行政視察報告書
江南市議会議員 山 登志浩
2013年4月19日(木曜日)14時から、東京都杉並区役所にて「公共施設白書について」をテーマに行政視察を実施し、政策経営部施設再編・整備担当部長の大竹直樹氏などからお話しをうかがった。その要旨と所感は以下の通り。
要旨
○ 区の公共施設(計582)の修繕は、施設担当所管課から執行委任を受けて、政策経営部営繕課で一元管理(予算を含む)している。
○ 「公共施設白書」は、区民が区の将来を考えていく際の素材として活用されることを目的として作成した。2004年に初版を発行し、3年に1回改定している。
○ 作成にあたっては、手持ちのデータを有効活用した。人件費を含めた施設のトータルコストを、グラフを用いて見やすく示している。
○ 施設ごとに台帳を作成した。台帳は住民でいうところの戸籍謄本に相当し、修繕履歴や図面などあらゆる情報を網羅している。
○ 財務省令を受けて、施設の耐用年数は鉄筋コンクリート造の庁舎及び事務所施設においては、一般的に50年とされている。しかし、これは税法上の減価償却期間に過ぎない。日本建築学会の建物の耐久性に関する研究結果を参考にして、施設の改築時期を50年から65年へ変更した。長いスパンで改築時期を平準化していくことにより、経費削減を図っていく。
○ 区民の行政ニーズ、価値観、ライフスタイルの変化、人口減少などの社会情勢の変貌を考慮して、効率性を重視している。施設の総量規制、多機能化、学校施設の複合化などを提案し、再配置を促している。
所感
○ 施設の営繕管理の水準については、所管課ごとにばらつきがあってはならない。経費削減も期待できるので、一元管理が効果的である。
○ 施設の台帳すらない自治体が多いと思われる。データを集めるには大変な労力やコストを要するが、これがなければ白書の作成・更新ができない。今後は計画的に台帳を整備・管理されたい。
○ 公共施設白書は、市民の活発な議論を促していくべき性格のものであることから、グラフなどでビジュアル化した、分かりやすい資料を作成されたい。
○ 公共施設の見やすい場所に、人件費を含めた施設管理経費などを掲示することを検討されたい。
○ 公共施設の再配置を進めるには、庁内の全職員に意識改革を求め、モチベーションを向上させなければならない。その手段として、白書を積極的に活用すべきだ。
○ 施設を何年使えるかの目安が、財務省令の耐用年数以外になかった。それゆえ、改築時期が50年と誤解されてきた。一度、耐用年数や寿命についての考え方を整理し、白書で言及されたい。
○ 人口減少は児童生徒数の減少を意味する。学校教育施設をどうするかが、公共施設の再配置の中心的テーマとなる。学校が地域コミュニティや異世代交流の拠点となるような方向での議論を求める。