性格診断テストをもとに、一人ひとりの性格に合わせた指導を行う個別指導学習塾・スクールIEで、昨年「やる気スイッチ先生コンテスト」が開催されました。全国の約2万人の講師達が、教えるスキルだけでなくコミュニケーションスキルも競い合ったこのコンテストの数学部門で、見事優勝を果たしたのが、大学3年生の和知悠平くん。コミュニケーションスキルを高める術と将来への役立て方を、聞きました。
否定の言葉を使わず、生徒と発展的なコミュニケーションを取ることの大切さ
――スクールIEでアルバイトをしようと思ったきっかけは、何だったんですか?
実は、小学4年生から高校3年生まで、生徒としてスクールIEに通っていました。中学まではバスケットボールしかしていなくて、勉強をほぼしていなかったんですよね。高校に上がって大学進学を意識した時に、スクールIEの先生が夢の話を通じて勉強する意味を教えてくれて、モチベーションを上げてくれたんです。
――その先生のおかげで、無事に大学に合格できたんですね。
そうなんです。先生に助けてもらったので、僕も同じことを下の世代にしてあげたくなったし、先生や教室にも恩返ししたいと思って、講師になることを決めました。大学1年生の4月から、スクールIEで働いています。
――働き始めてから、塾講師のイメージは変わりましたか?
生徒の時は、講師は勉強を教えればいいと思っていたんですけど、いざ教える側になってみると、勉強以外の話もしながら生徒のモチベーションを上げなきゃいけないことを知りました。その子の人生もかかっていますし、難しい仕事という印象に変わりましたね。
――勉強以外の話とは?
「なんで勉強しなきゃいけないの?」と聞いてくる生徒もいます。その疑問を抱いたままだと、勉強も受験も楽しめなくて意味がないと思うんです。だから、“夢を達成するための道具”として勉強を捉えられるように、夢の話をしますね。あと、その生徒が学校でどういう状況にいるか知るために、日常の話も聞くようにしています。その過程で信頼関係を築ければ、学習計画も立てやすくなるし、勉強もスムーズに進むようになります。
――働き始めた頃は、苦労したのではないですか?
生徒とのコミュニケーションは苦労しました。もともと周りから「うまくしゃべれない人」と言われることが多くて、講師としてもデメリットになる部分だと思っていたんです。でも、生徒としゃべらないと何も始まらないし、そう言われ続けたまま大学を卒業するのも嫌だったので、指導がうまい講師と生徒との会話を重点的に見させてもらって、改善しました。
――他の講師の指導を見て、学んだことは?
生徒に信頼されるために、否定の言葉を使わないということです。例えば「宿題やってこなかった」と言われた時に、「ダメじゃないか」と怒るのではなくて、「何があったの?」と理由を聞くようにしました。「でも」を使わず、相手を肯定するところから始めると、何でも話してくれるようになるんです。あと、目標を持たせること。志望校合格という目標のために、まずは数学の二次関数を理解するなど、より身近な目標を設定していくと、生徒も一つずつ達成しやすくなるので、その導き方を学びました。
“先生と教室に恩返しがしたい”という気持ちでつかみ取った優勝
――2017年に「やる気スイッチ先生コンテスト」が初めて開催されましたが、最初から出場しようと思っていました?
他の講師の授業って見に行こうと思わないと見られないので、うまい講師が集まるならば、いいところを盗みに行こうって考えで、出ようと考えていました。優勝とかはまったく考えていかなかったですね。
――神奈川大会の代表に選ばれた時の心境は?
スクールIEに入ったきっかけが“お世話になった先生と教室に恩返しがしたい”だったので、全国大会で名前を残せば、少しは喜んでもらえるんじゃないかと思って、上を目指すことを意識し始めました。
――全国大会に向けて、どんな準備をしたんですか?
教室の講師の方に生徒役を務めてもらって、全国大会と同じように20分間の模擬授業をしました。ある先生から「生徒を褒めすぎ」と言われたんですけど、生徒のいいところを見つけて、褒めていることが伝わっているならいいかなって、ダメ出しだったけどうれしかったです(笑)。
――全国大会の雰囲気は、いかがでしたか?
スポットライトを浴びて、注目されながら授業をすることは初めてなので、緊張しました。でも、審査の始まりに授業の合図の鐘が鳴ると、普段の感覚になれて、自分らしい授業を100%できたと思います。
――いざ、優勝した時は、どんな気持ちでした?
実感がなくて、優勝が決まった時に大勢の前で何をしゃべったかも覚えてないんです(苦笑)。でも、優勝することで教室に活気が生まれるし、恩返しもできるんじゃないかなって思いました。あと、自信を持てるようになりました。優勝してから授業を任されることも多くなったので、より一層しっからやらなきゃいけないなって。
――周囲からの評価も上がったんですね。
最近、主任になって、先生の授業指導もさせてもらっています。後輩が「アドバイスをしてほしい」と言ってくれるので、うれしいですね。勉強だけでなく、なぜ勉強をしなければいけないのかという意味づけの部分を生徒に伝えるよう、講師達には話しています。
――後輩の講師の授業を見ることもあるんですか?
そうですね。僕も授業を行いつつ、生徒に問題を解かせている間に、他の講師の授業を見ることもあります。後輩って発言しにくかったりするので、こちらから働きかけて聞き出したり、1人の生徒について英語の先生と学習の進行具合について共有したり。先生同士のコミュニケーションも大事にしています。
コミュニケーションを通じて信頼関係を築くスキル
――現在大学3年生ですが、学業と仕事の両立のコツは?
うまく両立できているとは思っていないんですけど、考え方次第だと思います。アルバイト・勉強・恋愛・遊びって、やることが増えるわけじゃなくて、楽しみが増えるという考えで進めています。
――自分の意志で決めたことに、楽しみを見出していくんですね。
そうですね。あと、大学1、2年生の間に学校の単位を取り切ろうと決めて、3年生からスクールIEでの授業の時間を増やすなど、ある程度計画して進めました。
――アルバイトの経験によって、どのようなスキルが身につきましたか?
信頼関係を築くスキルですね。生徒や講師と会話することで、コミュニケーションスキルが磨かれ、日常的な話や夢の話を通じて、互いに信頼し合える関係を作っていけるようになったと、思っています。
――信頼関係を築くスキルが、今後社会でどのように役立つと考えていますか?
例えば、1つのシステムを作る場合にも、相手が本当にほしいものをスムーズに引き出せれば、効率がよくなります。そのためには、信頼してもらうことが必要だと思うんです。お客さんと築ければ会話のスピードが上がるし、同僚と築ければ社内の雰囲気がよくなる。どんな業種でもチームやお客さん、人との関わりはあると思うので、コミュニケーションを通じて信頼関係を築いていけたら、目標を達成しやすくなると思います。
――最後に、和知くんの将来の目標は?
もともとは教師になって、生徒達を笑顔にしたいと考えていたんですが、今はもっと視野を広く持って、世界中を笑顔にできる仕事に就きたいと思っています。自己研究や企業研究をして、自分に合った仕事を見つけていきたいです。
まとめ
もともとは「うまくしゃべれない人」と評価され、コミュニケーションに自信がなかった和知くんですが、「お世話になった人に恩返ししたい」という気持ちから自分を変える努力をしていった結果が、コンテスト優勝でした。そして、“相手を否定しない”“夢の話を通じて、近い目標を設定する”というコミュニケーション方法が、信頼関係に結びつくと教えてくれました。塾講師だけでなく、あらゆるシーンで応用できそうな方法ですよね。
取材・構成・文:有竹亮介(verb)
撮影:森カズシゲ
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