草の名

私が栽培している薬草や、道端の草でセルフメディケーションにも使える類の植物を紹介してゆきます。

ノビル

2016年03月16日 | 薬草・雑草

  このところの暖かさで、 “どっこい生きてるよ~”とばかりにクマガイソウの植え付け場所にノビルが伸び始めました。クマガイソウは職員の方が、知人から貰い受けたと持ち込まれたものです。大抵は竹林に生えているのですが、竹のある場所は構内でも外れにあるため、それに変わる場所として探し、園の端にある生け垣の下に決めました。 

 貴重な植物だからちゃんと栽培しなくては・・・と思い、植え場所には気をつけて木蔭を探して植えたのですが、辺りには無かったはずのノビルAllium macrostemonが、よりによって其の場所にも生えてきたのです。

 

 これは一大事とばかりに、覆っている土を取り除いてノビルを取り除こうとすると、クマガイソウの根茎や動き始めているだろう新芽を傷つけそうで、思い切った作業は出来ません。                 半日、ノビルと格闘していて、ふと“そう云えばノビルの花をみたことがないなぁ”と気がつきました。

園内至る所にノビルは生えています。       春になると味噌和えにして食べる為、掘り採っています。

柔らかいうちは、食用にしますが、5月頃になると葉は硬くなるので見向きもせず、草刈り機での草刈りに任せていたのです。            

丁度その頃は、浅深色の茎を1本伸ばして花をつける時期なので、意識して花を観ようと思わない限り、見ることは出来なかったのです。他所の道端や野では、花をつけたのもあったでしょうに・・・・・    

まさに“心ここに在らざれば視れども見えず”だったのです。 

(花の写真がないので、北隆館刊「牧野和漢薬壮大図鑑の挿絵を拝借しました。)

 科名から、花の姿は想像できますが、調べてみるとノビルは、花茎の先に花穂をつけ、咲いた花は、2mmほどの花柄をだし、6枚の花被は白っぽい淡紫色を帯びているそうですが、花は一部しか開かず、ほとんどがムカゴになるそうです。秋になるとムカゴが自然に落ちて発芽して拡がるのだそうです。  “よぉ~し、今年はノビルの花を見てみるぞ!!”

 

ノビルは地下に球形か広卵形の白い鱗茎があって、これが多数分割して繁茂 する厄介な植物です。

地中でこんなに小さいときから、分割する兆しは既に出来ているのです。ムカゴや分割の作戦を使われるのですから、雑草として駆除しようとしても、至底取り除くことは適いません。

 薬用として用いるのは、鱗茎で、生薬名は山蒜(さんさん)といいます。                             利用法は、春から初夏にかけて地下の鱗茎を掘り採って外皮とヒゲ根を取り除き、水洗いしてから随時用います。成分は不明ですが、強壮、鎮痙、鎮咳、生理不順などに用いられます。又毒虫に挿されたときや腫れ物にも用いられます。食用としては、生食か軽く茹でて“ぬた”にしたり、また焼酎に漬けて薬用酒としても用いられています。 蒜とはにんにくのことですが、ニンニクは古代から栽培されていましたので、野には生えていません。ノビルの鱗茎を噛むと、ヒリヒリと口の中を刺激するので、野に生えたニンニクに似たものということが、名の由来なのでしょう。

 

ノビルは、古代から美味しい食材とされていたと思えます。                           『古事記』人代篇・その五に、                                               「その折に、大君(応神天皇)は歌を歌うた。                                     いざ子ども のびるつみに ひるつみに わがゆく道の ・・・」                           という記述があります。これは“さぁ子供達よ、ノビルを摘みに行こう。私が歩く道には・・・”という意味で、食材であるノビルの草摘みが愉しみだった“のだろうと思えます。

 

又『万葉集』巻十六-3829には、                                           「醤(ひし)酢(はす)に蒜(ひる)搗(つ)き合てて鯛願ふ 吾にな見えそ水(み)葱(なぎ)の羮(あつもの)」 という歌が載っています。                                                 これは、“醤酢(醤と酢を合わせた調味料のこと)を使ってノビルを和え物にし、なお鯛が欲しいと思っている私に、水葱(水草のこと)の吸い物のような不味いものをみせてくれるな”という意味でしょう。

 

 このように『古事記』や『万葉集』等に記述されているところから、古代では植物がどのように扱われていたのかを推察するのです。

 

 そのことから、現在はあまり用いられないノビルですが、“美味しい食材となり得る”・・・と私は思うのです。  “鰹のたたき”の薬味にノビルを使ってみましたが、生姜、ネギやニンニクの薬味とはちがった美味しさがありましたよ。                                                               ノビルはもう暫くが食べ頃です。お酒のお供には,最高ですよ~                         是非一度お試しあれ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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