ 天敵の危険よりきょうの糧

 雑木林の一角からこぼれ落ちるようにベニヒワの群れ。百数十羽がオオヨモギの原に降り注ぐ。  枯れ野の真ん中に座って待つと、ベニヒワはにわか雨のようにやって来た。小さな翼でもこれだけ集まれば羽音はすさま……… (8/9)[記事全文]

写真:「森の賢者」といわれるのは黒い目が顔の正面に配置され、人と似ているためだろうか。

(55)エゾフクロウ 夜のハンター

 雪のやさしさに包まれて、森は白くたたずんでいた。エゾフクロウがお気に入りの洞にいる。丸く大きな顔。正面に並んだ黒い目。「賢者」は静かに夜を待つ。  フクロウは冬の道路沿いで見かけることが多い。月夜の……… (8/5)[記事全文]

写真:ワモンアザラシ。人間界の喧騒(けんそう)をよそに今日も昼寝と決め込んだ。氷の上でほほ笑みさえ浮かべているようだ

(54)アザラシ 春、ゆりかごに

 氷の間から丸い顔が浮かんだ。青く冷たい水にぽっかりとゴマフアザラシ。鼻先を寒空に向けて、静かに目を閉じる。  オホーツク沿岸には流氷より一足先にアザラシが“接岸”する。氷に覆われる前の港は「丸顔の仲……… (8/2)[記事全文]

写真:強靭(きょうじん)な脚、白い尾羽のオジロワシが舞い降りた。ひぇー?!と驚き、威嚇するタンチョウ

(53)タンチョウとオジロワシ

 凛(りん)とした空気を引き裂くようにタンチョウが鳴いている。くちばしを空に突き出して「クォー」「カッカッ」。黒と白の清楚(せいそ)な鶴の群れが、まぶしい雪原に舞い降りていた。  阿寒町の給餌(きゅう……… (7/29)[記事全文]

写真:小さな指先で器用に持って、ただいま食事中

(52)エゾモモンガ 冬の夜 森の片隅に“小さな命”

 目を瞑(つむ)り、雪の上。座り込んで夜を待つ。遠くでキタキツネが鳴いている。湖畔の森を闇と冷気が包み込む。  エゾモモンガは断熱効果の高い“ログハウス”の中。ハンノキの幹にアカゲラが掘った穴を冬のす……… (7/26)[記事全文]

写真:飛びながらネズミを探すコミミズク

(51)コミミズク 丸い顔、集音器の役割

 前日は吹雪だった。ハイイロチュウヒが消え、数羽のコミミズクが姿を見せた。昼間も活動する草原のフクロウ。リズムをとるように羽ばたいて飛ぶ。  金色の目。黒いアイシャドー。猫の顔を鳥の体につけたようだ。……… (7/22)[記事全文]

写真:猛禽にはいつもカラスがつきまとう。ケアシノスリが口を開けて威嚇の表情を見せた

(50)ケアシノスリ 雪原のハンター

 「ケアシ」は「毛脚」の意味という。特徴そのままが名前になった。少数が渡来する冬のタカで、この鳥を見るために厳寒の北海道を訪れるバードウオッチャーもいる。  フィールドスコープでのぞいてみた。確かに羽……… (7/19)[記事全文]

写真:岩礁の海にペアのコクガン。幼鳥には首の模様はないという。道南から東北北部の太平洋岸が越冬地で、4月ごろまで観察できる=渡島支庁南茅部町で

(49)コクガン 波にたたずむ貴婦人の装い

 黒い首に白いレース模様。スカーフをおしゃれにあしらった“貴婦人”の装いで、コクガンが波間を漂う。函館周辺の沿岸は国内有数の越冬地だ。  黒雁。顔から胸にかけてが最も濃く、目もくちばしも黒い。シックな……… (7/15)[記事全文]

写真:空飛ぶ小さな哺乳(ほにゅう)類。日が沈み、エゾモモンガの活動時間がやってきた=網走支庁女満別町で

(48)エゾモモンガ 方向自在に滑空

 太陽が地平線に傾き、地球の影が湖畔の森を包み込む。昼から夜へ、光移ろう青紫の夕。冬枯れた木々のシルエットの枝先に、銀色の星が瞬き始めた。  小さな爪音(つめおと)が幹を駆け上がっていく。エゾモモンガ……… (7/12)[記事全文]

写真:暗く空を覆っていた雷雲が去った。差し込んだ夕陽にシマフクロウの目が浮かんだ

(47)シマフクロウ 絆 離れぬ夫婦の歌声響く

 張りのある低音が凍った空気を震わせる。  「ボーボー」  「ウーゥー」  シマフクロウの登場だ。静まり返った満月の空に2羽の歌声が響く。  この鳥は鳥のようには鳴かない。後から続く雌が背中をすぼめて……… (7/8)[記事全文]

写真:ユキウサギには外敵から身を守る優れた“装備”がある。保護色の毛。鋭い聴覚。広い視野をもつ大きな目。かんじきのような後ろ足は雪面でも沈まない。写真は初冬のエゾユキウサギ。換毛途中で、頭の上などに夏毛が残っている。耳の先だけは一年を通して黒い=釧路支庁標茶町で

(46)エゾユキウサギ ひょっこり、悠然

 湿原近くの牧草地にひょっこりとエゾユキウサギ。わずかに青みの残る草を一心に食べ始めた。零下の夜。双眼鏡を持つ手が凍りつく。寒さに向かう野生の顔がたくましく見えた。  雪の日。スノーシューで林道を行く……… (7/5)[記事全文]

写真:水しぶきを上げて着水するオオハクチョウ=帯広市内で

(45)オオハクチョウ 恋う、恋うと呼ぶ

 冬の日差しをまぶしくはね返して、白いつばさが降りてきた。ドスンと響きが聞こえたような、ユーモラスな着水。足の水かきを水上スキーのように操って、青い川面に滑り込む。  オオハクチョウ。大きなものは12……… (7/1)[記事全文]

写真:大きなつめ。シャベルのような手を使って器用に食べる。おとなしい犬とよくほえる犬がいるように、ヒグマたちにもそれぞれに個性がある

(44)ヒグマ 約束 悲しい事故、起こさぬため

 涼やかな優しい目をしていた。無心にカラフトマスを食べる若いヒグマ。サケやマスはこの季節だけの贈り物だ。満たされた表情に出会う小春日和の知床。  ヒグマは頭を川の中に入れ、下流から上流へ歩いていた。水……… (6/28)[記事全文]

写真:ハクガン飛行隊。この3羽とは別にもう1羽が飛来している。翼の先の「初列風切(しょれつかざきり)」だけが黒い=十勝支庁浦幌町で

(43)ハクガン 飛来数わずか“雪の鳥”

 すきとおった秋の空気を震わせて、ヒシクイの群れが近づいてきた。「グワァ、グワッ」「ゴォッ、ゴォッ」。にぎやかな鳴き声が青空に響く。  十勝川下流域はヒシクイの渡りの中継地。秋風とともに数千羽が南下し……… (6/24)[記事全文]

写真:川を見つめるミンク。シルバーブルーなどの毛色は突然変異で、野生化したミンクは黒が濃くなり、本来の姿に=釧路支庁音別町で

(42)ミンク 自然繁殖続けるハンター

 秋の川面に航跡を残して、褐色の毛皮が泳いできた。水辺で暮らす小さな哺乳(ほにゅう)類。野生化したミンクがアメマス群れる流れに姿を見せた。  ミンクは北海道では「新参者」。北米から移入され、1950年……… (6/21)[記事全文]

写真:白目で横にらみしながらすぎていく「見返りヒグマ」。北海道の森にヒグマがいることがどれだけ自然への緊張感と畏怖(いふ)の気持ちを抱かせるだろう

(41)ヒグマ 秋の夕闇、王者の足音

 5時25分。その足音は秋の夕闇と共にやって来る。日高山脈の山すそ。林道沿いにデントコーン畑が広がる。  ヒグマがササの斜面を下りて来た。慎重に数歩あるいては止まり、ゆっくりとまた一歩。かすかな音と気……… (6/17)[記事全文]

写真:アオバトが海水を飲むのはミネラルを補給するためと考えられているという=釧路支庁白糠町で

(40)アオバト 海水飲む不思議な習性

 海を見おろす森からアオバトの群れがおりて来る。菜の花色の美しいボディーが青空に浮かんで、10…20…30羽。めざすは前浜の岩礁だ。アオバトは海水を飲むという不思議な習性をもつ。波に洗われる小さな岩礁……… (6/14)[記事全文]

写真:ナキウサギ科の仲間はヒマラヤなど、哺乳類では最も高地に住むという。トムラウシでは真夜中のテントの中で鳴き声を聞いたことがある

(39)エゾナキウサギ 冬に備え勤しむ貯食

 耳を寝かし、鼻先を突き出すように「ピィッ」「ピィッ」。その鳴き声に三カ所ぐらいから応えがある。歩くとカラカラと乾いた音のするガレ場。ここはナキウサギの国だ。  カルメンのように葉っぱをくわえた一羽が……… (6/10)[記事全文]

写真:180万都市に暮らすチゴハヤブサ。夏鳥として北海道に渡来する。札幌市では大通公園などで留鳥のハヤブサを見かけることも

(38)チゴハヤブサ 都市舞うスマートな翼

 マンションの11階のベランダの前をスマートな翼が横切った。札幌の都市空間を舞うチゴハヤブサ。澄みきった空にしなやかな曲線を描く。  ビルやマンションの屋上に夫婦並んでとまり、北の街の「アーバン・ライ……… (6/7)[記事全文]

写真:シマフクロウの子どもたち。冬を越してようやく一人前に。親のテリトリーを離れるのは2年を経過してからのことが多いという

(37)シマフクロウ 家族仲良くすごす夏

 ペルセウス座流星群の夜。家族で流れ星探しに繰り出した。街の明かりを離れて、暗く深い森の静寂(しじま)へ。  何の声だろう。「フィーャッ」「フィーャッ」。開けた川筋にかすれた鳴き声が聞こえている。シカ……… (6/3)[記事全文]

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