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不揮発性メモリ用ビスマス層状強誘電体薄膜の開発(1998)

2015年10月29日 | aichi-happy

不揮発性メモリ用ビスマス層状強誘電体薄膜の開発

Development of Bismuth Layer Perovskite Ferroelectric Thin Films for Non-Volatile Memory


Ferroelectric thin-film capacitors have been extensively investigated with high expectations for nonvolatile memory application. The memory is substituted SiO2 in DRAM to Ferroelectric material as shown in Fig.1. Fig.2 shows the material have shows polarization hysterisis, which character used in memory judgement 1 / 0. Pb(Zr,Ti)O3 is one of the most Popular materials. However, Pb(Zr,Ti)O3 thin films tend to degrade most of the initial amount of switching charge after 10^8 cycles of full polarization switching(so-called fatigue).

 

 

 


Recenty, it has been found that ferroelectric Bi layered structure oxides such as Sr Bi2 Ta2 O9 has excellent high fatigue resistance. Their crystal lattices are orthorhombic and consist of two connected layers of TaO6 octahedra, which are perovskite layers,separated by Bi2O2 layers as shown in Fig.3. Fig. 4 shows material shows fatigue character of Sr Bi2 Ta2 O9 thin film which keep remanent polarization (Pr) after 10^12 cycles. We are studying various Bi layer structured compounds using an improved sol-gel method.

 

1.はじめに

近年,強誘電体不揮発性メモリへの目的とした材料開発は各研究機関で盛んであり,なかでもSrBi2Ta2O9(SBT)酸化物強誘電体薄膜は分極反転に対する疲労現象が起こりにくいため大変注目を集めている。このSBT薄膜は従来カルボン酸塩を用いた塗布熱分解法で作製される例が多い.この熱処理には800℃というシリコンプロセスにおいて比較的高温の熱処理を必要されてきた.そこで我々は全アルコキシド型溶液を開発してSBT薄膜の低温形成の検討を行ってきた。
さらに電気特性と焼成温度の関係について検討を加えた. 700℃,750℃成温度の上昇に伴いビスマス層状強誘電性結晶(BLSF)粒子が形成され,分極量は増加した.800度で焼成した薄膜は全面を強誘電性BLSF粒子が形成され,十分な分極を示すことをすでに報告している。従って強誘電性薄膜を作製するにはフルオライト構造から層状構造へ変化する結晶化プロセスが重要である. そのなかで特にBLSFに変化していない微結晶領域の焼成温度の変化に着目し,700℃でBLSFの形成が始まるにもかかわらず,BLSF単相膜を得るにはさらに100℃も高い800℃焼成が必要な理由を明らかにすることを目的とした.

2.実験方法

全アルコキシド型溶液を塗布したのち、仮焼成を行い、650、700,750度で本焼成した薄膜について検討を行った。アルコキシドには炭素数4以下のものを用いた. Sr(OC2H4OC2H5)2をSr源として用いた.Bi源,Ta源は各液共通でBi(O-nC4H9)3およびTa(OC2H5)5を用いた.仕込み比率はSr0.7Bi2.3Ta2O9とした. 基板にはスパッタ法で形成したPt(60nm) / SiO2(100nm) / Si(6-inch ウェファー)を用いた.塗布はスピンコーターで行った.塗布した膜は150℃で30分乾燥させた後,450℃で仮焼成を行った.以上の工程を8回繰り返し,0.2μm厚の薄膜を得た. 以上の工程を繰り返した後,本焼成を酸素雰囲気中で1時間行った.焼成温度は800,750,700,650℃で行った. 電気特性は上部Pt電極をスパッタにより形成した後,Radiant 社のRT66Aを用いて評価した.結晶構造解析には透過電子顕微鏡(TEM;H-8100,Hitachi,200kV)を用いた.組成分析にはTEMに付属したエネルギー分散型X線マイクロ分析装置(EDX)を用いた.


3.結果および考察

まず焼成温度の上昇によって650℃から750℃で焼成した薄膜に存在する微結晶部の組成変化について検討した.組成分析から700,750℃では層状構造結晶にくらべ微結晶領域のビスマス濃度が低下し,焼成温度の上昇により微結晶領域のビスマス量の低下は顕著になることを明らかとした.
こうした微結晶部の変化について,つぎに結晶領域の電子線回折により結晶構造解析を行った.図には650、700、750℃で焼成した薄膜の微結晶領域からの制限視野回折パターンを示した.650℃でのリングはフルオライト構造の111、200、220、311面をしめすことが確認できる.つぎに700℃では回析パターンでも同様にフルオライト構造を示しており,結晶構造に顕著な変化は認められない.ここで750度で焼成した薄膜ではフルオライト構造回折リングの内側に新たに6.2A程度の面からの回折パターン出現している.そこで750℃で形成された新しい相はパイロクロア相として同定できた. つまり微結晶領域でのビスマス組成の低下および結晶構造はフルオライトからパイロクロア構造への変化が起きていることが確認された.


4.まとめ

SBTの結晶化において750度焼成膜で微結晶部はフルオライト構造から一部はBLSF結晶へ変化し,残りはパイロクロア構造に変化する.このパイロクロアがBLSFに変化しにくいため750℃焼成ではBLSF単相膜になり得なかったと考えられる.この構造変化はビスマスの拡散によって低ビスマス領域が形成され構造が変化したと考えられる.したがってフルオライト構造からパイロクロア構造に変化する相転移を抑制するため,ビスマスの拡散を抑制する必要がある.

 

 

耐還元性を有するSBT薄膜に関する研究

金属ビスマスの挙動

【はじめに】強誘電体メモリを高集積化するためには強誘電体の薄膜のプロセス耐性,特に化学安定性を高める必要がある.なかでもシリコンプロセス中のパッシベーション工程で還元雰囲気の熱処理雰囲気の晒されるため,強誘電体のリークまたは残留分極の低下といった劣化が問題とされていた.これまでPZT薄膜では電極を工夫することで水素耐性を向上させた研究が報告されているが,Pt電極では耐性は低いものとなっている.さらにスイッチング特性が優れるSBTではPZTに比べ水素耐性が低いことが報告されている.これまで我々はSBT薄膜の形成液として独自のゾル・ゲル型アルコキシド溶液を用いることでリーク電流の低減およびRTA適合性を向上できることを報告している.これらのプロセス耐性の向上はSBT結晶の粒界でのBi-rich成分が析出を防止できたためと考えている.今回,溶液の改良により耐還元性を向上できたSBT薄膜について,化学状態分析を行い,とくにビスマスの酸化状態の定量的な解析を行った.

【実験】アルコキシド混合(組成Sr0.7Bi2.3Ta2O9)液およびゾル・ゲル溶液(組成Sr0.9Bi2.1Ta2O9)を用いた.それぞれ,Pt / SiO2 / Si基板上にSBT薄膜を成膜し,800℃でのファーネス処理(FA)ならびに急速加熱(RTA)を行った.表面化学状態はX線光電子分光法(XPS)により定量解析した.

【結果】

今回解析に用いたサンプルは耐還元性試験として水素シンタ(400℃,15分)後に強誘電性の測定できない混合アルコキシドーサンプルと測定できたゾル・ゲルーサンプルの比較を行った.

1,組成比の影響

図は混合アルコキシド系およびゾル・ゲル法SBTのそれぞれのヒステリシスループを示す.ゾル・ゲル膜では仕込みビスマス過剰量を少なくした低ビスマス組成膜であるが,これまでのビスマス過剰添加膜と変わらず,十分なPr値を示す.組成比をSr0.7Bi2.3Ta2O9からSr0.9Bi2.1Ta2O9に変化させたときの膜質を比較する.図は混合アルコキシド系およびゾル・ゲル法SBTのそれぞれの表面SEM像である.混合アルコキシド系では全面に石垣状粒子が形成されBLSF単相膜が形成されているが,粒子は石垣状に形成されている.一方ゾル・ゲル法でもわずかに微粒子部分が残るもののBLSF粒子がほぼ全面に形成され,そのため十分なPr値を示していると考えられる.

SBT結晶の化学量論値はSrBi2Ta2O9であるが,現在他の研究機関ではカルボン酸塩を用いてSr0.7Bi2.3Ta2O9の組成で形成されている場合が多い.このときビスマス過剰分はSrと置換させ残留分極Prを増大させる効果があることが報告されている.あるいは焼失分の補充とされている.しかしながら我々の系では800℃焼成膜においてもビスマス組成の焼失は認められない.さらに

ストロンチウムとの置換によるPrの著しい増大も認められていない.そこで我々は過剰ビスマスの役割としてフルオライト結晶からBLSF結晶への相転移を助ける効果が重要であると考えた.

以前のフルオライトからBLSFへの相転移に関する検討から,いったんパイロクロア相が形成されると熱的に安定であるため,BLSFへの変化が進行が阻害されることを報告している.このパイロクロアビスマス不足組成が局所的に生じた場合に形成されやすいため,仕込み量でビスマス過剰量を減らす事で,パイロクロアが形成されやすくなり,BLSFの単相膜を得るのが困難になる事が予想される.本研究では,低ビスマス組成膜においてもBLSF単相に近い状態まで焼結性を高めることを目的としてゾル・ゲル法を用い,この低ビスマス組成でのBLSF形成を促進することに成功している.

 

2.金属ビスマス

これまで混合アルコキシド膜の化学状態分析から,金属ビスマスのピークが認められる事を報告している.図はさらにアルゴンエッチングにより表面をわずかにドライエッチングした前後のXPSチャートを示した.Arエッチングすることで金属ビスマスが急激に多くなることを見出している.このときビスマスだけが容易に還元される理由として,還元部位が金属ビスマスの外側を酸化ビスマスが覆っているパーティクルが存在する可能性があると考えた.

図は650℃で焼成した混合アルコキシド膜のXPSチャートである.650℃焼成のフルオライト微粒子膜の方が金属ビスマスが存在し,Arエッチングにより容易にビスマスが還元する傾向は著しい.

これまでにこれらの微結晶中またはBLSF内部のボイド中の微粒子など電子線で励起され振動する粒子の存在を指摘している.この容易に振動する粒子はArスパッタによって還元する金属ビスマス粒子であると考えられる.

このビスマス金属は粒界および微結晶領域中に析出したビスマス過剰パーティクルと関係がある挙動をしめす.

 

混合アルコキシド溶液によるSBT薄膜表面のXPS解析を行ったところ,とくにBiの金属状態のピークが認められた.さらに粒界にビスマスリッチの微粒子が析出している事を確認している.すなわち耐還元性の低いサンプルの特徴として,粒界不安定成分の存在と図には2種類の形成液を用いて成膜した薄膜に検出されるBi(metal)の定量分析の結果を示した.アルコキシド混合液ではFA,RTA共に全ビスマス量中の金属ビスマスの割合(Bi-metal / (metal+oxide))が3 % 以上の高い値を示している.一方耐還元性を有するゾル・ゲル液で作製したSBT膜ではFA,RTA処理共に,金属ビスマス量は非常に低く抑えられている.これはEDXにより認められる粒界でのBi粒子の析出量の減少と一致している.以上から,溶液のゾルゲル化によりSBT粒界の安定化がなされていると判断できる.このとき耐還元性の有する膜で金属ビスマスが抑えられており,金属ビスマスの量が耐還元性に大きな影響を与えていると判断できる.

これまでの検討から還元部位は粒界に偏析したビスマスリッチパーティクルが容易に還元される状態または金属状態ビスマスの微粒子が存在しており,リーク電流に対して,ある量以上以上存在すると絶縁耐圧が極端に低下する原因となる臨界量が存在すると考えている.

この金属をビスマスを低減するためにも溶液中から酸素原子と金属原子の原子レベルでも混合が可能なゾル・ゲル法のメリットが活かされている.

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