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凱旋門賞、予想外のマカヒキ惨敗の背景を探ると…

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「41億8599万5100円」と「14着」。2つの数字が、残酷なまでのコントラストを描いた。改正競馬法で海外主要レースの馬券発売が解禁され、日本中央競馬会(JRA)のネット投票による発売第1号として注目を集めた第95回凱旋門賞(仏G1、シャンティイ芝2400メートル)で、日本期待のマカヒキ(牡3、栗東・友道康夫厩舎)は、16頭中14着と思わぬ惨敗を喫した。日本調教馬として18頭(延べ20戦)目の挑戦となった同馬は、5月の日本ダービーを優勝。「史上最強」といわれる国内の現3歳世代代表として、競馬界の悲願達成に挑んだが、あっけなくはね返された。

一方で、馬券の売り上げは関係者の予想をはるかに上回った。現在、JRAの売り上げに占めるネット投票のシェアは約65%だから、1競走の売り上げとしてはG2並みの高水準だった。「20億円に行けば上出来」と踏んでいたJRA関係者の観測の2倍以上である。初回ゆえの「ご祝儀相場」と、国内での凱旋門賞のブランド価値を反映した数字だったが、それだけに残り400メートルで早々と馬群に沈んだマカヒキの失速は、今後の海外レース発売への反動が心配になるレベルだった。マカヒキはなぜ負けたのか。今回の凱旋門賞の「磁場」は過去とどう違ったのか。その辺を振り返ってみよう。

日本馬向きの「高速馬場」のはずが…

例年、凱旋門賞はパリ・ロンシャン競馬場で行われるが、今年と来年の舞台はシャンティイ競馬場。同じパリの競馬場で、仏ダービーなどが施行されるが、ナポレオン3世も建設に深く関わったロンシャンに比べると小ぶりで、スタンドは日本の福島や小倉に比べても小さい。日本馬としては5月にシャンティイのG1、イスパーン賞(芝1800メートル)をエイシンヒカリ(牡5)が圧勝しており、「日本馬向きのコース」と見る向きもあった。しかも、今回は前の週から天候に恵まれ、馬場は乾ききっていた。タイムの速い決着に慣れている日本馬には、おあつらえ向きの舞台が整ったように見えた。

ところが、ここに落とし穴があった。当日のシャンティイは前座のG1から先行馬天国のようなレースが続いた。凱旋門賞当日、地元の主催者は内柵を撤去して、保護されていた幅12メートルの"グリーンベルト"を開放するのがならわしだ。きれいで走りやすい芝を走るのだから、距離ロスの少ない内側を走る先行馬の方が有利に決まっている。こうなると、各馬の騎手は「前へ、内へ」と、先を争って好位置を奪いにいく。勢い、前半のペースは速くなり、持久力を備えた馬が有利になる。

マカヒキの渡仏が決まった当時、ある関係者は「あの馬に2400メートルは長いのでは。来年の今ごろはもっと短い距離を走っているかも」と漏らした。実際、3歳上の全姉ウリウリは、凱旋門賞の7時間25分前に行われた芝1200メートルのG1、スプリンターズステークス(中山)に出走し13着。同じ血統構成のマカヒキがダービーで2400メートルを克服できたのは、3歳馬同士の争いで、しかも前半のペースが緩かったことが大きかった。渡仏初戦のG2、ニエル賞もわずか5頭立てで前半は超スローペース。正味残り600メートルの勝負で、マカヒキの泣きどころは表に出なかった。

「チーム戦」で消耗戦に持ち込む

だが、本番は違った。出走した16頭の陣営のうち、消耗戦に持ち込みたいと考えていた陣営が最低でも2組はあった。今年の英国とアイルランドのダービーを制したハーザンド陣営は、同馬主のヴェデヴァニをペースメーカーに投入。また、今回、3頭を送り出したアイルランドの名伯楽、エイダン・オブライエン調教師(46)は、4000メートルのG1勝ち星があるスタミナ自慢のオーダーオブセントジョージに積極策を指示。ヴェデヴァニに重圧をかけ、緩みのないペースをつくった。

その結果、1400メートルの通過ラップは何と1分22秒57。2400メートル戦というのに、短距離戦のような数字だ。案の定、最後の1000メートルは61秒04、600メートルは36秒63を要するバテ比べとなった。今年の日本ダービーの最後の1000メートルが58秒0、600メートルが34秒2だったのとは対照的だ。マカヒキには14番枠も災いした。この厳しい流れで終始、馬群の外寄りを追走したのだからひとたまりもない。残り400メートルで早々に脱落し、勝ったファウンドとは23馬身4分の3の差がついた。

タイムの2分23秒61はシャンティイのレコードを塗り替えた。レコード決着の凱旋門賞で思い出されるのは2011年。ドイツの3歳牝馬デインドリームが圧勝した年だが、日本から遠征したヒルノダムール、ナカヤマフェスタは、そろって2桁着順だった。高速馬場に強いといわれる日本馬だが、実は凱旋門賞で2着に入った4回はすべて道悪で、2分32秒以上を要していた。この辺に日本の関係者が考えるべき材料がありそうだ。

名伯楽の「3本の矢」 上位独占

今回、上位を占めたのは前記のオブライエン調教師が送った3頭。しかも、3頭とも父はガリレオだった。ガリレオもオブライエン調教師の下で00年から01年にかけて活躍。英、アイルランドのダービーと伝統の英G1「キングジョージ」を勝って種牡馬入りした。ガリレオの父サドラーズウェルズは、長く欧州の競馬界をリードした種牡馬。母のアーバンシーは1993年の凱旋門賞を制覇。ガリレオのほかに09年凱旋門賞優勝のシーザスターズ(父ケープクロス)も産んだ。一見、凱旋門賞と縁の深い血統だが、実はガリレオ産駒は今回が凱旋門賞初制覇。サドラーズウェルズは典型的な持久力型で、この系統は日本で苦戦している。日本向きの軽さ、瞬発力が足りないのだ。昨年まで凱旋門賞でもガリレオの子が苦戦したのは、例年のロンシャンの馬場や展開が、イメージ以上に瞬発力を要求していたからかもしれない。

オブライエン陣営の3頭中、格上は勝ったファウンド(牝4)だが、過去5戦連続2着。通算18戦2着10回と詰めが甘い。また、昨年の凱旋門賞では生涯唯一、3着を逸している(9着)。今回は欧州最高の騎手、ライアン・ムーア(33)に戻して勝負をかけた。追い込み型で、スパートが遅れるか直線で進路が塞がるのが負けパターン。そこで、外寄りの12番枠だったが、前半から積極的に動いて中位の内柵沿いを占めた。これが大きかった。オーダーオブセントジョージ(3着)はペースを上げる役。ハイランドリール(牡4=2着)は1番人気のポストポンド(牡5=5着)をマークし、展開次第で馬体を並べ、外への進路にフタをする意図もあったはずだ。ファウンドはその後も内で少しずつ位置を押し上げ、直線入り口で既に5番手。残り400メートル付近でオーダーオブセントジョージとポストポンドの間の1頭分の隙間を抜け出し勝負を決めた。オーダーオブセントジョージは持ち前の持久力をフルに発揮して粘り、失速したポストポンドをかわしたハイランドリールが2着に浮上。オブライエン陣営が1~3着独占である。

ファウンドは国内発売の単勝が7.8倍で現地の10.6倍より売れていた。単勝に手を出しにくい成績の馬だが、日本のファンは近年、短期免許で来日して大レースを席巻するムーアのすごさを熟知している。冷静で勝負どころを逃さない。ゴール後、3着オーダーオブセントジョージのランフランコ・デットーリ(45)が、馬上からムーアにキスを迫り、ムーアが困惑混じりの笑顔で応じたシーンには笑ってしまった。デットーリも欧州騎手界のレジェンドで昨年の凱旋門賞をゴールデンホーンで優勝。ムーアとは対照的な陽気なイタリアンだ。

2~4人が集団で動く競輪を思わせるようなオブライエン陣営の作戦が、今回は見事にはまった。欧州ではペースメーカーがしばしば出走するが、今回のヴェデヴァニのように力の劣る馬がほとんど。オブライエンはG1勝ち馬3頭のチーム。組織力、層の厚さの勝利だった。ポストポンドはハイペースを好位置で追走して5着だから力は見せた。ただ、オブライエン陣営の3頭に比べると持久力で劣る。欧州の中長距離戦でこんな速い流れは珍しく、展開が向かなかったのが敗因か。同馬の父ドバウィは、00年のドバイ・ワールドカップを圧勝し、翌年急死したドバイミレニアムの忘れ形見。父子ともに1600~2000メートル向きだ。過去10年で7勝の3歳勢はサヴォワヴィーヴル(独、牡3)の8着が最高と不振だった。消耗戦で経験の浅さを露呈した形だ。

日本のファンは意外にリアリスト?

初の海外発売は、予想を上回る大盛況だった。同日のG1、スプリンターズステークスの売り上げが約126億6409万円で、ネット発売分は約76億円だったから、42億円の大きさがわかる。こうも売れると、JRAの開催への影響が気になるが、当日の中山、阪神の合計は約294億円で前年比2.5%増。今年の年間売り上げの伸び率(前年比4%増)を下回ったが、海外分が国内を食わなかった結果に、JRAは胸をなで下ろしているだろう。7賭式別の売り上げシェアを見ると、国内外の差は少なかった。スプリンターズステークスと凱旋門賞のシェアを比較すると、単勝が4%に対して8.6%と差がついたが、残る6種類は2ポイント以内の差で、凱旋門賞の3連複は2割、3連単は4割のシェアだった。つまり、国内ファンも知恵を絞って、外国馬から狙い馬を選んだのである。単勝オッズも最終的にマカヒキが1番人気だったが、一時はポストポンドが逆転した。日本馬に人気が集中するとみて、「逆張り」に出た人が多かった。マカヒキは応援しても、カネが絡むと話は違う。

海外馬券を購入する際、最大のネックは情報不足だ。今回は欧州を代表するレースとあって、各メディアも手を変え品を変えて伝える努力はしていた。一部の競馬専門紙やスポーツ紙は、現地の競馬専門紙の協力を得て、全陣営のコメントを掲載した。ただ、調教の映像や、日本なら簡単に利用できる距離ごとの種牡馬別成績などはない。近年、多くの馬券購入者がビッグデータを活用しており、レース検討の「武器」を封じられた人も多かったはずだ。今回の売り上げは、馬券を売る側にとっては最高の結果だったが、購入した側がレース結果をどう受け止めたかは別問題だ。どこの国であっても競馬は難しいのだが、「やっぱり海外は勝手が違う」と、腰が引く人がこの先どれだけ出るか。マカヒキが予想外の惨敗を喫したことも、ムードを冷やす方向に作用しそうだ。

凱旋門賞 払戻比較表
JRAPMU
単勝(10)7.810.6
複勝(10)2.43.6
(4)8.67.6
(8)8.44.8
馬連(4)(10)138.0109.0
馬単(10)(4)241.7176.8
3連複(4)(8)(10)552.9320.1
3連単(10)(4)(8)3800.61187.0
ワイド(4)(10)25.532.1
(8)(10)21.618.7
(4)(8)90.634.5

逆に、今回の結果を受けて、海外の競馬主催者の日本への関心はさらに高まりそうだ。フランス現地の売り上げの大半を占めるPMU(場外発売公社)の凱旋門賞の売り上げは約18億円で、日本の売り上げは約2.3倍である。フランス側の発売手数料は3%と推定され、約1億2500万円の収入を手にしたことになる。今後、日本での発売を狙った海外主催者の日本馬誘致合戦が熱を帯びる公算は大きい。既に9月、米国のケンタッキーダービーを主催するチャーチルダウンズ競馬場は、日本の2競走を、同レースの出走権確保に必要なポイント対象レースに指定した。日本馬の出走の可能性を一気に広げる措置だ。米国の3歳三冠競走はまだ国内で発売指定されていないが、今春にラニ(牡3、栗東・松永幹夫厩舎)が三冠皆勤を果たしている。ラニに続く馬を登場させて、日本で販路開拓を狙うのが米国側の胸算用だ。

次の発売は11月1日のメルボルンカップ(オーストラリア・フレミントン、G1・芝3200メートル)が有力視される。ただ、ここは日本馬がG1勝ち星のないカレンミロティック(8歳去勢馬、栗東・平田修厩舎)で、主力となるオセアニアの馬は欧州以上に、日本になじみが薄い。施行日時が火曜日午後の早い時間で、売り上げは期待薄だろう。今後の売り上げ動向を見通す上で注目されるのは、12月11日の香港国際競走(シャティン)だ。JRAの開催と近い時間帯で4つのG1が施行され、毎年、日本からも多くの馬が遠征し、昨年は4戦中2戦を制した。ここでファンがどの程度の反応を示すかが、海外発売の全体的な流れを測る指標となる。

(野元賢一)

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