原発の電気「価格保証」に経産省意欲、利用者転嫁強い批判も

原発電気「価格保証」に経産省が意欲、利用者転嫁強い批判も
 8月21日、経産省は、市場価格が原発による電気のコストを下回る場合は差額を利用者に負担させる制度の導入に意欲を示した。写真は柏崎刈羽原発。2012年11月撮影(2014年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 21日 ロイター] - 経済産業省は、21日開いた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の原子力小委員会(委員長:安井至・独立行政法人製品評価技術基盤機構理事長)で、市場価格が原発による電気のコストを下回る場合は差額を利用者に負担させる、という英国で採用予定の新制度を紹介し、導入に意欲を示した。   
この日の会合では、電力自由化による競争環境下における原子力事業のあり方を議論、経産省は英国で導入予定の「差額決済契約」と呼ばれる仕組みを紹介した資料を提出した。
この制度は、廃炉費用や使用済み燃料の処分費用も含めた原子力のコストを回収するための「規準価格」を設定、市場価格がそれを下回る場合は差額を需要家から回収する、という内容。逆に、市場価格が基準価格を上回る場合は、原子力事業者が差額を支払う仕組みだ。
電力自由化については、事業に必要なコストを料金に転嫁する「総括原価方式」と地域独占が廃止されるため、原発への投資回収性が予見できなくなると電力業界が政策的な支援を求めている。経産省は同会合に、英エネルギー・気候変動省の担当者を招待し制度の仕組みを説明させており、電力業界の要請を受けて、同制度導入に前向きな姿勢をうかがわせた。
会合後、経産省の担当者は記者団に対し、市場価格と基準価格の差額のコスト回収の手段として「電気料金でも税金でも可能」と説明した。今後は専門家による作業部会を立ち上げ、議論を委ねるという。
<原発の電気は安いのか高いのか>
ただ、推進側が「安い」と主張してきた原発の電気は実際は高く、維持存続のために利用者にコストを転嫁する制度には強い批判が予想され、日本が英の取り組みにならうかどうかは不透明だ。
総合資源エネルギー調査会での議論をもとに、政府が4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」では、原子力発電について「運転コストが低廉」とメリットを説いている。
しかし、経産省が今回、市場競争下では原発のコストを回収できなくなる懸念を示したことは、「原発は低廉」との主張は、対象コストを狭く捉えないと成立しないことを露呈したといえそうだ。
原子力小委のメンバーの吉岡斉・九州大学教授は、英の差額決済方式について委員会へ意見書(会合は欠席)を提出した。吉岡教授は、同方式を日本が採用することについて、再生可能エネルギーと同等の優遇策を原発への従来の優遇策に加えるものだとして、「まったく正当性を持たない」と批判している。

浜田健太郎 編集:北松克朗

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