まず、同居・近居をすることになった理由を知りたいもの。まずは同居の理由をチェック。
同居の理由第1位は、「何かあったときに助けあえるから」38.7%でした。僅差で「親の老後を考えたから」38.0%。そして「長男・長女だから」35.3%と続きます。
具体的なコメントを見てみると……
「震災後、親の身体が心配になり、お互い助け合えるので同居した(51歳・男性)」や、「同居していると何かと便利だし、お互いが助かる。子どものお迎えに行ってもらえるし、お風呂に入れて寝かせてくれる。子どもにとっても、いつもと変わらない生活をできるのがいい(33歳・女性)」など。また、「高齢の義母のひとり暮らしは心配だから(57歳・男性)」「夫の母親が亡くなり、父親しかいなくなった。1人だと家が広すぎるし、老後のことを考えたら同居したほうがいいと思ったから(31歳・女性)」など、片親が亡くなったなどで1人きりになった親を心配して、同居に踏み切る人も多くいるようです。
「長男の義務(50歳・男性)」「長男であれば普通(48歳・男性)」など、長男・長女だからという理由を挙げている人は、50歳前後からの年齢層が多いように感じます。
一方、子育て世代は「会社に復帰するのにあたり、保育園に入れないと大変だし、いずれ一緒に暮らす予定だったから(29歳・女性)」「経済的に余裕がないし、子どものことで親に頼りたいから(32歳・女性)」と、子どもの世話や家事を親に頼りたいという人が同居を選択しているようです。
では、近居の場合はどうでしょうか。
1位は同居と変わらず「何かあったときに助けあえるから」ですが、54.3%と同居よりも高い割合でした。2位は「住もうと決めた場所の近くに親世帯が住んでいた」で29.3%。そして「家事・育児などで協力してもらいたいから」27.3%、「親の老後を考えたから」25.0%と続きます。同居で3位だった「長男・長女だから」は12.3%とこちらでは大きな理由とはなっていません。
近居の場合、「何かあったらすぐに駆けつけられる距離(50歳・男性)」というのがポイント。「何かあったときに頼りやすい(29歳・女性)」「体調が悪くなったときに、遠いと心配なので(42歳・女性)」など、「常に」ではなく、「何かあったときに」助け合いたいようですね。
また、「通勤に便利な地域に、たまたま親宅があった(44歳・女性)」「予算的に自分たちが購入できる場所が、たまたま義理の親の近くだった(45歳・女性)」など、住もうと思った場所がたまたま親の家の近くだったという人も。
同居よりも「程よい距離感で、相互にプライバシーを保ちながらつきあえる(50歳・男性)」というのが近居のいいところ。「いずれは同居する方向で考えている(50歳・男性)」が、今は近居でという人もいました。
最後に「なぜ近居ではなく同居を?」「なぜ同居ではなく近居を?」という質問をしてみました。
同居を選んだ人は、「近くにいたほうが何かと便利だから」「経済的な理由から」が同率(30.0%)で1位。近居の場合には、「距離感を保ちたいから」が45.0%が1位、次いで「生活時間・スタイルが異なるから」が37.7%となりました。
Q.近居ではなく同居を選んだ理由は?(複数回答)
1位:近くに居たほうがなにかと便利だから(30.0%)
1位:経済的な理由から(30.0%)
3位:しかたなく(親や、パートナーの強い希望など)(24.7%)
4位:実家の土地や部屋数が余っていたから(18.3%)
5位:たまたま、なんとなく(16.7%)
Q.同居ではなく近居を選んだ理由は?(複数回答)
1位:距離感を保ちたいから(45.0%)
2位:生活時間・スタイルが異なるから(37.7%)
3位:一緒に住める家がない(土地がない)から(18.0%)
3位:たまたま、なんとなく(18.0%)
5位:家族水入らずで過ごしたいから(14.7%)
同居の経済的な理由については、「お金がなく毎週末になると妻の実家へお邪魔して夕食を頂くなどしていた。嫌じゃなければ一緒に住んだほうがメリットがあるのではないか、と同居を誘われた(45歳・男性)」という子側に理由がある場合もあれば、「親が経済的に自立できる状態ではなく、同居せざるを得なかった(40歳・女性)」という親側に理由がある場合も。
近居の場合は、「自分たちの生活基盤ができているから、程よい距離感で付き合っていきたい(28歳・女性)」というように、親世帯とはある程度距離を置いて付き合いたいという意見が多かったです。また、「生活の時間が合わない。親世代は夜早く、私は遅い。お互い気を使うのは嫌(43歳・女性)」、「親は親で老後の夫婦生活を満喫したいようですし、私たちも家族の時間を大切にしたい(37歳・女性)」など、生活時間・スタイルの違いを気にする意見もありました。
いかがでしたか? 「理想の住まい方」を聞いた内閣府の意識調査(※)では、全体の31.8%が親との近居を、20.6%が親との同居を支持しています。これは、お互い助け合えるので安心というだけでなく、アンケート結果にもあったように、子どもが小さい間は祖父母の協力が欲しい、経済的にも負担を減らしたいという子ども世帯の気持ちを反映した結果でしょう。
いずれも親を意識した住まい方を選択していて、孫にとっても、おじいちゃん、おばあちゃんを身近に感じることができ、敬ったり、サポートしたりが日常的に行える、理想的な住まい方のひとつといえるのではないでしょうか。
これからの住まいを考えるとき、親との同居、近居を視野に入れてみると、住まいの選択肢や生活の幅が大きく広がるかもしれませんね。
※家族と地域における子育てに関する意識調査報告書(平成26年3月実施)