華凛都物語、ついに完結!
奈良市奈良町、古めかしくも情緒あふれる町並みの中に江戸時代から続く一軒の古い旅館があった。決して派手でもなく大きくはないが、風情に満ちた木造のつくりに端正な庭を携え、訪れる人に安らぎを与えるくつろぎの宿ーーそれが、奈良町の大和まほろば旅館だ。
そしてこの旅館には美人三姉妹がいる。
十代目若女将を務める長女の大和華(やまと はな)、春日大社で巫女として働いている次女の大和凛(やまと りん)、奈良女子大に通う三女の大和都(やまと みやこ)。
華はいつも、手作りのかりんとうをお茶菓子として宿泊客に振舞ったり、妹たちに持たせたりしている。素朴ながらも香ばしく、ほっとするようなその味は、まるで奈良そのもののようだった。
華のもとにキャビンアテンダント時代の同輩から久しぶりに連絡が入り、華と話したいからまほろば旅館に泊まりに来るという。居酒屋でお酒を交わし、久しぶりに話をする二人。だが同輩が帰った後、なぜか華の様子がおかしい。元気がない、と感じた三女の都は「華姉は有給休暇を取ってもらう。若女将の仕事は私がするから!」と宣言するのだが……。