長期金利一時0.8%に上昇、日銀は柔軟なオペ運営で市場安定狙う

長期金利一時0.8%に上昇、日銀は柔軟なオペ運営で市場安定狙う
5月13日、時期尚早の金利上昇は緩和効果を減殺する恐れがあり、日銀では、市場ニーズに応じた柔軟なオペ運営を今後も徹底していくことで、市場安定に努める方針だ。写真は黒田総裁。4日撮影(2013年 ロイター/Adnan Abidi)
[東京 13日 ロイター] 長期金利が一時0.8%に上昇するなど国債市場が再び不安定化している。日銀は13日、総額1兆2000億円の国債買い入れオペを実施したが、金利上昇圧力を吸収するまでには至っていない。
時期尚早の金利上昇は緩和効果を減殺する恐れがあり、日銀では、市場ニーズに応じた柔軟なオペ運営を今後も徹底していくことで、市場安定に努める方針だ。
急速な株高・円安の進行を受け、先週末から国債相場が再び不安定化しており、13日の市場では長期金利が今年2月以来の0.800%に上昇。債券先物相場も一時、前日比1円安まで売り込まれ、10日に続いてサーキットブレーカーが発動される事態となった。日銀は同日午前、総額1兆2000億円の国債買い入れオペを通告。事前の市場の期待に応えたかたちだが、その後も金利は上昇を続けるなど国債市場は再び均衡点を模索する展開となっている。
黒田東彦総裁は10日、7カ国財務相・中央銀行総裁会議出席のため訪れたロンドン郊外のアイルズベリで、国債市場の動向について「国債の金利については、基本的に低い水準で推移している」と指摘。4月4日の大規模な国債買い入れを柱とした「量的・質的金融緩和」導入直後に市場のボラティリティは高まったが、その後は落ち着いてきているとし、4月の金利上昇とは状況が違うとの認識を示した。
日銀では、現在の金利上昇は急速な株高などに伴う成長期待の高まりを反映した自然な動きと判断しているとみられるが、国債買い入れに際しては「公表している範囲内で、市場の状況に応じて柔軟に対応していく」(金融市場局)方針だ。すでに日銀は5月の国債買い入れのゾーン別の額や頻度などについて「当面の長期国債買い入れの運営について」として公表している。13日の同オペでは、残存期間1─5年のうち3─5年を5000億円と前回より1000億円増額、「5年ゾーンの利回りが0.3%台に上昇したことに配慮した」(東短リサーチ・上席研究員の飯田潔氏)とみられている。買い入れのタイミングについても、国債の入札日や金融政策決定会合などの日程以外で柔軟に対応していく考えだ。
もっとも、株式や為替市場が期待先行で大きく反応している一方、アベノミクス効果の実体経済への波及が問われるのはこれから。日銀は「量的・質的金融緩和」の効果について、長めの金利や資産価格のプレミアムに働きかけることによる資金調達コストの低下を経路の1つに掲げている。「時期尚早な金利上昇は貸出金利の上昇などで緩和効果を減殺させる」(国内証券)おそれがあり、市場に配慮した柔軟なオペ運営で市場安定に努め、緩和効果のスムーズな発現を狙う。
(ロイターニュース 伊藤純夫;編集 石田仁志)

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