クマムシ研究会
第1回クマムシ研究会
2006年12月2日 (土) に、一般向けの『クマムシ研究会』を東京大学(地図:本郷キャンパス・理学部2号館)にて開催する予定です。クマムシ専門家によるクマムシ観察の基礎から最先端のクマムシ学まで幅広い講演を聞くことができるほか、クマムシの標本や書籍など様々なクマムシ関連アイテムを一度に見られる絶好の機会です。「クマムシってなに?」という一般の方から研究者の方まで、多数の皆様のご参加をお待ちしております。
日時:2006/12/2 (土) 13:00-18:00 場所:東京大学(本郷キャンパス・理学部2号館・4階大講堂) 会費:無料(懇親会への参加は要事前登録・有料)
会場が2階201号室から定員に大幅に余裕のある4階大講堂へ変更になりました。(2006/11/28)
コケ募集
なお、研究会の合間にクマムシの観察などを行う予定ですが、ご自身で採取された苔などをお持ち頂ければ、中に住んでいるクマムシを探すことができるかもしれません。めずらしいクマムシがいる可能性もありますので、採取場所と日時が分かるようにお願い致します。(※万が一、試料が集まりすぎた場合は対応しきれない可能性がありますので、その点はあらかじめご了承ください。)
パンフレット
- 第1回クマムシ研究会パンフレット (PDF 7MB)
ご案内
マイナーな生物の中では比較的メジャーといわれるクマムシですが、これまでクマムシだけの研究会はあまり開催されていないようです。同じ地味メジャーな生物でも「ミドリムシ研究会」のように活発な研究会もあります。我らがクマムシも、ぜひファン層とともに研究者層を増やし、クマムシゲノムプロジェクトに向けて認知度を高めていきたいと考え、第1回クマムシ研究会を開催することに致しました。
今回の研究会では、クマムシの専門家による研究発表だけでなく、さまざまなクマムシ関連アイテムの展示や、顕微鏡による観察、「クマムシ?!」本の制作秘話など一般の方々にも楽しんで頂けるようなコーナーを設けています。会場は赤門から入ってすぐ、東大の伝統が感じられるちょっと古めかしい建物です。アカデミックな雰囲気を感じ、マニアックなクマムシの話を聞いて、おみやげにアンテナショップで東大焼酎(御酒:うさき)でも買って帰る、そんな土曜日の午後はいかがでしょうか?
クマムシ初心者からコアなファンまで、お子様からお年寄りまで、この機会にぜひ幅広い方々にクマムシの魅力に触れて頂きたいと思います。それでは、皆様のお越しを会場でお待ちしています。
プログラム
13:00 イントロダクション 13:00-14:00 鈴木 忠「クマムシ培養の歴史」 14:00-14:40 阿部 渉「クマムシの種を見分ける」 14:40-15:00 塩田春香「クマムシ?!本の秘密」 15:00-15:20 会津智幸「クマグルミの秘密」 15:20-15:50 休憩・展示・観察 15:50-16:30 堀川大樹「クマムシはどこまで耐えられるか」 16:30-17:10 三枝誠行「オニクマムシの超高圧への耐性実験」 17:10-17:50 國枝武和「クマムシの乾燥耐性の分子機構を探る」 17:50- 総合討論・懇親会
講演
- クマムシ培養の歴史
鈴木 忠(慶應大学医学部・生物学教室)
生物学の研究において、対象となる生物が「実験室で維持しやすい」という性質は非常に大きな意味を持っていて、モデル生物としてもてはやされるものは、すべてこの条件を満たすものである。クマムシの仲間はそうではない。しかし緩歩動物の生物学をめざすためには、この仲間を飼って育てることも必要となる。クマムシ培養の必要性は、1926年に出版された"Handbuch der Zoologie"の中ですでに指摘されている。その時から今日までにどのような努力がされて来たのか、その歴史と現状について概観する。
- クマムシの種を見分ける
阿部 渉
クマムシは世界から約1,000種が知られ、新種も発見され続けている。また、最近になり、ナガチョウメイムシやオニクマムシなど世界の広くから記録されてきた普通種が形態の酷似した複数の種に細分化されるなどで、身近な場所に住むクマムシですら同定が困難なことが多くなってきた。このように、現在のクマムシの種分類は流動的で、不安定である。いっぽう、クマムシを材料とした生理学、生態学、分子生物学などの研究が活発となりつつあり、クマムシの種を正しく同定することがいっそう大事になってきた。クマムシはとても小さく、体は柔らかい。そのため、細かな形態を正確に観察するのは難しく、したがって形態に基づいて種を分けるにも限界がある。今回は、クマムシの種分類学の現状を概説するほか、DNA barcodingなど種分類学に関わる最近のトピックを紹介し、今後のクマムシの種分類学のありかたを議論するための一助としたい。
- クマムシはどこまで耐えられるか?
堀川 大樹(北海道大学大学院・地球環境科学研究科)
陸地に生息するクマムシは、ひとたび乾燥して無代謝状態(アンハイドロバイオシス)に移行すると、驚異的な環境耐性を獲得することが知られている。この状態のクマムシは、例えば、−273℃の低温から+151℃の高温、真空、6000気圧、アルコールや殺虫ガス、人の致死線量のおよそ1000倍の放射線など、さまざまなストレスを受けても生存できる。このような現象ゆえに、クマムシは、宇宙空間ですら生存可能なのではないか、と指摘する声すらある。果たして、クマムシは、一体どこまで過酷な環境に耐えうるのであろうか。このような観点から、本講演では、演者らによる最近の研究成果も含め、クマムシの強さにまつわるこれまでの知見を紹介し、クマムシの許容限界能力を考察したい。
- オニクマムシ(Milnesium tardigradum)の極限環境耐性:超高圧への耐性実験
三枝 誠行(岡山大学大学院・自然科学研究科)
オニクマムシは道路端に生えるコケの中に多く生息する。普通に見られるのはすべてメスで、単為生殖により子孫を増やす。メスの体内で卵(3‐11個)が成熟すると、メスは脱皮する。脱皮殻に残された胚は5‐6日ほどで孵化し、2週間(4令から5令)になると成熟する。オニクマムシは、生息環境が乾燥すると体内から水分が失われ、「樽(tun)」に変化する。樽になると極限的な環境条件に耐性を持つことはよく知られているが、高圧に関しては600MPaまでであった。私たちはこの値の10倍以上の高圧(7.5GPa)に樽を置き、水に戻して生存しているかどうか、さらに生存している場合には、超高圧にさらさなかったグループとその後の生存率を比較した。産卵してから1日以内のオニクマムシを、20匹ずつのグループに分け、デシケーターにいれて樽を誘発し、それぞれ20分、3時間、6時間、24時間の間7.5GPaにおいた。3時間置いたグループは、全部生存が確認された。一方、24時間置いたグループは、生存した個体はなかった。6時間の実験は失敗したが、少なくとも4‐5時間は耐えられると予想された。
- クマムシの乾燥耐性の分子機構を探る 〜他の乾燥耐性動物との比較〜
國枝 武和(東京大学大学院・理学研究科・生物科学)
水はほぼ全ての生物にとって生存に必須の物質であるが、いくつかの動物種は水の欠乏への対抗手段を持つ。陸生クマムシの多くは乾燥耐性を持ち、乾燥に長期間曝されると体内の大部分の水分を失って代謝の停止した乾眠状態に移行する。こうした乾眠能力はクマムシだけでなく他の動物種でも観察されるが、それらの種は分類学上必ずしも近縁なわけではないことから乾燥耐性は各々の種で独立に獲得された可能性が指摘されている。乾燥耐性に関与する因子としてこれまでにトレハロースや熱ショックタンパク質、LEAタンパク質が提唱されているが、乾眠状態への移行と復帰の分子メカニズムには不明な点が多く残されている。乾眠能力は興味深い現象だというばかりでなく、その機構の解明は医療・産業への応用という観点からも注目に値する。本講演では乾眠の分子機構についてクマムシのこれまでの知見を他の乾燥耐性動物のものと比較しながらその共通点・相違点について議論したい。
展示
- クマムシの顕微鏡観察
- 海産と陸産のクマムシ標本
- 「クマムシ?!」本
- くまぐるみ
- クマムシ飴
パネルディスカッション
- クマムシゲノムプロジェクトの実現にむけて?
懇親会
研究会後に懇親会を予定しています。現在のところ講演の先生方はほとんど参加して頂けるとのことですので、この機会にできるだけ多くのクマムシ好き・話し好きな方々に参加頂ければと思っています。ただ、お店の都合で人数の変更が難しいということですので、メールで参加申し込みをお願いします。事前登録なしの参加やドタキャンは無理ですのでご協力よろしくお願い致します。(事前登録を締め切りました 2006/11/30)
- 会場: 田奈部(蕎麦)@本郷三丁目
予算は 4000円 + 飲み物代 になります(下見でランチに行きましたが、自家製粉手打ちの新蕎麦はなかなか美味でしたよ)。なお、蕎麦アレルギーの方には大変申し訳ない店選びをしてしまいました。どうもすみません。
アクセスマップ
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