には(読み)ニハ

デジタル大辞泉 「には」の意味・読み・例文・類語

に‐は

[連語]
格助詞「に」+係助詞「は」》
「に」の付いた部分を強める意を表す。「僕にはわかっている」「ここにはない」「わざわざ出向くには当たらない」
「水の底―大綱あるらん」〈平家・九〉
敬意対象を表す。…におかれましては。「皆様にはますます御活躍のことと存じ上げます」
多く「…には…が」の形で、動詞や形容詞を繰り返して)一応その動作状態は認めるが、それに関連して起こる動作や状態については関知したり容認したりしない意を表す。「推薦状は、書くには書くが、あまり期待しないでくれ」「涼しいには涼しいが、ちょっと冷えすぎる」
断定助動詞「なり」の連用形+係助詞「は」》…では。
「誠に、ただ人―あらざりけるとぞ」〈徒然・一八四〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「には」の意味・読み・例文・類語

に‐は

  1. [ 1 ] ( 格助詞「に」に係助詞「は」の付いたもの )
    1. 場所・時・対象・比較の基準など、格助詞「に」の意味を強調または取りたてて示す。
      1. [初出の実例]「日日(かが)(な)べて 夜邇波(ニハ)九夜(ここのよ) 日邇波(ニハ)十日を」(出典古事記(712)中・歌謡)
      2. 「只、糸竹花月を友とせんにはしかじ」(出典:方丈記(1212))
    2. 尊敬の対象となる人物を主語として表わすことを避け、間接的に尊敬の意を表わす。もとはその住む所などを示す語をうけたが、後には人物を示す語を直ちに受けるようにもなった。…におかせられては。
      1. [初出の実例]「大将殿には平らかにおはしましき」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
    3. ( 推量の助動詞「む(ん)」「う」を受けて ) 「…する時には」「…したら」の意の、軽い仮定条件を表わす。
      1. [初出の実例]「かの御息所はいといとほしけれど、まことのよるべとたのみ聞えむには、かならず心置かれぬべし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
    4. ( 「…には…が」などの形で用言を重ねて ) 「…ことは」「…という点は」の意を表わす。
      1. [初出の実例]「小遣銭も欲しいには欲しいが」(出典:都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉)
  2. [ 2 ] ( 断定の助動詞「なり」の連用形に係助詞「は」の付いたもの ) …では。「あらず」「あれど」など、多く否定または逆接の表現と呼応する。
    1. [初出の実例]「大君の命恐(かしこ)み大殯(おほあらき)の時爾波(ニハ)あらねど雲がくります」(出典:万葉集(8C後)三・四四一)

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