米紙、トランプ一族の巨額脱税疑惑を報道 税務当局は調査へ

US President Donald Trump pictured giving a speech on 2 October

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画像説明, トランプ米大統領が一族の巨額脱税に関わったとする報道について、トランプ氏の弁護士は「100%虚偽だ」と反論している

ニューヨーク州税務当局は2日、ドナルド・トランプ米大統領が両親の巨額脱税を手伝っていたという米紙ニューヨーク・タイムズの報道について、内容を確認していると明らかにした。

ニューヨーク・タイムズは2日の大特集記事で、トランプ大統領が「1990年代に、あからさまな詐欺を含め、疑わしい課税対策」に関わっていたと書いた。同紙は、トランプ氏はきょうだいとダミー会社を作り、両親(共に故人)が所有する多数の不動産価値を低く見せかけるなどして、脱税に関与したと伝えている。

ニューヨーク州税務・財務局はBBCに対して、「ニューヨーク・タイムズ記事に書かれた告発内容を点検し、あらゆる適切な調査の道筋を積極的に追求している」とコメントした。

ニューヨーク・タイムズは、報道内容はいずれも数十年前で時効が成立しているため、これで大統領が刑事捜査の対象になる可能性は低いものの、税逃れに対する罰金には時効がないと指摘している。

ホワイトハウスのサラ・サンダース大統領報道官は、報道内容を「誤解を呼ぶ攻撃」で、トランプ一族の納税については内国歳入庁(IRS)が「何十年も前」に承認済みだと反論した。

大統領自身は記事について発言していないが、顧問弁護士のチャールズ・ハーダー氏は声明で、「誰も詐欺や租税回避などしていない。タイムズ紙の主張は真実と異なり、その元となっている事実関係は非常に不正確だ」と報道内容を否定した。

大統領について米紙の報道は

トランプ氏は長年にわたり、自分は裕福な不動産業者だった父親からほとんどなんの支援もなく、自力で巨万の富を築いた成功者だと、自分のイメージを広めてきた。

しかし、10万ページ以上に及ぶ大量の書類をもとにした調査報道で、ニューヨーク・タイムズはトランプ氏が実は現在の価値で少なくとも4億1300万ドル(約470億円)を父親から受け取ったと報じた。

「3歳になるまでにトランプ氏は、父親の不動産帝国から現在の価値で年間20万ドルの収入を得ていた」、「8歳になるころにはすでに100万ドルの資産を持つ億万長者だった」と同紙は書いている。

Donald Trump and his father Fred Trump pictured in July 1988 at The Plaza Hotel in New York City

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画像説明, トランプ氏の父フレッド・トランプ氏(右)は、ニューヨーク各地の不動産開発で巨万の富を築いた。写真は1988年7月、ニューヨークで撮影
Presentational white space

同紙はさらに、トランプ氏が大学卒業から間もなく、年間100万ドル相当を毎年、父親から受け取っていたと書いた。トランプ氏が40代~50代になるころには、この額は年間500万ドル以上に増えていたという。

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「トランプ氏にこの資金が支払われたのは主に、両親の租税回避を手伝ったからだった。両親から数百万ドルも譲渡されたことをごまかすため、トランプ氏ときょうだいは、にせの会社を作った」と同紙は書いている。

その上で同紙は、トランプ氏が「わずか100万ドルを父親から借りて」実業家としての第一歩を踏み出した、しかも父親には利子と合わせて返済したという長年の主張は、事実と異なると指摘。父フレッド・トランプ氏が息子に貸したのは現在の価値で1億4000万ドルにあたり、トランプ氏はそのほとんどを返済しなかったという。

同紙はさらに、父親が「数百万ドル分の免税」の恩恵を不当に受けられるようトランプ氏が手伝ったと書いた。両親が所有する不動産の資産価値を何億ドル分も過小評価させる方法で、両親が大幅に納税額を減らせるよう手伝ったという。

記事ではこのほか、トランプ氏の両親が子供たちに譲渡した金額は10億ドル以上に上り、本来の課税額は5億5000万のはずだったが、納税記録によるとトランプ氏ときょうだいたちが納めた税金はその5%程度に過ぎない5220万ドルだったと書いている。

脱税報道を受けて、大統領の顧問弁護士は「トランプ大統領はこうした事柄に、まったくなんの関与もしていない」と反論した。ハーダー弁護士は、トランプ氏の両親の「税務はトランプ家の他の一員が取り扱ったもので、その人たちも税務の専門家ではなかった」ため、税理士など税務の専門家に手続きを頼っていたと説明した。

大統領の弟、ロバート・トランプ氏はこれに対して、一族を代表してコメントし、「あらゆる贈与税や相続税の申告は適切に行われ、必要な税金は納めた」と反論した。

報道の根拠は

ニューヨーク・タイムズは、公表されている財務諸表や、非公開の銀行明細書などをもとにした報道だと説明している。

根拠にした資料の中には、「フレッド・トランプ氏とトランプ氏の複数の企業、トランプ一族の様々な事業体や基金が提出した、納税申告書200点以上」も含まれているという。

トランプ氏が公開しない納税申告書との関連は

米国では、大統領候補が納税申告書を公開するのが慣例となっている。しかし、トランプ氏は2016年大統領選から現在に至るまで、これを公開していない。

動画説明, トランプ氏の納税記録を 公表求め全米でデモ

今回の取材でもニューヨーク・タイムズはトランプ氏の納税申告書を入手していない。今回の記事に使った大量の資料からも、トランプ氏の近年の商取引については様子がうかがえない。

ただし同紙は、一族の基金の納税申告書を含めて入手した資料から、一族の商取引と税務処理によっていかにトランプ氏が長年にわたり富を増やしてきたかがうかがえると説明している。