「地元の自治体や住民が鉄道会社にお願いして開設された駅を『請願駅』といいます。西豊田駅もその一例ですね。首都圏で最近実現した例としては、武蔵野線の越谷レイクタウン駅、横須賀線の武蔵小杉駅などがあります」(梅原さん、以下同)
なるほど。では、実現の条件とは?
「開設予算は自治体がほとんど負担するので、まずその予算が組めるかということ。さらに、駅間距離の長さ、利用者数の見込み、駅に適した地形かどうか、などを鉄道会社が総合的に判断するんです」
例えば、1980年にできた東海道本線の東戸塚駅も請願駅で、もともと住宅地だった一帯が駅開設後に商業施設なども増え、街全体が大きく発展したという。現在、1日の平均利用客数は6万人近くにのぼる。
また、1981年には付近に新興住宅が増えたという理由から、総武本線の幕張本郷駅と総武線の東船橋駅が同時に開業している。
直近では今年3月、南武支線の川崎新町駅と浜川崎駅の間に「小田栄駅」が誕生予定だが、こちらは地元の請願というよりはJRが日本で初めて自ら主導する「戦略的新駅」だという。
さて、西豊田駅は実現するのか。日野市役所に電話して「ぶっちゃけ、どうなんでしょう?」と質問を投げてみた。
「日野市長を中心に、西豊田駅誘致に向けた活動が始まったのは平成9年。用地は区画整理事業等によって確保していく予定ですが、開設費用は10年前の試算で約32億円。実際はもっとかかるでしょうから、これを市が負担できるかどうか……。さらに、JR東日本が提示する条件を解決し、新駅を実現するためには課題や問題が山積みとなっています」(都市計画課担当者)
予算以外にも、一定数以上の利用客が見込めないなど、数々の障壁が立ちはだかっているようだ。
新駅の開設は予想以上に大変だということが分かった。ちなみに、梅原さんに「個人的に請願したい駅はありますか?」と聞くと……。
「うーん、東海道本線の戸塚駅と大船駅の間ですかね。5km以上離れているうえに、間には企業の工場や学校もたくさんある。ただ、ひとつつくるとほかからもいろいろ言われるので、鉄道会社は請願駅をあまりつくりたがらないというのが現状ではないでしょうか」(梅原さん)
とはいえ、地元の自治体や住民が請願したことによって実現した駅があるのも事実。さまざまな条件を満たし、絶妙なバランスのうえに成り立つのが請願駅ということのようだ。