「中国の対外姿勢、国際的な懸念」 首相NATO演説
【ブリュッセル=地曳航也】欧州歴訪中の安倍晋三首相は6日午後(日本時間同日夜)、北大西洋条約機構(NATO)本部で演説した。中国の軍拡に触れ「中国の対外姿勢、軍事動向は日本を含む国際社会の懸念事項だ」と批判。「世界の平和と安定のために日本がどのような貢献をすべきか政府として方針を示したい」と集団的自衛権の行使容認に理解を求めた。
首相は中国の軍事費が最近の10年間で4倍に増えていると指摘したうえで「その軍事費の拡大は内容が明らかにされない不透明な形で行われている」と訴えた。「この地域の不安定化の要因とならないよう武器及び機微な汎用品の厳格な輸出管理を改めて強く訴える」と語り、NATO加盟国に中国への武器輸出を控えるよう求めた。
「東シナ海や南シナ海では力による一方的な現状変更の試みが頻発している」と沖縄県尖閣諸島周辺での中国の挑発行動にも言及。「日本にとってアジア太平洋地域の平和と繁栄の実現は最優先課題だ。そのために建設的役割を果たそうとするいかなる国とも協力していく」と法の支配を尊重し航行や、上空飛行の自由を守る決意を示した。
首相は「揺るぎない平和国家としての歩みを礎に、これまで以上に世界の平和と繁栄に強くコミットしていく」と自身の外交・安全保障政策の基本理念である「積極的平和主義」を説明。「国際社会と協力して地域の世界の平和を確保する。そのために現在、憲法と集団的自衛権などとの関係について議論を進めている」と集団的自衛権の行使容認に向けた政府の議論に理解を求めた。
歴代政権は集団的自衛権について国際法上保有するが憲法上行使できないと解釈してきた。首相は日本近海の公海で警戒している米軍のイージス艦が攻撃を受けた場合に自衛隊が守れないことを集団的自衛権の行使が認められていない支障として例示。集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更に意欲を示した。
首相はNATOについて「基本的価値を共有するNATOは『必然のパートナー』だ」と強調。「積極的平和主義を実践する立場から今後のNATOとパートナーシップを発展していく」とソマリア沖・アデン湾での海賊対策を含む安保協力を進める考えを示した。