Ripple (支払いシステム)

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リップルRipple)とは、アメリカのリップル社(Ripple Labs Inc.)によって開発が行われている分散型台帳技術を利用した即時グロス決済システム、 外国為替送金ネットワークである。コンセンサス・レジャーとXRPと呼ばれるネイティブトークンを用いるオープンソースインターネット・プロトコルは、リップル・トランザクションプロトコルRTXP)またはリップル・プロトコルと呼ばれる。

2020年12月、米国証券取引委員会リップル社によるXRPの販売が証券法第5条に違反するとして、同社とその幹部2名に対して民事訴訟を起こした。2023年7月、連邦地方裁判所『デジタルトークンとしてのXRP自体は、投資契約のHowey要件を満たす「契約、取引、またはスキーム」ではない』との判決を下した。

2022年に公表された情報によると、リップル社が手がけるクロスボーダー決済ネットワークの年間取引高は100億ドル(約1兆1,506億円)を超え[1]、ネットワークの立ち上げから2022年第4四半期までの取引のうち約60%がXRPを利用して行われている[2]

概要[編集]

リップルRipple)の開発は、2004年にカナダウェブ開発者である Ryan Fugger により開始された。[3] 後にビットコイン技術を応用して Arthur Britto、David Schwartz等によって開発されたコンセンサス・レジャーが統合された。プロジェクトの指揮権は Ryan Fugger からリップル社(旧OpenCoin Inc.)に譲渡され、リップル・トランザクション・プロトコル(RTXP)として開発が継続されている。 リップルはビットコインと同様に分散型台帳技術を利用するが、二重支払いの検知をプルーフ・オブ・ワーク・システムではなく、独自に開発されたコンセンサス・システムによって行う。これによりビットコインの致命的な弱点であるスケーラビリティ消費電力といった問題を克服し、ビットコインでは平均10分程度かかっていた決済をリップルでは数秒で[4]行うことができる。

また、World Wide Web Consortium によって標準化が進められているインターレジャー・プロトコルの開発がリップル社によって行われており、将来的にリップルに統合される予定である。インターレジャー・プロトコルはリップル社から発表され、リファレンス実装が2015年11月に同社から公開された。[5][6]

2020年に米国証券取引委員会(SEC)リップル社を未登録の暗号資産を販売し、約13億米ドルもの資金を得たとして提訴したが、2023年7月に個人向けに販売されるXRPは有価証券に当たらないという判決が下された。[7]

2023年1月11日、リップル社のガーリングハウスCEOはロイター通信に対し、初期投資家や従業員から約2億8500万ドル(日本円にして約415億円)相当の自社株を買い戻すと語った。これによりリップル社の企業価値は113億ドル(日本円にして約1兆円)となった。[8] [9]

評価[編集]

デビュー以来、Rippleプロトコルは金融および大衆向けの報道機関で注目を浴びるようになった。Rippleは、The Nielsen Company、Bank of England Quarterly Bulletin、NACHA、およびKPMGの業界記事で取り上げられ、銀行業界の国際化に対するRippleの影響を調査する多くの記事にも取り上げられた。

セキュリティなどの問題に関しては、2015年4月にAmerican Bankerが「銀行の観点からすれば、Rippleシステムのような分散型台帳には、ビットコインのような暗号通貨に比べて多くの利点がある」と主張した。[10] また、ボストン連邦準備銀行は「Rippleなどの分散ネットワークの採用により、銀行業界がより高速な処理を実現し、グローバルな支払いとコルレス銀行のサービスの効率を向上させることができる」と主張した。

2013年には決済ネットワークとしてのRippleについて、ケン・カーソン氏がEsquire誌で「大手金融サービスブランドは、レコード会社がかつてNapsterを扱ったように、Rippleを扱うべきだ」と述べた。

2015年8月、Rippleは世界経済フォーラムからテクノロジーパイオニア賞(Technology Pioneer)を受賞した。[11] New York Times所属のウェブサイトDealbookは2013年に「Rippleは仮想通貨が通常達成できなかったこと、すなわち金融システムの主要プレーヤーの関与を獲得している」と述べた。 [12]

出典・脚注[編集]

  1. ^ リップルの評価額が150億ドルに上昇:ガーリングハウスCEOこれまでで最強だと述べる”. NEXTMONEY (2022年1月27日). 2023年12月23日閲覧。
  2. ^ Q4 2022 XRP Markets Report” (英語). ripple.com (2023年1月30日). 2023年12月23日閲覧。
  3. ^ Peck, Morgan (2013年1月14日). “Ripple Could Help or Harm Bitcoin”. IEEE Spectrum. Institute of Electrical and Electronics Engineers. 2016年2月25日閲覧。
  4. ^ 日本経済新聞 (2014年12月14日). “全通貨が対象、2日かかる決済も5秒で”. 日本経済新聞. http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80788070R11C14A2000000/ 2016年3月1日閲覧。 
  5. ^ Implementing the Interledger Protocol in Ripple”. Ripple Labs Inc.. 2016年2月24日閲覧。
  6. ^ Ripple 2015: A Year in Review”. Ripple Labs Inc.. 2016年2月24日閲覧。
  7. ^ 米SEC、リップル裁判判決は「間違った判断」と指摘、控訴意志明かす”. あたらしい経済 (2023年7月25日). 2023年7月25日閲覧。
  8. ^ Ripple to buy back $285 million of its shares, valuing company at $11 bln - sources”. ロイター (2024年1月11日). 2024年1月14日閲覧。
  9. ^ リップル社が約415億円の自社株買い開始か、企業価値は1兆円超に=ロイター”. あたらしい経済 - 幻冬舎 (2024年1月11日). 2024年1月14日閲覧。
  10. ^ Banks Can Cherry-Pick the Best Bits from Bitcoin: Report”. americanbanker.com. 2022年5月31日閲覧。
  11. ^ リップル(Ripple)が世界経済フォーラムでテクノロジーパイオニア賞を受賞”. kucoin.com. 2022年5月31日閲覧。
  12. ^ The Rush to Coin Virtual Money With Real Value”. dealbook.nytimes.com. 2022年5月31日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]