現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

津村記久子「アイトール・ベラスコの新しい妻」浮遊霊ブラジル所収

2017-01-26 17:31:34 | 参考文献
 小学校の女子のクラスにおけるカースト制度で、最上位の女の子と最下層の女の子が、二十年以上後に立場が逆転する話です。
 こうしたクラスにおけるカースト制度を書いた作品としては、朝井リョウの「桐島、部活やめるってよ」(その記事を参照してください)が有名ですが、児童文学でもそれを題材にした作品はたくさんあります。
 この作品では、最下層だった女の子が、「外国に行ってお金持ちと結婚してお姫様みたいな生活をしたい」という夢を実現する方は、作者らしいエキセントリックな話でした。
 ウルグアイ人のサッカー選手(アイトール・ベラスコという架空の選手で、移籍市場で三番目の高額でりーガ・エスパニョーラの有力クラブ(バルセロナか?レアル・マドリードか?)へ移籍する設定です。このあたりをそれらしく見せるのは作者の得意分野です)の再婚相手になるのですが、女の子が彼と知り合ったいきさつや 彼の離婚理由(妻のネグレクト)などが、かつての彼女の立場とうまくリンクしています。
 しかし、一方の最上位の女の子が転落していく様子(子どもへのネグレクトがエリート・サラリーマンの夫にばれて、離婚を要求されている)は型通りで平凡でした。
 また、物語の最後に、かつて最下層の女の子が最上位の女の子を見返してやりたいと言っていたと書いたのでは、あまりに因果応報的でひねりがなさすぎます。

浮遊霊ブラジル
クリエーター情報なし
文藝春秋

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