カーミージー保全へ条例案 浦添市、県内初の里浜保全条例


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 久緒
港川自治会によるカヌー体験が実施されたカーミージー=2016年3月、浦添市(小型無線ヘリで撮影)

 【浦添】浦添市は米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)北側の礁池(イノー)、通称「カーミージー(亀瀬)」を保全し、観光振興や環境学習に活用しようと、「浦添市里浜の保全及び活用の促進に関する条例」の素案を策定し、14日から市ホームページでパブリックコメントを募集している。

 2018年4月の施行に向け、12月市議会定例会に条例案を提出する方針。市によると、地域住民が利用する多様で豊かな海辺「里浜」の保全活用に関する条例は全国でも珍しく、県内では初めて。

 保全の対象となるのはは、本島中南部の西海岸で最大規模の自然海浜が残るとされる牧港補給地区の北側のイノーとその周辺。

 市民と海辺との関わり方を考え、実践する「里浜づくり」の理念や行政・市民などの役割を定める。素案では(1)生物多様性や自然の循環に着目し、里浜の貴重な自然環境の保全と回復を図る(2)市民参加を主体とした里浜の歴史・文化の学習・伝承の場として活用(3)里浜を海岸の防災機能として確保し、都市の生活環境の保全と回復を図る―など6項目を掲げ、環境教育を通した人材育成を図ることも強調している。

 カーミージー周辺では本年度中に市西洲からの臨港道路浦添線が開通する予定。地元の港川自治会は道路の開通に伴って訪れる人が増え、イノーが荒らされることを懸念し、15年に浦添市に対し条例制定を要請した。

 これまでイノーで港川小児童の海の観察会、カヌー体験の課外授業、「里浜まつり」や「里浜フォーラム」などを開催してきた港川自治会の銘苅全郎会長は「これまで取り組んできたことが反映された。保全と活用は両輪で、今後は港川地域だけではなく、貴重な西海岸の自然を生かした浦添のまちづくりを市民と行政が一緒になって取り組む必要がある」と話した。

 港川自治会と協力して生きもの観察会などを開催してきた「しかたに自然案内」の鹿谷法一さん(54)は「トップダウンではなく、地域の声で行政が動いたことは画期的だ」と評価。「貴重な自然を守り、カヌーなどを通して楽しみながら学ぶ環境をつくっていきたい」と述べた。【琉球新報電子版】