BABYMETAL"KARATE"のMVに込められたメッセージとは? | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

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2016年3月18日 Text by たろ a.k.a. TAROO-METAL

昨日,BABYMETAL"KARATE"のフルMVが正式に公開された。2ndアルバム「METAL RESISTANCE」の告知トレーラーでその一部が公開された時から話題騒然だった"KARATE"。BABYMETALらしいカッコよさを前面に押し出したクールな映像には,今までのMVには見られなかった「大物感」が強烈に漂っている。間違いなく世界に衝撃を与えるMVだと思う。

"KARATE"が2ndアルバムから先行配信された際,"KARATE"は「聴く者を心の底から勇気づける鋼鉄讃歌」という趣旨のブログを投稿したが,この認識は甘かった。MVを観て,痛切にそう感じた。"KARATE"を正しく理解するためには,曲を聴くだけでは足りない。MVを観ることが必須だ。

「心折られても 立ち上がってゆこうぜ」
「ひたすら セイヤソイヤ 戦うんだ」
「心をもっと 拳をもっと 全部全部 研ぎ澄まして」

"KARATE"の歌詞は超前向きだ。ネガティブな要素は一切なし。だからこそ「聴く者を心の底から勇気づける」と評したのだが,曲を聴いただけだとイメージできるのはそこまでが限界。今回,MVを観て分かったのは,"KARATE"に込められたメッセージはそれ以上に深く,重たいものである,ということだ。

MVの冒頭で,BABYMETALの3人は,白いローブに身を包み,恐ろしく無骨な鋼鉄の仮面(というかフルフェイスの兜)を被った3人と対峙する。ローブをまとったこの3人がおそらくはBABYMETALの3人の「別の姿」であろうことは容易に想像がつく。そして戦いが始まり,MVの最後で「白いローブの3人」の仮面がそれぞれ砕け散り,素顔が露わになる。SU-METAL,YUIMETAL,MOAMETALの3人は,「もう一人の自分」との戦いに勝利したと読み取れる。

BABYMETALの3人と「白いローブの3人」が直接戦う様子は描かれていないが,MVの流れ(ストーリー)から判断すれば,戦ったことはほぼ間違いないだろう。これはBABYMETALの3人が,「もう一人の自分」と戦い,そして勝利する物語だったのだ。「もう一人の自分」とは,もしかしたら「弱い自分」かもしれないし,あるいは「邪悪な自分」かもしれない。いずれにしても,自分が成長するためには勝利して絶対に乗り越えなければならない最大の壁。それが「もう一人の自分」なのだ。

そう,"KARATE"に込められたメッセージとは,「己に克つ」つまり「克己心」だったのだ。心を折られても立ち上がり,心と拳を研ぎ澄ませ,ひたすら戦う相手とは,他の誰かではなく自分。「最大の敵は自分自身」だったのである。

だから"KARATE"は,他の誰かだけではなく,自分自身をも鼓舞する鋼鉄讃歌だったのだ。

他者との比較じゃない。他人に勝つことが重要なのではない。比較の対象は常に自分自身。自分に勝ってこそ成長できる。オンリーワンの存在を目指すBABYMETALらしいメッセージ性ではないか。

歌詞と映像にはそのように強烈なメッセージ性が秘められていながら,シリアス一辺倒で終わらないのもBABYMETALらしいところ。突きを繰り出せば拳が光り,蹴りをみまえば足先がフラッシュ。瓦を割れば衝撃波が広がって床がめくれ上がる様は,もはやマンガかB級カンフー映画の世界。MOAMETALが飛んでいるハエ(と思しき虫)を瞬時につまむシーンも同様だ。歌詞と映像が放つ強烈に前向きなメッセージ性とあくまでもクールに振る舞う3人の姿,そしてその対極を行くかのような遊び心の絶妙なブレンド。真面目と不真面目が同居して描き出すコントラストは,BABYMETALの特徴だ。

最後にもう一つ。YUIMETALについて触れない訳にはいかない。"KARATE"のMVで惚れ惚れするのは,YUIMETALのカッコよさ。もちろんSU-METALの眼差しは相変わらず強烈だし,MOAMETALだってカッコ可愛い。しかしこのMVでのYUIMETALは絶品だ。"KARATE"の世界を如実に現したシリアスで物憂げな表情に切れ味鋭い動作。普段から体感の強さを感じさせるYUIMETALの身体能力の高さが存分に発揮されているMVだと思う。特にバットを回し蹴りでへし折るシーンが必見。へし折った直後に身体をくるりと回転させる時に身体の軸がまったくぶれていないのだ。思わず,大真面目に空手の型を演じてもらいたいと思ってしまった。

"KARATE"はもっともっと深読みができるに違いない。繰り返し観て,聴いて,そこに込められて意味をとことん考えてみたいと思う。