【続・牛を巡る冒険/黒島牛祭り】
第2話)まつり前夜
《沖縄旅行記|八重山|黒島|牛まつり|石垣島》
運よく予定より早い羽田発の那覇便に乗れた。乗継ぎの那覇発石垣便も空席に余裕があり、こちらは難なく早い便に変更できた。
昼過ぎ、首尾よく石垣空港に到着できたものの、天気はあいにく小雨であった。新しくできた直行バスで港に到着すると、離島ターミナルは黒島牛まつりのポスターやのぼりやらで埋め尽くされていた。
牛まつりのチケットは、抽選券と食事券がセットになった往復乗船切符を船会社から購入する。
黒島には、A観光、Yフェリー、Dツアーと三社が定期便を運航している。この内、A観光とYフェリーは共同運行をしており、A観光のチケットでYフェリーの船に乗ることもできるし、その逆も可能だ。利便性を考えれば当然A観光かYフェリーから購入した方が便利なので、A観光でチケットを購入したのだが、これが後に悲劇の元となるとは この時は知るよしもなかった。
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午後遅くに黒島に到着すると、民宿の主人Aちゃんが車で迎えに来てくれていた。
牛まつりは、島民200人が3000人もの来場客を迎える島一番の大イベントだ。「観光業者も畜産業者も、村人全員が準備に大わらわだよ」とAちゃんは楽しげに語る。
宿に着き、軽く島内を自転車で回るとすぐに夕方になってしまった。
「夕食ができましたよ~」
宿に併設の食堂で夕食をいただき、
「じゃ、ご飯が終わったら、みんな、あっちでお酒呑みましょね。」
と、テラスで主人のAちゃんを囲んでの飲み会が始まった。
民宿のテラス席:夜は宿泊客が集まっておしゃべりして過ごす「ゆんたく」の場となる
八重山諸島は有数の観光地であが、そのなかで黒島は存在感の薄い島だ。地元のフリーペーパーも、石垣本島や西表島、竹富島と言ったメジャーな島には何ページも紙面を割いているが、黒島はたったの1ページ。その貴重な1ページに載っているのが、この民宿のご主人Aちゃんへの島民インタビュー記事だ。つまりAちゃんは島を代表する観光資源と言うことか!?
にしても島全体が牧場と言っても過言でないこの島は、ホントに牛だらけだ。八重山諸島の他の島では必ずあるサトウキビ畑も、ここ黒島にはない。徹底した牛の島だ。
そんなマニアックな島に集まる宿泊客も変わり者が多いようだ。海辺で採ってきたアーサー(沖縄の岩場に生える海藻)を、宿の洗濯機の脱水器にかけ干してる客がいた。こんな強者客が生息するのはこの島ぐらいであろう。
見知らぬ宿泊客が集まっておしゃべりして過ごす「ゆんたく」は、沖縄安宿の魅力の一つだ。話題は自然とAちゃんが語る牛まつりのエピソードが中心となる。
「牛まつりの前夜は 見張りがあるから、大変なんだよ」
-いったい何を見張るんですか?
「仕込んだ牛汁さぁ」
-牛汁ですか!!
小さな島で盗みを働いたら誰が犯人かすぐに解ってしまうはずだが、それでもドロボーがいるとは驚きだ。でも黒島には交番がない。お巡りさんがいないから盗人とっては天国。だからついつい盗みに手を染めるのか?
「最近、一等賞の牛の値段が騰がって、このイベント赤字なんですよ。」
とAちゃんがこぼす。今年で25回を迎え、一見大盛況に見える牛まつりだが、運営側のフトコロ事情は厳しいようだ。
「もう牛一頭プレゼントは止めようって話もあるんだよね。」
なっ何!! 夢の牛一頭が無くなるかも知れない!! それなら尚更今年オイラが牛を当てねばならないではないか。
明日の抽選会イベントに向け、ますます闘志が湧いてきた。よし、当ててやるぞ、夢の牛!!
最終更新:2017年03月04日 23:14