サハラマラソン2015 まとめ

Kyo Paxi
kyoblog
Published in
4 min readJun 30, 2015

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サハラマラソン完走は、思ったよりずっと簡単でした。

「世界一過酷」という形容詞がつけられるサハラマラソン。そこでの経験はかけがいのないものでした。だからこそ、機会を見つけて何度も報告会をさせてもらっています。サハラで起こったことの一つひとつは、他の人の人生にとっても価値あるものだと思っています。

「世界一過酷」なものを達成したと言えば、大抵の人は驚き、褒めてくれます。だから、いかに大変だったかを語れば、自分の旅が偉業みたいに聞こえるでしょう。旅の体験談は盛りまくられる、というのがアタリマエと言えばアタリマエかもしれません。

たとえば、サハラ砂漠は50℃に近い気温になることがあります。その中で250km走るとしたら、それはそれは大変なことでしょう。でも、砂漠がずっと50℃を維持することはありえません。また、今年の場合は最高気温は40℃ぐらいだったと思います。推定最高気温38.9℃かな(笑)。
(追記: 期間中の最高気温46℃だったそうです)

そして、1週間で250km走ること。これはもちろん、日常生活からしたら大変です。僕もサハラに行くまで体験したことはありませんでした。しかし、この距離も、意外と、平気でした。

その理由とは・・・。

週250kmどころか、月250km走るのは、結構大変です。東京での日常生活を送っている合間に、時間を捻出することはかなり難しいです。ランニング経験のない人は、長い距離を走ることは「体力の問題」だと思う人が多いですが、実は体力よりも時間を取れるかどうかが、月に200km-300km走るための重要なポイントです。

サハラにいるときはどうでしょうか。

サハラマラソン中にすべきこと/できること
・起床して朝ごはん作って食べる
・次の野営地まで移動する
・晩ご飯作って食べて、寝る

携帯電話やネットは通じません。必要な食料以外はほとんど持ち物を持っていません。シンプルに「行くしかない」状況が用意されているのです。

お酒を飲んだ翌日や雨の日、走りたくないなーと思うことはよくあります。走らないこともよくあります。そこには「走らなくていい」理由がたくさんあります。それに打ち克つのが日常におけるランニングです。サハラではそれがありません。シンプルにやることが決まっているのでモチベーションを保つ必要すらないのです。

もちろん、過去に経験したことのない距離を走るので、筋肉が悲鳴をあげ、不本意にもできるマメに対処しなければなりません。でもすべては「次の野営地まで移動する」という、たった一つのことを成し遂げるための手段にすぎません。そのために最適と思われることを選択していけばよいのでした。

僕はサハラで「目的をシンプルにすること」の重要さを学びました。毎朝膨大な「To Do リスト」を作り、それを潰していると仕事をしたつもりになりますが、やることを減らし、一つの大きなゴールに邁進していかなければ、何かを成し遂げることはできないと思います。

サハラマラソン完走が簡単だったと言う真意は、そこにあります。ステージに立つところまで到達できれば、必ず成し遂げられると思います。

僕の場合は、サハラマラソンにおいて(他のイベントもそうですが)順位を狙おうとは全く思っておらず、出場するからには完走するという前提のもとに戦略を練りました。ウルトラマラソンに走るために必要な練習量の目安がいくつかありますが、僕の場合はそういう情報をもとに自分で決めた目標距離を走ることで、達成感から自信を持てるだろうと考えていました。あとは、言葉遊びが好きなので「不惑」を迎えたから惑わないと決め、「心折れない」のは気持ちの持ちようという大阿闍梨の文章を素直に信じて砂漠に向き合いました。

毎日一つのことしかしないというのは、とても気持ちがよく、心に余裕ができます。普段の生活も可能な限り、というか、自分が信じられないぐらいシンプルにすることができれば、大きなことを為せるのではと思っています。

Stage0: サハラマラソン〜モロッコ入り(4月3日〜4日)
Stage1: サハラマラソン ステージ1(4月5日)
Stage2: サハラマラソン ステージ2(4月6日)
Stage3: サハラマラソン ステージ3(4月7日)
Stage4: サハラマラソン オーバナイトステージ(4月8日〜9日)
Stage5: サハラマラソン マラソンステージ(4月10日)
Stage6: サハラマラソン チャリティーステージ(4月11日)

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パクチーに狂う旅人。株式会社「旅と平和」代表取締役、サハラマラソン2015完走、北極マラソン2018アジアチャンピオン。著書に『ぱくぱく!パクチー』『みんなで作るパクチー料理』『「ありえない」をブームにするつながりの仕事術』など。鋸南エアルポルトから房総半島と日本全国を元気にします。