物作り零細企業の奮闘ぶりを書かせれば、私の知る限り、右に出る者はいない池井戸潤。
その新作が出るということを、過日、新聞広告で知って、早速図書館に予約を入れた。
1ヶ月ほど待ったか。
手にした本は、これまでにない分厚さだった。
最近、全く書店に行かなくなったので、現物を見る機会がなかったのである。
「陸王?」
私の地下足袋がそういう商標ではなかったか?
確認すれば、それは「力王」だった。
チャンチャン・・・
これで終われば受ける?
いやいや、受ける為に書いているのではないので、そろそろ本題。
結論から先に言うと、「実に面白かった」。
著者が銀行員だったということもあって、中小企業の運転資金の転がし方なんぞがリアルで身につまされる。
衰退の一途の業界、絶滅危惧種と言われる業種の中にあって、社員を整理することなく、如何に業績を上げていくか?
それは、業態を変えるか、新たなフィールドに打って出るかしかない。
さりとて、それには、また新たな資金が要る。
でも、銀行はこれ以上貸してはくれない。
ならば、これまでのやり方を堅持していくしかない?
そうすれば、直ぐに倒産することはない。
ただ、そのままだと、先で確実に行き詰まる。
その飽和点まで目をつぶって先送りの繰り返し。
これ、衰退業種の負のスパイラル。
理屈ではわかっていても、いざとなると、肝がすわらない。
そんな、キリキリと胃が差し込まれるような苦悩がよく表現されている。
葛藤の末、昇華された思い。
それは、仕事と生き甲斐の繋がり。
会社を身売りすれば、兎も角食ってはいける。
社員を路頭に迷わすこともない。
ただ、それは、100年の歴史と技術と矜持の放棄に繋がる。
そんな喘ぎの中から一筋の光明が見えてくる。
それは、人との出会いと繋がりから生まれてくる。
これは偏に、本人の一所懸命さが引き寄せたものと考えるべきだろう。
と、小説ではドンデン返しを愉しむことになる。
さて、現実は?
ここで、「そんなに甘いもんじゃないよ」とひとりごちることは簡単だ。
でも、いつもいつもそうしてたんじゃあ、何も変わらないじゃないか。
何も生まれないじゃないか。
ここで引用するには、少しニュアンスが違うかもしれないが、私はこんな逸話が好きだ。
コンビニのアルバイト。
マニュアル通りにやっとけば、当たり障り無くやり過ごすことが出来る。
でも、そこに自分の全てをぶつけた人がいる。
愚直に自分に与えられた仕事を全うし、いや、それ以上のことをしようとする。
やがてその懸命さが、お客さんや仲間の共感を呼ぶ。
かくてその人は、正社員となり、今や重要なポストに就いている。
すなわち、「置かれたところで咲く」。
こういうことなんだろう。
私は、ここで咲こうとしているだろうか?
ちょっと趣旨がズレた?
でも、そんな思いを再確認されてくれる本ではあった・・・
陸王 | |
クリエーター情報なし | |
集英社 |
けふの一葉
昨晩、土居のいもたきを食ってきた。
やっぱ、あっこは里芋が命やね・・・
自分も「陸王」読みましたよ。
面白いですよね。
仕事の本質を改めて教わったような気がしました。
その上いろんな要素が凝縮されているから胸が熱くなりましたよ。
「やがてその懸命さが、お客さんや仲間の共感を呼ぶ。」
確かにそうなんだと思いますよ。