八丁味噌と家康の街「岡崎」
なごやめしに欠かせない八丁味噌。しかし、八丁味噌と名乗ることができるのは愛知県岡崎市にあるカクキュー八丁味噌とまるや八丁味噌の2社のみ。それ以外の地域で作られているのは豆味噌や赤味噌と呼ぶのが正しい。
▲味噌蔵が建ち並ぶ岡崎・八丁蔵通り
それこそ、何も知らない名古屋人が岡崎で「名古屋名物の八丁味噌……」と口を滑らせると、タイヘンなことになる。
それだけ岡崎市民の“八丁味噌愛”はハンパないのだ。また、岡崎市は徳川家康の生誕地であり、市民の“家康愛”も海よりも深い。
▲徳川家康の生誕地、岡崎城
ところが、意外なことに岡崎にはこれといった名物料理がないのである。八丁味噌を使った味噌かつや味噌煮込みうどんなどの味噌料理は名古屋に取られてしまっているし。
そんな状況を打ち破ろうと立ち上がったのが「つけめん舎 一輝」の店主、杉浦正崇さんだ。
八丁味噌や徳川家康のように「岡崎といえばコレ!」と即答できるご当地グルメを作ろうと思って'09年頃に市内の同業者に声をかけ、それぞれオリジナルメニューを作っていました。しかし、ラーメン店だけではメニューが偏ってしまい、広がっていかないと思い、和食店や洋食店などにも呼びかけて、ジャンルを超えて取り組むことにしたんです。メニューは、岡崎の伝統的特産品である「八丁味噌」を使い、さまざまなジャンルや人が“まざりあい”、長くつながっていきたいという願いから、麺を使った料理としました。(杉浦さん)
それら麺料理を「岡崎まぜめん」と命名し、その定義を以下の八ヶ条にまとめた。
- 一、八丁味噌を使用!!
- 二、なたね油赤水を使用!!
- 三、汁なしである!!
- 四、麺料理である!!
- 五、ちゃんとまぜる!!
- 六、自分オリジナルの食べ方を見つける!!
- 七、まぜめんを食べ歩こう!!
- 八、まぜ友を増やそう!!
五以下は別にどうでもイイことです(笑)。でも、このユルさがジャンルを超えたメニュー作りには重要なんですよ。こうして'12年8月にうどんやパスタ、中華麺など和洋中の垣根を越えた「岡崎まぜめん会」が発足し、11月11日の「麺の日」に販売を開始しました。(杉浦さん)
深いコクと濃厚なうま味がたまらん
ところで、杉浦さんが営む「つけめん舎 一輝」は、岡崎市内はもちろん、県内全域にまでその名がとどろくほどの有名店。
▲ 看板メニューの「つけめん元味 一輝盛り」(1,130円)
これを目当てに舌の肥えた市内外のラーメンマニアが訪れるという逸品中の逸品。
豚骨や魚介のうま味を凝縮させた濃厚なつゆと、小麦の香りが強い平打ち麺は相性抜群。一度食べたらクセになる味だ。チャーシューや煮卵、メンマなど具材も美味しく、丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。
そんな「つけめん舎 一輝」が満を持して作り上げた「岡崎まぜめん」(850円)がこれ。
中央の半熟卵を潰して、しっかりとかきまぜて……。
完成! いざ、実食!
おおっ、巷のまぜそばとは完全に一線を画している!
深いコクと濃厚なうま味が複雑に絡み合い、なたね油とごま油の香りが鼻から抜ける。ほぼ同時に八丁味噌のコクと香りがフワッと広がる。麺もラーメンというよりは焼きそばに近い食感。具材やタレが絡みまくりだ。
こっ、こりゃ、たまらん!
お店情報
つけめん舎 一輝
住所:愛知県岡崎市法性寺町荒子54-2
電話番号:0564- 55-0112
営業時間:11:30~14:00(土曜日・日曜日・祝日は~15:00)、18:00~22:00
定休日:月曜日
ウェブサイト:https://tukemenshaikki.com/shop/okazaki/
キーマカレー×まぜ麵が絶妙
次に向かったのは「とろ~り卵のオムライス さん太」。
▲店名の通り、ココの名物は「とろ~り卵のオムライス」(810円)
自家製ケチャップとともにパラパラに炒めたご飯の上にトロトロの半熟卵をのせて、さらにソースがたっぷりかかっている。
さらっとした口当たりのソースにご飯を浸し、卵とともに食す。ソースに溶け込んだ肉のうま味とトマトの酸味のバランスが秀逸だ。かたい卵でご飯を包んだ昔ながらのオムライスとは対極の位置にあるオムライスだ。
店主の神谷知秀さんいわく「カレーのように“飲める”オムライスをめざしています。オリジナルデミトマトソース(写真)のほか、和風あんかけソースやきのこクリームソースも用意しています」とか。
さて、ココの岡崎まぜめんはコチラ。
▲キーマカレー風まぜめん(810円)
ウチは洋食店なのでパスタを使っています。八丁味噌で作った肉味噌とレタスやトマト、ニンジンなどの野菜をしっかりとまぜて、麺に絡めてお召し上がりください。(神谷さん)
では遠慮なく……
混ぜてみた!
おおっ、肉味噌がうまい。八丁味噌で作るとコクが増して、肉のうまみを引き立てるんだよなぁ。モチモチとした食感のパスタにもよく合う。
後にカレーの味と香りがほのかに伝わってくる。味噌味を前面に出しつつも、カレーで締めくくる妙技は、岡崎とインドの融合と言わずして何というのか。
トロトロの卵に包み、その上にステーキをのせて味噌ソースをかけた「オムライス屋のまぜめん」を皮切りに、味噌とクリームを合わせた「明太子クリームまぜめん」など、さまざまな岡崎まぜめんを作ってきました。「キーマカレー風まぜめん」は4代目になります。これからもオリジナリティあふれるまぜめんを作っていきます。(神谷さん)
お店情報
とろ~り卵のオムライス さん太
住所:愛知県岡崎市羽根町鰻池112-3
電話番号:0564-57-9966
営業時間:11:30~14:30、17:30~22:00
定休日:月曜日(祝日の場合営業、翌日休)
Facebook:https://www.facebook.com/torooriomusanta/
和風&ベトナムフォー風も!
続いて、こちらは「味波 岩津店」の岡崎まぜめん。
和食店らしく舟盛りにしてあるのが特徴で、その名も「まぜめん丸」(810円)。
お店情報
味波 岩津店
住所:愛知県岡崎市東蔵前1-6-2
電話番号:0564-45-5611
営業時間:11:30~14:30、17:00~21:30
定休日:月曜日
さらに、こちらは「アジア食堂 亜cha:la」の岡崎まぜめん「八丁味噌カレーのフォー」(810円)。
タイカレーの辛さとココナッツミルクの甘さ、八丁味噌のコク、ベトナム麺が見事に調和しているひと品だ。
お店情報
アジア食堂 亜cha:la
住所:愛知県岡崎市材木町2-66
電話番号:0564-24-5606
営業時間:18:00~翌2:00(日曜日は~24:00)
定休日:月曜日
このように、岡崎まぜめんは中華や洋食だけではなく、和食やアジアンなど多種多様。すべてのジャンルに門戸を開いているところに岡崎の本気度がうかがえる。
食欲の秋、歴史散策を楽しみながら、岡崎まぜめんを食べ歩いてみてはいかがだろう?
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。