ringoのつぶやき

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中華経済圏という幻想

2016年01月28日 15時43分51秒 | 社会経済

【国際政治経済学入門】古都マラッカで高まる若者の反中国

2016.1.27 09:00
 今年の年始は、マレーシアのユネスコ(国連教育科学文化機関)世界文化遺産の古都、マラッカに足を運んでみた。15世紀前半、中国本土からアラビア半島までの大航海を7度も敢行した鄭和率いる大艦隊が東南アジアでの母港として以来、華僑の町として栄えてきた。ポルトガルが支配した16世紀にはイエズス会のフランシスコ・ザビエルが東南アジアでのカトリック布教の拠点としたのもマラッカだ。

 「埋め立ては軍港のため?」

 華僑街は世界の他のどのチャイナタウンよりも風格を漂わせる旧商家が軒を連ねている。唐様式をベースに南欧風のアレンジを加えている。ザビエルゆかりの聖堂跡や鄭和博物館などまさに歴史満載だ。

 夕方は、作家の沢木耕太郎さんが激賞したというマラッカ海峡の夕日を眺めることにしようと、汗だくになりながら防波堤まで歩いたが、海面ははるかかなたである。中国資本などによって大掛かりな海の埋め立て工事が進んでいるからだ。やっとたどり着いた浜辺では、夕日が建造中の巨大なリゾートマンション兼ショッピングセンターに遮られている。デベロッパーはシンガポール資本だが、買い手として見込むのは主に中国本土客という。
 
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 マラッカ海峡に沈む夕日を遮るようにそびえる建設中の中国人目当ての巨大マンション=2016年1月8日、マレーシア・マラッカ(田村秀男撮影)

確かに訪問客の多くは中国人団体である。ホテル、小売店、レストラン、タクシーどれをとっても、英語よりも中国語が当たり前のように通じる。「もはや中国の一部も同然」の感ありである。

 マレーシア政府もマラッカ市も中国の習近平政権が提唱する「一帯一路」構想やその推進機関となるアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立を奇貨として、中国資本の誘致政策を推進している。習政権もマレーシアに札束攻勢をかけ、国有企業の中国広核集団(CGN)に汚職容疑で揺れているナジブ・マレーシア首相肝いりの国家投資ファンドの電力などエネルギー資産を23億ドルで買い取らせた。首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道を中心に中国企業が大型投資する計画が具体化している。

 ところが、現地紙を読んでみると、市長が釈明に追われていた。若者の間では「埋め立ては中国の軍港の建設ためではないか」「中国による新植民地主義を拒否する」との反発がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて広がっている。市長は、「われわれは一帯一路構想でいう『海のシルクロード』建設に期待している。中国からの直接投資は地元に繁栄をもたらすもので、利益に反する案件を認めるつもりはない」と強調する。クアラルンプール、ペナンなど他の主要地域でも同じ批判が渦巻き、要人たちが同じようなコメントを連発している。
 
 マラッカの若者たちは、インフラ投資を看板にした習政権の対外膨張主義を冷めた目で見ており、地元リーダーの盲目的な中国誘致熱をしっかりとチェックしているのだ。

 習政権錬金術の嘘

 台湾では18日に総統選挙が行われ、圧倒的多数が中台交流による経済利益を強調する国民党候補に「ノー」を突きつけた。大陸の情報ネットに台湾が組み込まれて思想や表現の自由が失われると若者たちが反発したのだ。香港でも中国本土による政治支配や言論抑圧に抗議運動を展開しているのは若い世代だ。

 台湾総統選挙の日、北京でAIIBの開業式典が行われた。AIIBのシンボルは「点石成金(石を金に変える)」の記念碑という。指導者が指を差すと石が金に変わるという中国の故事によるらしい。
 
 習政権の奥の手は、国際通貨基金(IMF)から国際利用可能通貨のお墨付きを得た人民元資金の活用だ。しかし、金融・資本の自由化と情報の自由がなければ、金融市場は円滑に機能しない。元の金融市場は党の強権によりがんじがらめに規制され、使い勝手が悪い。そんな資産に投資するのは短期で売り逃げることばかり考える投機筋に限られる。その多くは党幹部やその係累である既得権者たちだ。

 金立群・AIIB総裁は「日米の参加は今からでも遅くない」と秋波を送ってくる。AIIB参加論の朝日新聞や日経新聞などは同調するかもしれないが、自由とカネは一体だという経済の原点を無視している。石を金に変えるためには、自由という触媒が欠かせない。マラッカ、台湾、香港の若者たちは図らずも習政権の錬金術の嘘を見破っているようだ。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)


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