憎しみは憎しみによって止まず、愛によって止む。 | ワシントン通信 3.0~地方公務員から転身した国際公務員のblog

憎しみは憎しみによって止まず、愛によって止む。

 あの津波から一年が過ぎたスリランカに来ています。この国は、今、大きなクロスロードにさしかかっているのです。昨年11月の選挙で、タカ派と呼ばれるラジャパクサ新大統領が誕生 して以来、政府とLTTE(通称タミールの虎)との間の緊張が高まっています。事実、北東部を中心に、散発的なヴァイオレンスが急増しているようです。内戦に逆戻りするのか、双方が踏みとどまって和平交渉のテーブルにつけるのか、ここ数日がヤマだと言われています。

 さて、僕自身も仕事でバタバタしているので、今日は2002年にLocal & Global に書いた「憎しみは憎しみによって止まず、愛によって止む」というエントリーを以下にリサイクルしておきます。

 以下のような歴史の話をご存知だろうか?第二次大戦終了後の1951年、各国が参加して「サンフランシスコ平和会議」が開かれました。この会議では、戦後の日本の独立問題や日本への制裁について話し合われたんだそうです。会議の中でソ連の代表は、日本を独立国とすることを認めず、独立国としての自由を制限する何らかの措置を日本に科することを執拗に主張したといいます。西側諸国の中には、この考えに同調するものもあったと聞きます。その中で、スリランカのジャヤワルデネ代表の演説が日本を救ったというのです。

 ジャヤワルデネ代表は、同じアジアの仏教国という立場から、「憎しみは憎しみによって止まず、愛によって止む。」というブッダの言葉を引用して、強く日本を擁護したのです。そして、日本に対するいかなる制裁にも反対し、日本の完全独立を認めて国際社会の一員として迎えるべきだと説いたといいます。このスリランカ代表の演説が効を奏して、日本が独立国として認められたというわけです。

 「サンフランシスコ平和会議」で日本を救った、このスリランカ代表の演説について、僕は最近まで全く知りませんでした。初めて聞いたのは、今年10月にスリランカを訪れた際に、スリランカ政府のある役人に聞かされたときでした。今回のスリランカ訪問でも、同じ話を別の人に聞かされました。どうやらこの話は、スリランカ人の間では結構有名な話みたいなんです。あるスリランカ人は、日本はあの時の恩を感じているから、今スリランカに多額の経済援助を与えてくれるんだろうと言っていました。

 日本でこの話を知っている人は、果たしてどれくらいいるんでしょうか。少なくとも、僕はこれを歴史の時間に習ったという記憶がありません。誰かこの話を学校で習ったという人がいたら、教えて下さい。こういう話は知っておくべきですよね。少なくとも、スリランカを訪れる日本人には知っておいてもらいたいです。そうでなければ、僕のように恥かしい思いをすることになるかもしれません。