ウーバーCEOが辞任 不祥事で投資家が圧力
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズのトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO、40)が20日、辞任した。米ニューヨーク・タイムズが報じた。セクハラや差別の放置など不祥事が続いたことを受け、投資家からの圧力で退任を強いられた。同社が開拓者として普及に貢献したライドシェアビジネスへの影響はなさそうだ。
1976年にカリフォルニア州に生まれたカラニック氏は98年にメディア検索・ファイル共有サービスのスコアに参画した。スコアの経営破綻後、2009年にウーバーを立ち上げた。
ウーバーの16年の売上高は65億ドル(約7215億円)、純損失は28億ドル。80以上の国・地域で配車ビジネスを展開している。カラニック氏はウーバーを非上場ながら企業価値が1000億円を超える「ユニコーン」と呼ばれるベンチャー企業の代表格に育てた。
カラニック氏は家族の不幸もあり、13日に休職したばかりだった。社員向けには「ふさわしい指導者になって戻ってくる」とのメールを送っていた。だがその後、それでは不十分と考えた主要株主の投資ファンドがまとまって同氏に退任を迫ったという。
同氏は創業者で多くの議決権を持っていることもあり、当面は取締役にとどまるもよう。
ウーバーは自主退職や解雇、勧告を受けた辞任などにより、CEO、最高執行責任者(COO)、最高財務責任者(CFO)など多くの要職が空席という異常事態が続いている。組織改革のため、女性幹部を次々にスカウトしており、巨大ベンチャーで組織文化を入れ替える異例の試みが進んでいる。
ウーバーは法令順守を軽視する攻撃的な組織文化で知られ、カラニック氏はその元凶とみられていた。ただ、一連の騒動はウーバー自体の経営問題。同社が開拓者として貢献したライドシェアビジネスそのものへ批判が及ぶ可能性は低そうだ。